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十二国記

泰王驍宗は本当に死んでしまったのか?阿選に何があったのか?十二国記最新刊 白銀の墟 玄の月の謎5選

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十二国記の最新刊、白銀の墟 玄の月がとうとう発売になりました。どんな怒涛の展開が待っているかと思いきや、予想に反して静かに、そしてゆっくりと事態が進んでいきます。

まぁけれども確かに、全部で4巻にも渡る超長編です。このくらいがちょうどいいのでしょう。

それにしても、今回発売となった十二国記白銀の墟 玄の月では、実に様々な謎が散りばめられていました。ひとつひとつ読み込んでいきだけでも非常に時間がかかります。

ということで、ここではそんな十二国記 白銀の墟 玄の月1~2巻で巻かれていた謎について考察していきたいと思います。当然のことながらネタバレになりますので、まだ読まれていない方はご遠慮いただければと思います。

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十二国記 白銀の墟 玄の月の謎その1:泰麒の天啓は本物なのか?

泰麒が阿選を選んだ?

戴に帰還したのち李斎と別れ、護衛の項梁とともに戴の王宮である白圭宮に戻った泰麒。そこで泰麒は衝撃的な言葉を口にします。

曰く、新しい王は阿選であり、そのためにやってきた。

曰く、現在の泰王である驍宗は早々に天に王位を返すべきである。

曰く、王位を天に返すことで驍宗が死ぬことは悲しいことだが、仕方がない。

あれほど慕い焦がれていた驍宗を謀殺しようとした阿選を許すどころか新しい王として認め、しかも驍宗が死んでしまっても仕方がないとすら言ってのけるのです。

阿選が王と言うのは泰麒の狂言……のはずが。

もちろん、これは泰麒の策かと考えられます。白圭宮に入る前に、泰麒は同行していた項梁にこう言いました。

白圭宮に行きます……そばにいれば項梁はさぞ驚くでしょう。了解し難いこともあるだろうと思います……とにかく全てを私に任せて、黙って状況に流されてもらいたいのです。

出典:十二国記 白銀の墟 玄の月(一)

項梁はもともと驍宗麾下の武将です。そんな項梁が了解し難いこと…すなわち驍宗を陥れた憎き阿選を王に選び、驍宗の命を絶たせよとの進言のことなのでしょう。

けれども項梁は時が経つにつれ、そんな泰麒にも疑いの目を向け始めます。実は本当に天啓があり、阿選を選んだのではないか、と。

項梁は……足許が何かに呑み込まれていくような気分がしていた……これは、真実ではないのか。

出典:十二国記 白銀の墟 玄の月(二)

泰麒が、改めて冢宰である張運に「戴のために驍宗に死んでもらうしかない」という旨の話をした後の描写です。それほど長く一緒にいたわけではないにしろ、白圭宮までの旅路で寝食をともにした項梁すら、泰麒にそんな感想をいただきました。

そして冢宰の張運もまた同様です。有無を言わせない迫力に、張運は不覚にも気圧されてしまったのです。

2人は知る由もないですが、その迫力はまさに泰麒が伝説の妖魔・饕餮を指令に下した時や、驍宗を王に選ぶ時の迫力に通じるものがあります。その迫力は蓬山の女仙や驍宗すら認めざるを得ないものでした。

泰麒の目的はあくまでも驍宗を見つけることと、驍宗の部下を解放すること

泰麒の言動は非常に冷徹で、迫力は周囲の官や武将すら気圧される類のものですが、その内容をよくよく読み取れば、泰麒が本当に目指していることが驍宗発見と、その部下を解放することだということは間違いはないでしょう。うまく相手を誘導して権を取り戻したり、自分の言うことを聞かない張運の子飼いを罷免したりなど、少しずつですが自身の周りを理解ある者で固めつつあります。

また何かにつけて驍宗を連れてくるよう命じたり(もちろんなかなか叶わないのですが)、捕らえられたとされる驍宗麾下将軍やその部下たちを自分のもとにつけるよう進言しています。何より泰麒の言葉を聞いた項梁が余計なことを言わないよう目配せするなど、細かく項梁への注意が見て取れます。

そもそも張運の部下が四六時中監視している中で、泰麒は項梁と詳細を打ち合わせることができていませんし、それを承知で泰麒は事前に項梁に注意していたはずです。そして何より、泰麒は確実に権力を取り戻しつつあるのです。

十二国記 白銀の墟 玄の月の謎その2:泰王驍宗は本当に死んでしまったのか?

驍宗らしき武人の匿われた集落

もともと泰の国王である驍宗は6年間ずっと行方がわからないままとされており、一説には死亡したとも言われていました。そのような中李斎は泰麒と別れ、新たな仲間とともに驍宗を探します。

そしてついに驍宗らしき人物が匿われていたらしき集落を発見します。非常に位の高い武人が尋常でない怪我を負い、担ぎ込まれたと言うのです。

けれども時はすでに遅く、その武人は息を引き取っていました。怪我のせいなのか、それとも別な何かなのか、死因はともかく亡骸はすでに埋葬され、あとには着ていたものの一部が残るのみです。

遺物から、その武人が驍宗であると言う確証を得ることができませんでした。けれどもその集落の者たちが語る武人の様相は、まさしく驍宗のそれと一致するものでした。すなわち、髪は白で眼は紅……

阿選や張運が驍宗の行方を知っている?

また阿選を王として正式に践祚させるためには、一度驍宗を連れてきて、王位を返させなければいけない……この泰麒の言葉を聞いた張運らはひどく悩見ます。それは本当のことなのか、泰麒が嘘をついているのではないか、驍宗を連れてきたら最後、泰麒は手のひらを返すように驍宗に寝返るのでないか。

そして最終的に、泰麒の言うことが正しいのではないかという結論が出たところで、張運がこう言うのです。阿選様には驍宗を連れてきてもらわねば、と。

それはつまるところ、阿選が驍宗の居どころを知っているということではないでしょうか。もしくは、探す手段があるとか。

そもそも白圭宮にて、もとは驍宗の部下、今は阿選の部下として重用されている琅燦が「白雉は落ちていない」と言います。すなわち王である驍宗は生きていることを何よりも確かに示しているのです。

驍宗は一体どこに?

あくまでも可能性の1つですが、白圭宮にいるのではないかと考えられます。理由はいくつかありますが、何より大きいのは、泰麒がやってきたからです。

確かに泰麒はすでに角を失って、麒麟としての力を全て失っています。王気を感じ、王を探すことすらできないとされています。

けれども本当にそうでしょうか?まだ李斎と一緒に旅している間、泰麒はしきりに李斎を急かしていました。

どうにかして早く先に進もう、と。これはもしかしたら、本能で王である驍宗の気を感じていたからとは言えないでしょうか。

泰麒は以前驍宗を王として選んだ時、驍宗の王気をじりじりと迫ってくる不安や緊張といったふうに表現していました。けれども蓬莱から帰ってから、泰麒はそういったものを一切感じていないようです。

ただ他の麒麟の話を聞くと、王を探すつもりなどなくとも、なんとなく足が向いたら王がいた、といった王気の見え方もあるようです。つまり泰麒が李斎の反対を押してまで白圭宮に帰ろうとしたのは、まさにそこから王気があったからとしか言えないのではないでしょうか。

また阿選が驍宗の居どころを知っているかもしれないと述べました。白圭宮に閉じ込めているのであれば阿選がそれを知らないわけがありませんし、それを命じたのは阿選の他にありません。

延王尚隆が主人公の『東の海神 西の滄海』で、斡油が父にやったのと同じように、地下の奥深くに幽閉していると言うことも考えられます。とりあえず王が玉座におらずとも、生きてさえいればまだ国はそう簡単には沈まない、そんな理由で生かされ続けている可能性が高いかと思います。

集落で亡くなっていた武人は果たして何者か?

驍宗が生きているのであれば、集落で亡くなったと言う武人は一体何者なのでしょうか。私が思うに、驍宗を逃がすために囮になろうとした影武者だったのではないでしょうか。

世話をしていた少年の話では、何としても白圭宮を取り戻さねばと語っていたようです。影武者でありながら王を阿選に連れ去られるを止めることができなかった、そんな自責の念からのセリフだったのではと感じています。

十二国記 白銀の墟 玄の月の謎その3:阿選は幻術の使い手?

阿選に乗っ取られた白圭宮は亡者の城に

白圭宮を訪れた泰麒と項梁は、その中の様子に違和感を覚えます。いえ、泰麒たちだけではなく、そこで働くいく人かの正気を保った官でさえ同様のことを感じていることがわかります。

すなわち、この白圭宮はまるで廃虚のようだと。働いているものの多くが生気をなくし、まるで意志を持たぬ人形か亡者のごとく宮内を徘徊しているのだというのです。

おそらくこれが、阿選の幻術なのでしょう。魂を抜き取り、相手を意志のない人形にしてしまう。

李斎の話から、阿選に反抗しようとした者はなぜか次々と戦う意志を失い、自身の殻に閉じこもってしまったことが分かっています。これもまさしく阿選の幻術によるものと考えられます。

阿選の幻術

十二国記の過去の作品で、神仙である官の中には術を使うものもいると語られていましたし、驍宗と双肩をなす阿選がそれを使えてもなんらおかしいことはありません。

そして何より、京王陽子と他国の王、そして麒麟が協力して泰麒を蓬莱から助け出す長編物語、十二国記 黄昏の岸 暁の天の最後のページにはっきりと、阿選が妖術に長けていると明記されているのです。

時に阿選、感を謀りて、偽王として立ち、その権を恣にす……本姓は朴、名を高、兵を能くして幻術に通ず。

十二国記 黄昏の岸 暁の天

詳しくはないものの、阿選が幻術を使えることが明記されています。これはまさしく、幻術を使って王朝を乗っ取ったという根拠と言えるでしょう。

十二国記 白銀の墟 玄の月の謎その4:すでに阿選は正気を失っているのでは

阿選は政を行う意志がない

泰麒が白圭宮に着いてからしばらくしてやっと阿選との面談が叶うのですが、当の阿選の様子がどうもおかしいことに気づきます。いえ泰麒だけではなく、阿選の周りの官も、阿選麾下の優秀な部下たちも、阿選についてしばらく前から異変を感じていました。

阿選にやる気が感じられないと言うのです。周りの官や部下たちが政について指示を仰いでも「任せる」「聞いた」とまったく興味がない様子で、一切具体的な指示をしてきません。

それどころか驍宗を陥れてまで手にすることができた玉座で、泰麒からも正当な王として認める旨の発言があったにも関わらず、それに反応する様子も喜ぶ様子も全く見られないのです。

阿選はいつからか変わってしまった

阿選が将軍の時代に部下だった者たちの会話から、阿選がいかに徳が高く、また民のことを思っていたことが分かります。部下からの信頼は厚く、決して周囲の声を蔑ろにしない人物として語られていますし、玉座にいながら政を行わず放置するような人物ではないようなのです。

つまり阿選は玉座に座ってから、もしくはその前後にて、変わってしまったと考えるのが妥当でしょう。本来徳の高い人物であったはずが、何らかの異変があって、国や民に全く興味を示さなくなってしまったのです。

柳の国王も同じ症状?

やる気がない、政に興味がない、周囲の声に耳を貸さない……国のトップにいる人間がこのような症状にかかってしまうのは、何も戴だけではありません。十二国記の世界の最北端に位置する柳でも、劉王が同様の症状に陥っていることが分かっています。

延王と奏の太子李広は、劉王露峰について「国がうまく機能しなくなることをあえて放置している」「玉座に飽いているのでは」と考察していました。短編集「丕緒の鳥」に掲載された「落照の獄」では、劉王があからさまに国の政に興味を失っており、自身の作った立派な法律がどのように運用されているかについても頓着しなくなっている様が描かれていました。

戴の偽王阿選、そして柳の王である露峰。2人の状態は非常に似ており、同じ病のようなものにかかっていると考えられます。

十二国記 白銀の墟 玄の月の謎その5:阿選に何があったのか

阿選はそもそも謀反を起こすような者でも、政に興味を示さないような者でもなかった?

そもそも阿選は本当に自分の意志で謀反を起こしたのでしょうか。部下たちの会話から聞く阿選の人物像から察するに、どうしても驍宗を陥れて玉座を奪おうという者には思えないのです。

曰く、驍宗をライバル視し決して馴れ合いはなかったとはいえ、お互い認め合う仲でもあった。

曰く、驍宗が昇山するにあたり、阿選はそれを快く見送っていた。

しかも驍宗は王になったのち、阿選を重要なポストに重用しています。それだけ驍宗からも認められる存在だったのです。

となれば、本来なら驍宗をしっかりと支えるつもりであった阿選の身に何か不測の事態が起き、意志が奪われてしまったと考えるのが妥当なのではないでしょうか。

阿選は罠にはまってしまったのか

北方で起こった乱を鎮めるために、驍宗は自ら群を率いるべく白圭宮を発ちました。想定していたよりも乱が長引き、その影響が広く拡大する恐れが出てきたからです。

その乱はあまりにも計画的で、長引くよう裏からうまくコントロールされたものだと語られていました。実際に乱を起こした側からもそれを示唆する発言が出てきています。

当初はそれが、阿選の仕込みであるかと思われていましたが、作中どこに「阿選が仕組んだ」とは明記されていません。もちろん阿選の部下がやったとミスリードされるように書かれていますが、その実確実に阿選が指示を出した、阿選から指示を受けたという根拠が全く出てこないのです。

つまり、阿選に濡れ衣を着せたかった誰かの仕業なのではないか、と言うことです。ではそれは誰なのか?

琅燦の言うことは聞いていた阿選

やる気もなければ何事に興味もない阿選が、1度だけ動いたことがありました。それは泰麒が本当に阿選を王として認めたのかを確認するために、泰麒に斬りつけた時です。

阿選が王でないならば、阿選が切りつけた際に、たとえ泰麒がそれを望まなくても使令がそれを妨げようとする。だから泰麒が嘘を言っているかどうか分かると言うのです。

逆にいえば、阿選が真実王ならば泰麒は抵抗することなく大人しく斬りつけられることを意味します。そしてその進言を受け阿選はそれを実行するのです。

泰麒には、その身を守る使令がありません……蓬莱から戻った時に麒麟の本性とともに全てを失っています。果たして、大人しく斬られることで泰麒は阿選から白圭宮への帰還を許されることとなります。

そして、泰麒を斬れと提案したのが、阿選から太師を任じられた琅燦という女官吏なのです。

琅燦とは?

琅燦はもともと驍宗の部下の女官吏でした。そして阿選が驍宗を陥れ玉座に取って代わった時に、琅燦も阿選の側についています。

けれども張運の考えでは、琅燦はもともと阿選とグルだったのではないかとのこと。もっと言うと、この琅燦が阿選を唆して驍宗を討ったのではないかとすら考えているようです。

阿選に何があったのか?

そもそも驍宗をおびき出す乱が勃発したのが阿選によるものではなく、琅燦の策略だったのではないでしょうか。そして驍宗が北方の乱で苦戦していると見て、阿選は得意の幻術でそれを助けようとします。

無敗と名高い阿選は、これまでも何度か戦において幻術を用いてきたのかもしれません。敵のやる気を削ぎ、廃人にする術です。

けれどもそれは琅燦によって失敗に終わります。それどころか術の失敗によって自身も術にかかってしまい、かつその術を制御することができなくなってしまったのです。

代わりとなって術を操り、また阿選を操り宮廷を牛耳るのは琅燦です。阿選を操り自身を太師に任じ、阿選の代わりとなって戴を自分のものにしてしまったのです。

ではなぜそんなことをしてしまったのでしょうか。まだまだ想像すらできない状況ではありますが、それはもしかしたら、劉王露峰が同じ術にかかっていることと関係があるのかもしれません。

十二国記最新刊 白銀の墟 玄の月の謎のまとめ

白圭宮に戻ってきた泰麒は、次の王として阿選を指名しました。これは泰麒の策略とみて間違いはないでしょう。

泰麒の迫真の演技は味方であるはずの項梁をも容易に騙すほどで、泰麒の強い意志を感じます。確かに泰麒は麒麟としての性を失ってしまいましたが、その代わりに強い心を手に入れたと言っても過言ではないかもしれません。

一方驍宗を探す李斎たちは、驍宗と思われる武人がつい先日亡くなったと知ります。それが本当に驍宗かどうかは分からないながらも、李斎たちの側から見た状況から鑑みると、それを疑う方が困難というほどでした。

けれども、白雉はまだ落ちていません。それはすなわち、驍宗が死んではいないと言うことです。戴の正統な王、泰王驍宗はどこかで必ず生きているのです。

そして阿選。これまで李斎の話しか聞く機会がなかったため、どうしても阿選がとんでもない悪党のように思われていましたが、阿選陣営の官吏や武官の声に触れる機会が増えるたことで、単純に阿選が驍宗に反旗を翻したのではないような気さえしてきます。

また白圭宮は何かがおかしいです。それは阿選の幻術のためと思われますが、それが必ずしも阿選の意志によってなされているかは疑問が残ります。

それよりは、もと驍宗の部下であり、現在は阿選のもとで厚遇されている琅燦という女官吏が深く関わっている、もっといえば琅燦が阿選を傀儡にしている節さえ見られます。ただし現在のところ琅燦の動機が見えてきません……劉王の不調とも関係があるのではと考察しましたが、それもはっきりと言えるだけの根拠は乏しいのです。

なんにせよ多くの謎がこれでもかと言うくらい散りばめられた十二国記 白銀の墟 玄の月。まだ半分までしか進んでいません。

残り半分、3巻と4巻が今から楽しみです。

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