薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~最新刊16巻が発売になりました。そして読んでみた感想ですけれど、薬屋のひとりごと16巻はまさに答え合わせの巻と言っても過言ではないと思います。
これまで貼られていた伏線が一気にぶわーっと回収されていくような、そんな感なのです。「ああ、これはこういういみだったのね」とか、「あの時のエピソードはこういう風につながってくるのね」という感じです。
ということで今回は、薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~16巻で明らかになった伏線なんかも紹介しつつネタバレしていきたいと思います。
薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~(1) (サンデーGXコミックス)
薬屋のひとりごと16巻の感想と伏線ネタバレ
薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~(16) (サンデーGXコミックス)
さて、それでは答え合わせをしましょう。今回は大きく3つ。皇太后の「お気に入りは隠しておかないと」のセリフの回収と、子翠と初めて会った場所についての考察、子翠の正体、特使の秘密、そして子昌の企みについてお話していきます。
お気に入りは隠しておかないと
これは12巻第四十七話黄衣の女にて、皇太后が壬氏に対して忠告していた言葉です。
11巻後半から12巻前半(ちょうど第四十七話くらいまで)では、猫猫が皇太后からある調査を依頼されていました。先帝が亡くなった当時、霊廟にて1年安置していたにもかかわらず、遺体が腐敗せずに残っていました。普通であれば、1年もそのままにしておいたら、それこそ直視できないほどに腐敗しているはずなのですけれど、先帝の遺体はとてもきれいなままだったそうなのです。
皇太后はこの件について、自分が呪ったからだとひどく気に病んでいる様子でしたけれど、猫猫はそれが呪いなどではなく、科学的に証明できる事象であることを、再現性のある単なる偶然であることを突き止めました。しかもそこで新たに判明した事実は、皇太后の胸につかえているもやを少しだけ取り除くことにもつながりました。
皇太后はそんな猫猫を壬氏が気に入っていることを察して、壬氏にそう語り掛けたのです。
壬氏がただの宦官ではないことは、皇太后が知らないはずがありません。猫猫が壬氏の弱点になりえることをひそかに忠告したというわけです。壬氏もそれに気づかなかったわけがないんですけれど。まあうやむやのままここまで来てしまったなあという感じがしますね。
ここから考えるに、猫猫がさらわれた原因は父である羅漢ではなく、もちろん皇帝でもなく、皇弟である壬氏に原因があるのだと思います。その根拠については後述しますけれど、とにかく、猫猫は壬氏に対するけん制か、あるいは人質のために連れ去られた可能性が高いのです。
この壁の裏、子翠と初めて会った場所だな
猫猫が後宮の外への秘密の通路を通るときのシーンです。
これは8巻第三十一~三十二話のことですね。ちょうど玉葉妃の娘である鈴麗(リンリー)公主が翡翠宮の外をお散歩できるようになったころです。鈴麗公主が突然走り出したかと思ったらそこに小さな子猫がいて、その子猫を保護していたのが子翠でした。
そもそも後宮に愛玩動物はほとんどいないそうです。動物を飼うのには許可が必要だそうで、もし誰かが飼っているのだとしたら壬氏が知らないはずがないでしょう。だからこの子猫は誰かが持ち込んだものではなく、後宮の外から忍び込んだということになります。
つまり子猫がいたこと自体が、後宮に出入りできる場所があることを示唆していたわけですね。
かつて6巻第二十四話にて、薬によって一度死んだ翠苓が、生き返ったのちどうやって外に出たのかは不明のままでした。棺の業者と同じ服を着て、男に混じって堂々と門から出たのでは?と猫猫は推理していましたけれど、そんなことをする必要なんかなかったわけですね。さくっと裏口から出ることができたわけですから。
しかもこの場所、北側の軍部のある当たり、何かといろいろあるんですよね。翠苓が植えていたのか、薬草がたくさん植えてありましたし、静妃の死体が埋めてあったのも北側の方です。おしろいの花が植えてあったり、何かと子翠が出没するのもこの辺でした。
ある程度放置されていた場所だからこそ、翠苓や子翠たちが自由にできたということも考えられますし、外への出入り口があるからこそ、翠苓や子翠たちはそこを拠点のように活用していたとも考えられます。
子翠の正体
薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~16巻で一番驚いたのが、子翠=楼蘭(ろうらん)の事実です。
しかも子翠=楼蘭は、いずれ後宮から自分がいなくなってもいいように、ずっと以前から準備をしていました。毎回違う国の服や化粧でごてごてに着飾って、侍女は自分と背丈や顔の形が似ている者で固めて、いざ子翠が後宮を立ち去り侍女と入れ替わっても問題ないようにしていたのです。
なるほど、9巻第三十三~三十四話にて死んだ妃の侍女たちが身代わりを用意して、妃が生きているように見せていた事件と非常によく似ています。このエピソードはまさに子翠の正体の伏線だったのでしょう。
考えてみるとほかにも、過去にも子翠がただの下女ではない伏線のようなものがちらほら見られていました。それは、子翠が下女に見合わない知識と教養を持っていたということです。
8巻第三十二話にて、猫猫が2度目に子翠に出会った時、子翠は紙の束をメモ代わりに昆虫のスケッチをしていました。細部までしっかりと描かれたそれは非常に精巧で、まるで何度も観察しスケッチしていたことが伺えます。
後宮では字すらまともに書けない人が多く、当然のことながら紙の束を持ち歩きそれに筆を走らせることを経験したことがない人も多いと言われています。それなのに、子翠はそれをするのにためらいもなく、また筆遣いも非常になれていることが伺えました。
14巻第五十四話では多民族の奴隷事情などについて詳しかったり、12巻第四十八話の怪談を披露するシーンでは猫猫も驚くほどの話の構成と話術の上手さを見せていました。
考えてみると、子翠は桜蘭が後宮に来た後突然現れましたし、ちょうど翠苓とも入れ替わりでした。
また子翠が後宮の浴場に通うようになったのは、ちょうど翠苓が宦官の奴隷として後宮にやって来た14巻第五十四話頃です。今にして思えばという感じですけれど、なんとなく納得できますね。
特使の企み
猫猫がさらわれた先、どこかの里のようですけれど、そこには10巻第三十八話あたりに登場した西からの特使が来ているようでした。月の精の舞が見たいと無茶ぶりして、壬氏が女装して踊った時の、あの特使です。
ここでまた新しい推理が成り立ってしまいました。
西からの特使は今、こっそりとこの猫猫がさらわれた里にやってきています。もしかしたらそこそこ長く滞在しているのかもしれません。
そして13巻第五十話にて壬氏が暗殺されかけた際に使われたのは、西の最新の火器でした。まだ西の特使と暗殺に使われた火器が明確につながってはおりませんけれど、9巻第三十六話で話題に上がった女性たちが西から来た特使である可能性が非常に高いと言われていました。厳重な警備の中、1人の女性が、鏡のトリックを使ってうり二つの女性がもう1人いるように見せかけていたかもしれないというやつです。
もし特使が警備の目を盗んで、壬氏を暗殺しようとした最新の火器を横流ししていたのだとしたら、特使が今滞在しているこの里は壬氏を敵視している人たちの里ということになります。
壬氏=皇弟が猫猫を気に入っていることは、事情に聡い人なら知っていてもおかしくありません。
後宮ではしょっちゅう一緒にいますし、皇弟として参加した狩りにも猫猫は同行していました。壬氏が皇弟として参加していた祭事にて、壬氏が事故に見せかけて暗殺されかけた時に猫猫が身を挺してかばっていたことは、実に多くの人目に触れているかと思います。
猫猫が壬氏の弱点であることが広まってきています。壬氏への対策として猫猫がさらわれることは十分にあり得ることなのです。
子昌はとんでもないことをやろうとしている
猫猫がさらわれた先の里が子翠のふるさとであったことは想像に難くありません。子翠や翠苓を「ねーちゃん」と慕う少年が登場したことからも、それは明らかです。気になるのは、「もう会えないって聞いていた」という少年のセリフです。子翠も翠苓も、本当はこの里に戻ってくる予定はなかったということになります。
まあ翠苓はともかく、子翠は妃として後宮に入ったのだから、当然と言えば当然ですよね。皇帝に手を付けられたら一生後宮から出ることは叶わないと言われているわけですから。まさか妃として後宮に入って、皇帝から一切手を付けられないということもないでしょうし。
けれども子翠は戻ってきました。壬氏が言ってましたけど、後宮からの逃走は極刑ともなる重罪とのことです。つまり捕まれば死であることを覚悟して後宮を抜け出しているということです。子翠も、そして同行した翠苓も、生半可な覚悟ではありません。壬氏に対する切り札とするために猫猫を誘拐したのだとしても、相当高リスクだ言っていいでしょう。
問題は、猫猫を連れてこの里まで戻ってきたことが、事前に計画されていたことなのかどうか、ということです。
そもそも猫猫がさらわれたのは、猫猫が深緑(シェンリュ)の企みに気づいたことがきっかけでした。
深緑がひそかに、じわじわと、後宮を蝕んでいたことに猫猫は気づきました。そしてそれをあろうことか、本人に確かめようとしたのです。結局猫猫ははっきりと深緑を問い詰めはしなかったものの、ある程度確信を得るに至りました。そしてその場を離れようとした際に、翠苓に捕まったのです。
ではもしここで猫猫が深緑のもとに行かなかったならば、猫猫はさらわれなかったでしょうか。
答えはノーだと思います。西の特使との関りと武器の密輸入、羅漢の養子である羅半が語った金(かね)と鉄の流出。明らかに大量の武器の密造があり、それはすなわち戦の前触れを示唆しています。つまるところ、子翠=楼蘭の父である子昌の一族が反乱を起こそうとしているわけです。
そして猫猫はその戦における交渉材料の1つとして使われるのだと考えられます。
皇帝に対して妃を人質に取ることは容易ではありません。警護は厳重ですし、相当強い抵抗が予想されます。けれども猫猫は1人で後宮内の様々な場所をうろつきますし、警戒心もかなり希薄です。自ら危険に飛び込むくらいには警戒心がなさすぎるのです。
また翠苓が猫猫に言うことを聞かせるあたって「不死の薬」をダシにしていましたけれど、このようにある程度操作しやすいというのも、猫猫を狙う理由の1つでしょう。
そしておそらくですけれど、翠苓はこのために宦官として後宮に侵入したのではないでしょうか。猫猫を捕まえるという、ただそれだけのために後宮に潜入したということです。もちろん、先に後宮に入っていた子翠と連絡を取り合うためでもあったかとは思いますけれど。
猫猫は人質です。きっとこれ以上にひどい事にはならないように感じます。
ただこの反乱を計画した人間というのは、若干狂気を孕んでいるようにも感じますけどね。これまで後宮を恨み、ずっと子どもが生まれないようにしてきた深緑の所業も含め、政治的な思惑というよりも、私怨というか、なにか感情的なものが絡んできているように見えなくもありません。少なくとも子昌が冷静に反乱を企てているだけという感じがどうもしないのです。
もしその場合、猫猫の身の危険も十分にあり得ます。どうか無事でいてほしいところですね。
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