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36回中12回目の魔王討伐3年と6ヵ月記録更新、されど勇者は旅をやり直す「廻天のアルバス」感想とネタバレ、めちゃくちゃ面白かった!

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はじめはただのイキった勇者が魔王退治のために無双するぐらいの物語かと思って読み進んでいったら、実は単行本1巻まるまるプロローグみたいな感じで、もう次が気になって気になって仕方がない漫画、廻天のアルバスについてのお話です。

いやあ久々に、「えっ?」ってなりました。1巻の最後の最後で。すごく面白かったので、皆さんにも紹介しますね。

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35回中11回魔王討伐成功、最短記録は5年と3ヶ月21日

物語開始早々勇者出立の儀式をドタキャンして、通り道で魔法使いの女の子フィオナをさらってさっさと魔王退治に向かう勇者アルバス。レベルがまだ低いにも関わらず危険度S級の魔物の住処を、時短だからと突っ込みます。

どうやらこの勇者アルバス、過去35回魔王退治の旅に出て、そのうち11回は魔王退治に成功したというのにそれでも納得いかずに、最短記録を極めるために何度も何度もリセットして魔王退治の旅を繰り返しているというのです。

理由もまあ、分からなくはないのです。愛犬の死に目に会えなかったとか、まあその辺はちょっとどうなのと思わないでもないですけれど、王様の足が悪くなって平和になった国を歩いてもらえなかったとか、モタモタしているうちに世界樹が燃やされたとか、もっともっと早く魔王討伐ができれば救えた命がたくさんあるはずだと、アルバスは言うのです。

ただなんとなくですけれど、それって無理やり理由つけてRTA極めたいだけなんじゃないの?と思わないでもありません。ともかく、この勇者アルバス、死ぬ間際になると魔王退治に旅立つ前まで時間を巻き戻せると言う能力を使って、何度も何度も魔王退治の旅をしているのです。

勇者アルバスのRTA

廻天のアルバスの主人公、勇者アルバスの旅はまるでRPGゲームのRTAです。軍資金は馬と荷馬車にとことんかけて装備は貧弱。序盤に出てくる危険度S級の魔物、ゲームであればまずは時間をかけて迂回して先に進み、レベルを上げてから再び戻ってきて倒すような強力なやつを、「こうすれば低レベルでも倒せるんだよ」と一直線に向かって討伐。

ちなみに最初に炎を吐かれてたら詰んでたらしいです。炎を吐かないパターンは大体70%程度だそうですけれど、そうやって何パーいけるみたいな言い方も、いかにもRTA実況YouTuberみたいですよね。

余計な頼み事をされてクエスト発生するのを防止するために、町に立ち寄ってもなるべく人の話は聞かないようにしていますし、どうしても盗賊退治が必要な時はお金で人を雇って倒させますし、教会では心にもない綺麗事をペラペラと演説して代わりに聖水をめいいっぱいふんだくります。もはや勇者ではなくて詐欺師ですね。

また危険な魔物が集団で襲ってくるような詰みポイントはしっかり把握して、当然準備も対策もバッチリです。うっかり話を聞いてしまうと大幅に時間を取られてしまうようなイベントは華麗にスルーして、まあ成功率は結構低くて今回は失敗してしまいますけれど、とにかく驚くほどの最短距離で魔王退治を目指します。

RTA奏者のことを時に狂人みたいな言い方することありますよね。何度も何度もそのゲームをやりこんでチャートを組んで、常に最適解を探っている人たちです。廻天のアルバスは、まさにそんな狂人と言えるでしょう。だからこそ、読んでいて違和感があるんです。こんなことのために何度も、時には自ら命を絶ってでもRTAに挑戦する。その違和感の正体には、1巻の終盤で明らかになります。

フィオナがかわいい

ところでこの廻天のアルバスのヒロイン、フィオナがなんかとってもかわいいです。ポジション的に完全に、変態、主人公に散々振り回される系ヒロインですね。そもそも初登場でいきなりアルバスに誘拐、というか強制的に勇者パーティーに入れられて、一緒に旅をすることになるのですから。そしてとにかく時短を極めようと無茶苦茶なことをするたびにツッコむことになるという。

まあこの廻天のアルバスにおいては、何度も時間を巻き戻して旅を続けるアルバスに事情を説明させるための、聞き役みたいな役割なんですよね。それなりにぎゃあぎゃあ騒ぎますし、ふと見せるアルバスの寂し気な表情に思わずハッとしてくれるし、それでいてなんでもかんでも根掘り葉掘り聞かないで適度に黙ってくれる。

物語の内容的に、ともすればページが説明ばかりで埋まってしまいそうなところを、アルバスの事情を小出しに説明させつつ興味を引いていくような、うまくバランスとってくれるキャラなのです。

あとは基本性根が優しくて、魔王退治を繰り返すアルバスを妄信的に無条件にちやほやしたり肯定したりするのではなく、ちょっと頭のネジが緩んでいるように見えるアルバスを自分なりに理解しようとしてくれるというか。

そして冒険の初めは、とにかく効率重視なアルバスになかなかついていけないようなところがありつつも、ずっと一緒にいてくれて、アルバスと一緒に強くなっていってくれて、いつの間にか息ぴったりの、アルバスの大事なパートナーになっているという。フィオナはそんな本作のヒロインなのです。

物語の秘密

今回で36回目となる魔王討伐の旅、過去11回魔王討伐したことのあるアルバスはやっぱりコツをつかんできているんでしょうかね、最短新記録3年と6ヵ月、12回目の魔王討伐に成功します。ただここまで来て、魔王を打ち倒してやっと、この物語のプロローグが終わったっことを思い知らされます。

結論から言うとアルバスはまたも時間を巻き戻して、冒険の始まりまで戻ることになります。魔王は倒したものの、アルバスの旅はまたも失敗に終わってしまったからです。それは愛犬の死に目に会えなかったからではなく、王様が平和な町を歩くことができなかったからなわけでもありません。

魔王を倒すとですね、フィオナが死んでしまうのです。いやまあ正確には死ぬわけではないんですけれど、まあ死んだようなものなので死んでしまうということにしてしまいますね。過去何度魔王を倒しても、フィオナは死んでしまいます。一緒に魔王を倒しても、パーティーメンバーに加えずにずっとずっと遠く、アルバスの目の届かないところにいたとしても。

フィオナすごくかわいいんです。魅力的なんです。始めは、頭のおかしい勇者にさらわれて半ば強制的に連れてこられた仲間だったのが、3年以上も一緒に旅をしてずっと2人一緒にいたんです。義務とかそういうのもないわけですから、気が合わなければ当然離れるでしょうし、でもずっと支え合って旅をしてきたんですよ。

アルバスがちょくちょくフィオナのこと褒めてたというか、すごく頼っているというか、支えにしているような感じの描写があるんですよね。アルバスにとって大切な人でないはずがないんですよ。

1巻の最後の最後になって、アルバスが何のためにずっと魔王退治を繰り返しているのかが分かるんです。36回目の魔王討伐の旅を終えて、リセットして、アルバスは37回目の魔王討伐の旅に出ます。今度はどうするんでしょうね。

一応、とにかく最短で魔王を倒すことがフィオナを死なせない方法である可能性もあったのですけれど、それは失敗しましたから、今度は別な方法を試すしかありません。どんな方法を取るのかは分かりませんけれど、ここから本当の旅が始まるんです。もしかしたら37回目の旅も失敗するかもしれません。38回目もあるかもしれません。

けどやっぱり、とりあえずここからまた始まります。1巻丸々かけて知ることとなったアルバスの想いが、次の旅で成就するのか、今から楽しみで楽しみで仕方ない、そんな気持ちになってしまうのでした。

まとめ

実のところですね、物語の進み方が割と年単位で進むものですから、葬送のフリーレンっぽいところがあるんですよね。ちょくちょく過去の回想が挟まって、過去の旅、やり直した旅の蓄積があることを実感させられる物語の構成なんかも似ています。同じ少年サンデーですしね。パクリとまでは言わないものの、どことなく似たものを感じずにはいられないのは確かなのです。

そういえば葬送のフリーレンも、1巻終わってからやっとフリーレンの旅の目的がはっきりしていましたね。

ただ明らかに違うのが、アルバスはとにかく未来をもぎ取ろうとしているところです。自分が思い描く最高の未来のために、絶対に諦めないしくじけない。そんな彼の旅を応援せずにはいられない、そんな物語なのです。面白いのでぜひぜひ皆さんも読んでみてくださいね。


葬送のフリーレン(1) (少年サンデーコミックス)

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