小学生の頃夏休みといえばとにかくウキウキして毎日が楽しかったものですが、その親となると逆に負担に感じることも多くなります。特に夏休みの宿題など、子どもが自主的に計画を立ててできるようであれば問題ないでしょうが、自分が子どもの頃のことを思い出してみても明らかなように、しっかりと計画通りに遂行できることなどなかなかないでしょう。
中でも特に困るのが絵画や自由研究といった『とりあえずただやらせておけばいいわけではない類のもの』で、これらに頭を悩ませることも多いのではないでしょうか。何をやっていいのか分からない、どこから手をつけていいのか分からない、それは子どもも、それをやらせる親も同じかと思います。
そこで今回は、そんな夏休みの宿題の中でも特に難易度が高い課題の1つ、自由研究について紹介していきます。
夏休みの自由研究の題材選び
自由研究というだけあって、題材は自由です。ですがだからこそ何をやればいいのか分からないという方は多いかと思います。
面白い自由研究をやらせてあげたい、子どもが楽しめる自由研究をやらせてあげたい、そんな気持ちはあるものの、一方で面倒くさかったりやたら手間がかかったりすると子どもも親もギブアップしてしまいます。そのため自由研究の題材選びは非常に重要です。
簡単なもの
子どもがやる上でも親がサポートする上でも、これは非常に重要です。面白い自由研究のテーマでも、手間がかかってしまってはやる気が折れてしまったり、途中で自由研究を投げ出してしまうこともあります。
できることなら1日で済んでしまうような題材であったり、1日当たりの拘束時間も2~3分だったりと、簡単な自由研究の題材を選ぶべきと思います。
日常の中で友だちに自慢できる
自分が子どもの頃を思い出すと、たまに「なんでこの子はこんなことを知っているんだろう?」といった友だちはいませんでしたか?ちょっとした雑学だったり、あるいは日常のほんの小さな発見だったり、親にとってはどうということもないようなことも、子どもにとっては「へぇ~っ」と感心してしまうようなことがあったのではないでしょうか。
そんな「友達の『へぇ~』を引き出せるような自由研究の題材だと、子どもも喜ぶのではないでしょうか。そういった視点での自由研究の題材選びも重要なのではないかと思います。
「もう1回やってみよう」と気軽に反復できる
面白い!と思ってもらえると、子どもは何度もその体験を反復したがります。自由研究の題材もそうであるべきだと思います。
簡単に反復できるとなると、「次はこういうやり方ならどうだろう」「今度はこれを試してみよう」と子どもの科学への興味関心が広がりますから、自分で色々と考える力も養われるのではないでしょうか。自由研究にはそんな一面もあると、私は思います。
夏休みの自由研究で親ができること・すべきこと
夏休みの自由研究などは子どもが自主的にやればいい、と思うこともあるかもしれません。実際に中学生、高校生ともなれば親の手は不要でしょう。
けれども小学生ともなれば、まだまだ親の役割は重要だと思います。こういった自由研究の題材を考えてあげたり手伝ってあげたりというのももちろんですが、それ以上に、一緒に考察するということです。
例えば自由研究によって何かしら結果が得られたとして、そこからどんな気づきがあるでしょうか。あるいはそこからどんな広がりが見られるでしょうか。
大人なら「そんなこと当たり前だよ」というようなことも、子どもにとっては新鮮で驚きの知識だったりすることも多いのです。自由研究の結果を受けてそこからどう考えを広げていくか、その手伝いを親はやっていく必要があると思います。
おすすめ自由研究の題材その1:『音はどこまで届くのか?』
日常の様々な音がどれくらいの距離まで届くのかを検証する自由研究です。そもそも距離が離れるにつれ音が小さくなり、いずれは聞こえなくなってしまうということは誰もが体感的にわかってはいますが、実際にどのくらいの距離まで音が聞こえるのかということについてはあまりよく分からないということも多いでしょう。
また音の種類やその日の天気によっても音が届く距離は変わってきますので、様々な角度から物事を見る力を養えるのではないかと思います。日常生活においても「このくらい離れていると音は聞こえなくなるね」「声が聞こえる範囲から出ないでね」など、自由研究の成果を生かせる場面があるかもしれません。
なお、この自由研究は1人で実施することもできますが、2人いるとベストです(2人いれば、1人が音を出し、もう1人がそれを聞く係と分担することができます)。
用意するもの
・音が鳴るもの(おもちゃ、スマホなど。2人で実施する場合は空き缶や空き瓶、最悪手拍子や声でも可)
・紙、ペン
※手拍子や声だけだと、手拍子や声を出す人のコンディションなどによっても音の大きさが変わる可能性がありますので、できればいつ誰が音を出しても音量や音質が変わらないものを用意した方がいいでしょう。
自由研究の手順
用意した音を確認する
どんな音がするのか、音に対してどんな印象があるか、どれくらいの音が届くのか予想してあらかじめ書いておくといいでしょう。
音のするもの | どんな音か | 感想 |
---|---|---|
携帯のアラーム | ピピピピピ | とてもよく響く、うるさい |
おもちゃの銃 | ビュウンビュウン | うるさい |
空き缶を潰す音 | カシャカシャ | 音は小さい、すぐ聞こえなくなりそう |
空き瓶を吹く音 | ぼぉぉぉぉぉぉ | お腹に響く、意外と遠くまで聞こえそう |
自由研究を実施する場所の絵を描く
どこまで音が届くのかを可視化するために、自由研究を実施する場所(音を測定する場所)付近の絵を描きます。俯瞰図(上から見た図)でもいいですが、側面図(横から見た図)でもいいかと思います(下図参照)。要は、なんとなく距離感がわかればいいのです。
音の聞こえる距離を調べる
音の鳴るものを置き(もしくは音を鳴らす人を配置し)、音がなっている間少しずつ距離を取っていき、聞こえなく鳴る場所を確認します。ちょうど音が聞こえなくなる場所がわかったら、それを先ほど書いた絵の中に書き込みます。
用意した音全て鳴らして、それぞれ音が聞こえなくなる場所を調べます。
日を変えてやってみる
晴れ、曇り、雨、風など、天気によって音が変わるかも試してみましょう。
ランキングを作る
聞こえやすい音、聞こえやすい天気などのランキングを作ります。意外な音が1位になっているかもしれません。
上級編
上級生ならば、しっかりと距離まで記載しておくといいでしょう。グーグルマップなどで距離を調べられますので、それを参考に記載するといいかと思います。ただ何れにせよ詳細を記載しないといけないわけではありません。
なぜこの音は遠くまで届くのか、なぜ天気によって音の届く距離が変わるのかなど、自由研究から得られた結果をもとにさらに考察を広げること検討してみましょう。突拍子のない考えでも、ちょっとこれはどうなの?と思うような考察でも構いません。
またその考察をもとに、ネットや本などで音の伝わり方に関する本を読み、そこで得られた知識を感想のところに書いてもいいでしょう。考えを広げ、それを確認することも自由研究のうちと考えてもらえればと思います。
感想を書く
自由研究を行なった感想を書きます。内容としては、以下のようなものが考えられます。
- この音が1番遠くまで聞こえたことが驚いた。
- 意外と音は遠くまで聞こえないということが分かった。
- 雨や風はわかるが、曇りでも音が聞こえにくくなるのは意外だった。
おすすめ自由研究の題材その2:『塩水は本当に浮きやすくなるのか?』
真水と塩水では浮力(ものが浮く力)が違うということはよく知られていますが、実際にどのくらい違いがあるのか、本当に違うのかを検討する機会はなかなかないかと思います。この自由研究はそんな真水と塩水の浮力の違いについて、どこの家にでもあるような道具を使って検証することができます。
用意するもの
- 大きめの鍋
- 塩
- 水
- スケール
- 水に入れるもの(野菜や果物、おもちゃやビー玉などなんでも)
自由研究の手順
水に入れるものを用意する
水に入れる様々なものを入れやすい大きさに切ります。大きさの大小はそこまでは問わず、あくまでも鍋にみんなが入ればそれで良いというおおらかな気持ちで用意すれば良いです。
表を書いておく
下図のように表を書いておきます。
塩の量 | 重さ | 0杯 | □杯 | □杯 | □杯 |
---|---|---|---|---|---|
にんじん | 5g | ||||
じゃがいも | 10g | ||||
きゅうり | 8g | ||||
ビー玉 | 5g | ||||
ガンダムの手 | 10g |
真水、塩水に浮くものを調べる
鍋に真水を入れ、その中に検証するものを全部入れます。浮いたもの、沈んだものを丸ばつでチェックします。
鍋の中に塩を入れます。大さじ1杯ずつ入れてはかき混ぜて、その都度新たに浮いたものがないか確認し、浮いたものがあればその時点での塩の量(何杯入れたか)を記入します。
塩の量 | 重さ | 0杯 | 2杯 | 4杯 | 10杯 |
---|---|---|---|---|---|
にんじん | 5g | × | ○ | ○ | ○ |
じゃがいも | 10g | × | × | ○ | ○ |
きゅうり | 8g | ○ | ○ | ○ | ○ |
ビー玉 | 5g | × | × | × | × |
ガンダムの手 | 10g | ○ | ○ | ○ | ○ |
ただビー玉など密度(単位体積あたりの質量)が大きいものに関してはどれだけ塩を水に溶かしても浮かすことはできない場合が多いです。ある程度塩を足しても浮かび上がってこない場合は諦めましょう。
ランキングを作る
どれが1番浮きやすかったのか、どれが1番浮きにくかったのか、ランキングを作ると楽しいです。
上級編
高学年ならばしっかりと塩水の濃度を計算して記録を取るといいかもしれません。濃度=塩の重さ/全体の溶液の重さ×100で求めることができます。
また同時に水に入れたものの体積を測り、密度を計算して記録するとさらに科学への理解が深まります。
手順1:計量カップにキリのいい量の水を入れる
手順2:それぞれのものを水に入れる
浮いてしまう場合はお箸などを使い、すっぽりと最後まで水に入れます。
手順3:水にものを入れたことでかさが増えた分を確認する
この増えた分が、水に入れたものの体積になります。
次にこのものの重さを測り、体積で割ると密度が求められます。
例えば重さ5.5gで体積が5cc(=5㎤)だった場合、
密度=5.5g÷5cc=1.1g/㎤
となります。
浮かぶランキングと密度の関わりを見ると、面白い発見がありますので、もしできそうならチャレンジしてみてください。
感想を書く
自由う研究を行なった感想を書きます。内容としては以下のような感じでしょうか。
- 塩を入れるとものが浮くというのが本当だということが分かった
- こっちは重いのに水に浮いて、こっちは軽いのに水に沈んだところが不思議だった
- ものが浮いたり沈んだりするのは密度が関わっていることが分かった
おすすめ自由研究の題材その3:『滑りやすいもの、滑りにくいものはどれだ?』
色々なものの摩擦抵抗を検証する自由研究です。身近にある様々なものの「滑りやすさ」を確認することで、ものの材質による摩擦抵抗の大きさを体感できます。
木の板や本など平らなものと滑らせるもの、そして分度器があればいつでも簡単にできる自由研究ですが、一方で滑らせる平らなものの材質ごと、滑らせるものの重さごと、または滑らせるものの接触面積の大きさごとなど、様々な角度から検証することができ、検証の幅が広い自由研究でもあります。
用意するもの
- 滑り台(まな板、本、ティッシュの箱など、平らなものなら何でも)
- 滑らせるもの(鉛筆、消しゴム、おもちゃなど滑り台の大きさに合わせて何でも)
- 分度器
- スケール
自由研究の手順
滑らせるものを用意する
滑らせるものを用意します。滑り台があまり大きくなければ小さいものを、テーブルを傾けるなど大きい滑り台が用意できるのであれば、ある程度大きいものや重いものも用意するといいかもしれません。
表を書いておく
下図のように表を書いておきます。
滑らせるもの | 重さ | 滑った角度 |
---|---|---|
消しゴム | 11g | |
鉛筆 | 6.6g | |
iPad mini | 310g | |
箱ティッシュ | 203g | |
お皿 | 80g |
用意したものをそれぞれ滑らせ、角度を調べる
滑り台の上にものを置き、少しずつ滑り台を傾けていき、置いたものが滑り落ちたらその角度を測ります。
角度を測ったら、事前に書いておいた表に記入していきます。
滑らせるもの | 重さ | 滑った角度 |
---|---|---|
消しゴム | 11g | 45° |
鉛筆 | 6.6g | 32° |
iPad mini | 310g | 19° |
箱ティッシュ | 203g | 17° |
お皿 | 80g | 22° |
ランキングを作る
滑りやすいもの、滑りにくいものは何だったか、ランキングを作ります。
自由研究の広がりその1:滑らせる面の材質を変えて角度を測る
同じ重さ、同じ形であっても、滑らせる面が変わると滑りやすさも変わります。その検証の手順を紹介します。
追加で用意するもの
セロテープやガムテープ
布(目が細かいものと荒いものとがあるといいかもしれません)
他に滑らせる面に貼り付けられるもの(画用紙や紙やすりなどいろいろと考えてみてください)
滑らせる面に色々なものを貼って滑りやすさを検証する
滑らせるものを1つ選び、まずは普通に滑り台を滑らせ、角度を測ります。次に今滑らせたものの底にセロテープを貼って滑り台の上に置き、傾け、滑り落ちる角度を調べます。
同じように滑らせるものの底に布や画用紙など、用意したものをそれぞれ貼り、滑りだす角度を調べます。
底に貼ったもの | 滑った角度 |
---|---|
セロテープ | |
ガムテープ | |
布 | |
画用紙 |
滑らせるもの 消しゴム 11g
底に貼ったものによって滑り落ちる角度が違うということは、同じ重さでも滑らせる面の材質によって滑りやすさが違うということになります。逆にそこに貼ったものによって滑りやすさが変わらないということであれば、滑る面の材質は滑りやすさにそこまで大きな影響を与えないということになります。
自由研究の広がりその2:重さによって滑りやすさは変わるか?
滑らせる面や面積が同じでも、重さによって滑りやすさが変わるかどうかを調べます。
追加で用意するもの
四角いペットボトル
ペットボトルに入れる水の量を調節して滑り台を滑らせる
はじめペットボトルの中が空の状態で滑り台を滑らせ、その角度を確認します。その後ペットボトルに水を半分入れた状態、3/4入れた状態、いっぱいに入れた状態など様々な条件下で滑り台を滑らせます。その際それぞれの重さを測ってもいいかもしれません。
水の量 | 滑った角度 |
---|---|
空 | |
1/4入った状態 | |
半分入った状態 | |
3/4入った状態 | |
満杯の状態 |
滑らせるもの ペットボトル
水の量で滑る角度が変わるようならば、重さによっても滑りやすさが違うということになります。逆に水の量が増えても減っても滑りやすさが変わらないということであれば、ものの重さは滑りやすさにあまり大きな影響を与えないということになります。
自由研究の広がりその3:滑る面積によって滑りやすさが変わるのか?
今度は重さではなく、滑る面積によって滑りやすさが変わるのかを調べます。
追加で用意するもの
四角いペットボトルを2~4個
両面テープ
ペットボトルをつなげることで、滑らせる面積を大きくし滑り台を滑らせる
まずはペットボトルに水をいっぱいに入れ、滑り台を滑らせ、その角度を測ります。次にペットボトルに入った水を半分、もう1つのペットボトルに分けて、両面テープなどで接着し、再度滑り台を滑らせ、その角度を測ります。
また同じ要領でペットボトルを2本から4本に増やし、滑り台を滑らせ角度を測ります。これによって、重さも材質も変わらないながら、滑らせる面積だけ変えて滑りやすさを検証することができます。
場合によっては滑らせる面積を図ってまとめるのもいいかもしれません。
ペットボトルの数 | 滑った角度 |
---|---|
1本 | |
2本 | |
4本 | |
8本 |
滑らせるもの ペットボトルと水(合計○g)
ペットボトルの本数が増えることで滑りやすさが変われば、滑る面の面積は滑りやすさに影響を与えるということになります。逆に面積が大きくても小さくてもあまり滑りやすさが変わらないというのであれば、滑る面の面積はそこまで大きな要因ではないということがわかります。
感想を書く
最後に、検証した結果と感想を書きます。内容としては次のようなものが考えられます。
- ものによって滑りやすさが変わるのが面白かった
- 滑りやすさが一番変わるのは滑る面の(材質/面積/重さのどれか)ということが分かった
小学生の親必見!簡単にできる夏休みの自由研究3選のまとめ
音が伝わる距離の自由研究、水に浮く力の自由研究、そしてものの滑りやすさの自由研究の3つを紹介してきました。もちろんここで紹介した以外にも色々な検証の仕方、ものの見方があります。
けれども何より重要なのはやはり子どもが興味を持ってくれるかどうか、楽しんで取り組んでくれるかどうかです。そして子どもが興味を持ってくれるか楽しんでくれるかは、実はこの自由研究について親がどれだけ興味関心を持って関われるのかにかかっているのではないでしょうか。
またこういった自由研究は何も「うちの子は文系だから関係ない」ということでもありません。仮説を立て、検証し、考察する力は研究職だけではなく、社会人になって何よりも必要で大事な力の1つです。それらを養うという意味でも、自由研究は非常に価値のある課題です。
是非とも子どもと一緒になって楽しんでもらえればと思います。
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