天国大魔境11巻の感想です。前回は稲崎露敏再登場の予感についてと、人工知能ミーナが一切出てこなくて 不気味だなという話をしていました。今回は、天国大魔境11巻後半に出てくる、死体から頭蓋骨を取り出すヤバい敵についてです。
マルとキルコは旅のさなか、バケモノ討伐隊募集の看板を発見します。けれど実際にそこへ行ってみると誰もいなく、ただただバケモノだけが闊歩していました。つまりは討伐隊を募集していた人たちは皆バケモノにやられてしまったということですね。
そのバケモノですけれど、どうやら人食いの怪物ヒルコではないようです。なぜなら、いつもならヒルコの気を感じることができるマルが、まるでその気配を感じれないからです。
さて、ではそのバケモノは一体誰なのか、ちょっと考えてみたいと思います。
討伐隊が募集されるほどにヤバいバケモノ
マルとキルコがバケモノの住処に行くと、そこにはたくさんの頭蓋骨がありました。古いものも、新しいものも。どうやらバケモノは殺した人間を解剖して、わざわざ頭蓋骨を削り取っていたようなのです。単なる異常者なのか、何か目的があるのかはわかりませんけれど。
見た目は、よく都市伝説に出てくるようなビッグフットとか雪男とか、そういうのを感じさせます。マントをかぶっているので顔は分かりませんけれど、体は結構大きく、肩とかがちょっと不自然に盛り上がっているような気がします。
また少なくとも11巻時点ではマントからはみ出る足が影(黒塗り)で表現されているため、この足が男性の足なのか女性の足なのかもよく分かりません。運動性能は非常に高く、マルとキルコが逃げても逃げても的確に追ってくるようですし、人の頭くらいはありそうな大きな石を正確に投げて攻撃してくるというのも考慮しなければなりません。
というかこの石を投げてくるというのが相当にヤバそうです。普通石を投げて、それが壁に当たったとしても、せいぜいちょっと傷がつくくらいでしょうけれど、このバケモノの投げる石は、いとも簡単に壁に穴を開けていました。また道路のカーブミラーもバリンと破壊してしまっていましたしね。
投石攻撃がまるでライフルの一撃のように重いのです。いえ、それ以上かもしれません。もし仮にこの投石攻撃が人に当たってしまったら、恐らく人体など容易く貫通してしまうでしょう。頭などに当たってしまったら間違いなく頭が吹っ飛んでしまいます。
またもう1つ恐ろしいのが、もしかしたらこのバケモノは人の心を読んでいるか、あるいは未来予知ができるということです。至近距離にまで近づかれてしまった時、キルコは光線銃で応戦したのですけれど、それを避けられててしまったのです。しかも、弾が出る前からすでに避ける動作に入っていました。
こんなことができるのは、今まさに撃つぞという人の心を読むことができるか、あるいはこのタイミングで撃ってくるということが分かる予知能力者だけです。まあもしかしたらどこかの女子高生エージェントみたいに、銃口の向きと引き金を引く動作だけで弾道を見極めてかわすことができる動体視力があるのかもしれませんけれど。
通常の人間の域を超えた力を持っているバケモノですけれど、どうやら人食いヒルコではないようです。少なくともヒルコの気配を感じることができるマルには、その気配を感じ取ることができないようでしたので。つまり、当然ヒルコでもないですし、また少なくともミチカなどのように高原学園の遺伝子操作的な感じで強くなった人間でもないということです。
バケモノの正体は何か
では実際にこのバケモノの正体は何か考えてみたいと思います。ヒルコではない、それでいて常人ならぬ力を持っているとなると、そうそう選択肢はないように思えますけどね。
強化された稲崎露敏説
天国大魔境11巻の前半で散々露敏の過去回想があったばかりですからね。露敏再登場の伏線だったと考えても、そう的外れではないかと思います。露敏そのものは普通の人間レベルの戦闘力しか持ち合わせておらず、少なくともマルには全く歯が立ちませんでした。けれども露敏はずっと以前からヒルコと人間をつないで何かの研究を行っていたので、それが身体強化や特殊能力を発現させるものだったとしてもなんらおかしいことはないと思います。
バケモノが住んでいた廃墟には新旧様々な人骨があって、そこで様々な実験が繰り広げられていたことが示唆されていました。実験を繰り返し、とうとう人ならざる力を手にした露敏が、たまたまやって来たマルとキルコを殺そうとしたとして、決しておかしくはないと思います。少なくとも一度マルに散々ボコボコにされコケにされていたわけですから、恨みがないわけがありません。
トキオの子ども説
これまで高原学園いずくのえ島研究施設の主要メンバーで、世界崩壊後登場していないのはトキオとコナくらいです。もちろん今回のバケモノがトキオやコナであるはずはありません。なぜならトキオとコナはヒルコの気配がないわけがないので、マルがそれを察知できないわけがないからです。
けれどもトキオとコナの子どもだったらどうでしょうか。仮説ですけれど、ミーナの人口子宮で産まれた子どもたちはヒルコの気配があるけれど、そのヒルコたちから産まれた子どもについてはヒルコの気配はない、ということなら、マルがヒルコの気配を感じられないのも頷けます。
しかもトキオとコナももともとデザインベビーですから、その2人から産まれた子どもも、投石で壁を破壊できるほどの力や、至近距離で銃撃を回避できるほどの動体視力もないとは言い切れません。
バケモノが人体実験したらしき場所には高原学園のチラシが置いてありました。なので尚更、高原学園の関係者であり崩壊後未だ未登場であるトキオとコナの子どもという線は、ありえないことではないかと思うのです。
高原学園のロボット説
そもそもあれだけの力と動体視力を持つ者が人間であるわけがない、という説です。つまりロボットですね。体も脳も全て完全なロボットというのは、恐らく天国大魔境の荒廃した世界では技術的に無理ではないかと思います。けれども体が機械で、脳だけ人間というのは、なくはないでしょう。誰でもできることではないでしょうけれど、少なくとも猿渡の手によって、桐子の体に春希の脳が、ナタの体には上仲園長の脳が、ロボットの体にナタの脳が移植された実例があります。
となると、では誰の脳が移植されたのか、ということになりますけれど‥‥。現状脳をそのまま移植する技術については猿渡の専売特許のようなところがありますから、少なくとも猿渡の知り合い、下手すると高原学園のヒルコの誰か、という可能性も大いにあります。じゃあ誰かということになると、もはやトキオとコナくらいしか候補が残っていないわけですけれど、それはちょっと嫌ですよね。
まとめ
天国大魔境11巻に登場したバケモノについて、一体誰なんだろうなというお話をしてきました。当然、これまで全く名前も出てこなかった第三者という可能性だって大いにあるのですけれど、やっぱりあの力と運動神経はちょっとただモノでない感じがします。果たして誰なのか。そしてそんなヤバい敵と戦ってマルとキルコは生き残れるのか。次の巻が楽しみで仕方ないのです。
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