こんにちは、ゆっちです。最近買った漫画の感想をねちねち語るコーナーでございます。今回は「杉雪カコと見たい明日」という漫画ですね。
「チャンピオンクロス」で連載されているタイムループ×ラブコメディです。タイムリープということでSFがベースになっていますが、その本質は「今この瞬間をどう生きるか」というまさしく心揺れ動く思春期の感性と、不器用な男女のなんとも言えない距離感が描かれています。
杉雪カコと見たい明日のあらすじ

杉雪カコと見たい明日 1 (少年チャンピオン・コミックス)
物語の主人公は、浅倉アサキ。中学校時代引きこもりの陰キャが高校デビューして見た目も性格も明るくなった、普通の男子高校生です。
ある日、彼は自分がずっと同じ1日を何度も繰り返していることに気づきます。日付が変わる瞬間に時間が巻き戻り、周囲の人々は記憶を失い、また同じ日がやってくる、そんな繰り返しです。
アサキは混乱するものの、繰り返される1日の中で1人だけ異質であることを発見します。それは、同じクラスの超陰キャな女の子、杉雪カコでした。毎日同じ1日が繰り返される中、彼女だけが毎回違う行動をとっていたのです。夜の学校のプールに入ったり、贅沢な食事を楽しんだり、ループ前提で普段ならできないことをとことん楽しんでいました。彼女もまたアサキと同様、ループの記憶を保持していたのです。
アサキはこの異常事態を打開し「明日」へ進むためにカコに協力を求めるのですが、カコはそれを拒否するのでした。
「最高ですよ!永遠に現実逃避できますから!」
こうして、どうにかループしている1日を進めたいアサキと、ループ生活を満喫したいカコの、相反する目的を持つ2人の秘密の1日が始まっていきます。
杉雪カコと見たい明日の登場人物
「杉雪カコと見たい明日」は、早く明日になってほしい陽キャの朝倉アサキと、いつまでも明日が来てほしくない陰キャの杉雪カコ、この2人を中心に物語は進みます。しかし、ただ陽キャ、陰キャというだけでなく、言動の節々にオタクっぽさがにじみ出ていたり、どことなく育ちの良さが窺えたりします。
朝倉アサキ

物語の語りてで、基本的には常識人です。ループから抜け出せない焦りを抱えつつも、ループを楽しみたいカコのペースに巻き込まれてしまいます。付き合いがいいと言ってもいいかもしれません。
当初はループを抜け出すことに執念を燃やしていましたが、カコとともに過ごす時間が増えるにつれて、ループする時間を楽しんだり、周囲の人たちの意外な一面に気づいたり、またその関係を深めていきます。昔は引きこもりだったようで、たまに無理をして陽キャ感を出しているような言動が見られます。
とても優しい性格で、ループを繰り返し明日を迎えたくないカコに付き合いつつも、決してその理由については追及することもなく、じっくりと関係性を深めながら内面に迫っていく様子が見られます。
杉雪カコ

やや陰鬱とした雰囲気を纏っている女の子です。アサキとともに1日がループしていることを認識していて、24時になればリセットされる世界で欲望に忠実にふるまいまったり、奇想天外な行動を取ったりなど、ループを最大限楽しんでいます。高校入学当初から「やりたいことも希望もないです、明日なんか来なければいいのに…」と語るほど未来に希望を持っていません。
無駄に身体能力が高かったり、さらっと人の本質を見抜いたりするなど、もとの能力の高さが窺えます。またアサキに対してはやたらキスやその先の行動を仄めかしながらからかうことが多いのですが、「キス」がループしている1日を進めるカギであることは間違いないモノの、それ以上にアサキに対しての好意なのか、それともそれ以外の何か理由があるのか、どちらにせよまだまだ秘密を隠し持っているようです。
静井ヤヨイ

アサキがひそかに想いを寄せているギャルです。序盤は、アサキがループから抜け出したいモチベーション的な存在程度なのですが、物語が進みアサキとカコと仲良くなっていくさなかにループの世界に入門してきます。
アサキとカコの関係に尊みを感じていて、ループしている1日の中で2人が何をやっているのかに非常に強い興味を持っています。ヤヨイや、ヤヨイの友人のクレ子がループを認識するようになることで、これまでアサキとカコだけの世界を描いた物語だったのが、一気に世界が広がって、賑やかかつ混沌な学校生活へと変貌を遂げていきます。
物語の構造と変化、深まる謎と人間関係
杉雪カコと見たい明日は、序盤こそ「ループを舞台としたラブコメ」といった印象でしたが、物語が進むごとにドラマとしての厚みが増していきます。
第1巻:アサキとカコ
ループに気づいたアサキがカコと接触し、彼女の自由奔放さに振り回される様子が描かれています。ループをどうやって抜け出せるか、といったループものによくあるテーマは敢えてゴールにせず、ループする1日をいかに楽しむか、そしてその中でアサキとカコの関係がどのように育まれていくか、といった点に焦点が当てられています。
また2人の仲が深まっていくことで、カコの行動がどんどん変化していくのも見逃せません。登校時にアサキを待ち伏せてみたり、アサキがヤヨイたちと遊んでいるところに乱入したりなど、1話目の誰とも関わりたくないと強い意志を見せていた頃から比べると大きな変化です。
第2巻:ループがもたらす変化
ループの中でいろいろな体験を共有することで、アサキとカコの関係が少しずつ変化していきます。ありていな言い方をすれば、お互い惹かれ合っていきます。ただそれだけではなく、2人と周囲の関係もまた変化していきます。
ループを利用して友人の恋を応援したり、ループがきっかけで友人の秘密に気づいたりすることで、アサキとカコはヤヨイをはじめ多くの友人と関係を深めていきます。特に他人を拒絶していたカコがヤヨイやほかのクラスメイトに絡まれるようになっていく変化は非常に興味深ループする2人だけの世界が少しずつ広がっていき、2人の周囲に様々な変化をもたらしていくようになります。
第3巻:カオス化する日常
ついにヤヨイたちをハジメとするアサキとカコ以外の人間に、ループが認識されるようになり、これまでずっと2人だけのものだった世界がぐっと広がっていきます。またループされる日々に変化がもたらされることによって、これまで固定されていた日常が予測不能な変化を見せ始めます。
ループを認識できない人間も感情は蓄積する。具体的に言うと、その日に上がったアサキとカコの好感度は翌日に持ち越され、それがループによって繰り返されることで2人はとんでもない人気者になってしまう、といった具合です。だんだんと日常はカオスとなっていき、これまでの日常が崩れて行ってしまいます。
そして、アサキはカコにこう提案するのです。
「次のループはふたりで、学校サボらない?」
アサキのカコを想う気持ち

先述のセリフは第3巻の一番最後のシーンですが、このセリフにアサキの想いが込められているように感じられます。ヤヨイやクレ子、ヒナタたちにループが認識されてしまい、ループは2人だけの特別ではなくなりつつあります。またループの中で多くのクラスメイトの相談に乗ってしまったことで好感度が爆上がりしていまい、もはやクラスメイトたちはアサキとカコを放っておいてくれなくなってしまいました。
先生にも目をつけられてしまったことで、夜に「部室」に集まって過ごすこともできなくなってしまいました。アサキがずっと、早くここから抜け出さなければと思っていたループする日常が、いつの間にかかけがえのないものになっていたのです。
あこがれていたヤヨイからも、秘密を共有させてくれるほどに仲良くなって、クラスメイトの誰からも好かれる、まさにかつて思い描いていた理想の自分に慣れていたというのに、それよりも、カコとの日常のほうがアサキにとっては大事だということです。
第3巻まで追いかけてきて、とうとう2人の関係はここまで来たんだなと、多くの読者が感慨深くなる一コマなのでした。
描きおろし特別編/朝倉アサキと眩しい世界

第3巻には、単行本だけでしか読めない書きおろしエピソードが収録されています。内容は、引きこもりのアサキがナナ姉(アサキの叔母に当たります)に引きずられて外に出て、そこでちょっとだけ自分を変えてみたいと思うきっかけに出会った、というものです。
アサキのかつて陰キャであった頃の様子と、そこからどうしてあれほどまでに明るくなろうと決めたのか、そんな心境の変化を垣間見える非常に心温まるエピソードなのですが、あっと驚いたのはその部分ではありませんでした。。
このエピソードには、恐らく杉雪カコらしき人物が登場します(持ち物にK.SUGIYUKIと書かれていましたから、ほぼ間違いはないでしょう)。そしてこの時のカコらしき少女は、今のような陰キャ風の少女ではありませんでした。むしろ、深窓のお嬢様といった方がぴったりくる様子だったのです。
厳しい父、詰め詰めのスケジュール、知り合いへの愛想笑い、自由のない日々。これはまさしく「杉雪カコと見たい明日」の根幹に関わる重大なヒントと言えるでしょう。なぜカコは明日が来てほしくはないのか、そのヒントが彼女のおかれた環境にあるのでは?と考えられるからです。
このエピソードはあくまでも高校に入学する数年前(恐らく1~2年前程度と考えられます)のものとして描かれていますが、この時のカコから現代までの間に一体何があったのか非常に気になるところです。
そしてカコにとって「今週の土曜日」がエックスデーのようですが、そこに果たして何があるのかも、このエピソードからいろいろと推測できる可能性があります。親に無理やり結婚させられる、もしくは両親が離婚して嫌いな方の親に引き取られるといった予定が有力な候補だと言われていますが、皆さんはどうだと思いますか?もし思いついたことがあれば、ぜひコメントで教えてくださいね。

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