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ドラクエ5小説の主人公リュカがダメお父さんな件

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1992年にスーファミソフトで発売されたドラゴンクエスト5は、親子三代に渡る壮大なシナリオと、モンスターを仲間にできるというシステムが好評を博し、今なお多くのファンに愛されているゲームです。特にゲーム中盤、人生のパートナーを決める「結婚イベント」については、今なお熱い議論が交わされるほどです。

さて、今回はそんなスーファミの名作ドラクエ5の小説のお話です。ゲームでは詳しくは描写されていない各登場キャラの心情が繊細に描かれていて、ドラクエ5の世界が1万倍広がるこれまた素晴らしい名作なのですけれど、そこに登場する主人公、ちょっとダメお父さんなんですよね。ちょっと息子がかわいそうというかなんというか。それに王様としても果たしてどうか、なんて話もあります。

ということで、今回はドラゴンクエスト5の小説に登場する主人公リュカについてのお話です。

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ドラゴンクエスト5の小説とは?


小説 ドラゴンクエスト5〈1〉(エニックス文庫)

1993年、スーファミソフトのドラクエ5が発売された翌年に発売されています。著者は久美沙織先生、イラストはいのまたむつみ先生です。全3巻で、それぞれ幼少期、青年期前半の双子誕生まで、そして青年期後半のビアンカを助けにいくところから最後までを綴っています。

ゲームでは詳しく語られなかったサブキャラについても深掘りされていて、例えばゲーム冒頭で主人公と同じ船に乗っていた船乗り、「男の子はどんな事があっても泣いちゃいけないぞ」と言う男にドゾブという名が与えられて、青年期の主人公を手助けしていたりとか、サラボナでフローラに想いを寄せているアンディとフローラの恋の物語が描写されている場面もあります。

また仲間モンスターについても、スライムナイトのピエールが実は主人公の母親マーサと仲がよかったスライムが進化した個体であることとか、一度仲間になったものの逸れてしまったドラゴンキッズのコドランが、終盤にグレイトドラゴンのシーザーとなって再度仲間になる等、様々なドラマが描かれています。

個人的にはヘンリーと共にラインハットを奪還するエピソードや、ビアンカとの再会あたりのエピソードが大好きで、これまで散々人生で苦労してきた分を少しずつ取り返していく過程に、いつ読んでも感動してしまいます。

ゲームのノベライズではありますけれど、ゲームをやったことのない人でもすうっと物語に感情移入できる非常に素晴らしい作品です。もちろんゲームをプレイしたことのある人でも十分満足できる完成度です。様々な登場キャラの心情が深く丁寧に描写されていて、ゲームでは発生する各イベントを客観的にしか見れなかったのが、強い納得感と共感を得られるものとなっていて、非常に評価の高い物語になっています。

小説ドラクエ5の主人公リュカはダメお父さん


小説 ドラゴンクエスト5〈2〉

さて、そんな小説ドラクエ5ですけれど、主人公のリュカの言動にちょっと引っ掛かりを覚えないでもないところがたまにあるんですよね。どんなところかというと、例えば、一緒に旅をする双子の男の子のほう、ティミーに対する態度です。ティミーが、これまで探し求めていた伝説の勇者であることが判明した時に、すごく恭しい態度を取ったんですよね。

「どことなりともお連れしましょう。おおせのとおりお仕えしましょう。貧士はながらく、御身をお捜しもうしあげていました」

まだ再開したばかりの自分の子供に対してですよ?ちょっと酷くないですか?初めに父親にこんなことをされてしまったら、子供はその父親にどう甘えたらいいのでしょう。もちろんその後は自分の子供として接してはいますけれど、なにせ1番初めがそうだったからか、どことなくよそよそしいというか、表面上だけの父親という感じがしてならないんですよね。

また一方で双子の女の子のほう、ポピーへの態度が若干柔らかいように感じてしまうから、なおさらティミーへの態度が気になってしまうというのもあります。

ポピーはティミーに比べて魔物と仲良くなるのが得意です。小説ドラクエ5の2巻では、仲間になるモンスター皆リュカに惹かれて改心しました。けれど3巻ポピーが登場してからは、リュカ起因で仲間になるモンスターは、以前逸れていたドラゴンキッズが成長して再び同行することになるグレイトドラゴンだけです。

で、何が言いたいかというと、モンスターを仲間にすることについて双子が衝突するのですけれど、その際にリュカはポピーの肩を持つわけです。もともとリュカもよくモンスターと仲良くなっていたので、ポピーの特性も気持ちもよく分かるわけです。

逆にティミーは、モンスターを仲間にすることはできないですし、モンスターに対しては常に疑いの目を持って接していますから、やっぱりその点ではポピーともリュカともちょっと合わないのです。先述したティミーへの態度も相まって、なんかティミーにだけキツく当たっているように感じてしまうのです。

ここまでリュカの父親としての違和感についてお話ししてきましたけれど、考えてみればそれも当然なのかもしれません。というのも、リュカは双子達とは8年前生まれてすぐの頃に会ったきりで、その後すぐに石化。8年経ってからいきなり8歳の男の子と女の子が「あなたの子供です!」と現れた訳です。なかなかすぐに受け入れるのは難しいかもしれません。リュカにとってみれば「親戚の子供」くらいにしか感じられないとしても全然おかしくはないでしょう。

加えて、ティミーが、リュカの追い求めていた伝説の勇者であることも決して無関係ではないでしょう。伝説の勇者の捜索は、パパス、リュカともに悲願でした。リュカは青年期サンタローズにてパパスが隠していた伝説の剣を発見する訳ですけれど、そんな素晴らしい父パパスですら、母マーサを助けることのできる伝説の勇者ではなく、更に自分にも勇者の資格はなく、それから8年経ってようやく自分の息子が伝説の勇者であることを知りました。

もちろんようやく伝説の勇者に遭うことができて嬉しい気持ちよりもあるかとは思いますけれど、同時に悔しいと言うか、羨望とか、あとは嫉妬のような感情すらあったのではないかなと。

「どことなりともお連れしましょう。おおせのとおりお仕えしましょう。貧士はながらく、御身をお捜しもうしあげていました」

このリュカの言葉にどんな感情があったのか。そしてティミーの気持ちを考えると、なんともやるせない気持ちになってしまいます。

グランバニアの王様としてのリュカ


小説ドラゴンクエスト5 3 (エニックス文庫 53)

また、リュカの王としての資質についても疑問があります。ゲームでも小説でも、リュカはその後グランバニアの王として玉座に収まることになりました。けれどもその後王としてどれだけ責務を果たせるでしょうか。

なんというか、これまで全くと言っていいほど今まで王様の仕事を見てこなかったですし、勉強もしてこなかったじゃないですか。ヘンリーなんかは7歳まで王城にいましたし、なんならリュカの子供達の方がずっと王子王女として城にいましたから、まだ王族としての暮らしを知っていますし、求められる立ち振る舞いや責務を理解できるのではないかと思います。

リュカは幼い頃から、それこそ物心つく前からずっと旅をして来ました。家来として傅くサンチョという存在が身近にはいたものの、果たしてそれで王様とはなんたるものか、肌感覚として理解することは非常に難しいのではないかと思います。

ちなみに、デモンズタワーにおいてジャミに王たる資格なしと指摘されていましたけれど、正直なところ私としては、それについてはそこまで非難することではないかなと思っています。なにせリュカにとっては、これまで辛く苦しかった人生において、ようやく手に入れた幸せを踏み躙られたのですから。

リュカにとっては攫われたビアンカは幸せの象徴だったと思いますし、しかもずっと苦楽を共にして来た仲間モンスター達までも、敵の襲撃によって命を落としていました。きっと怒りで目の前が真っ赤になったことでしょう。そこについては責められるものではないと私は思います。

また石から復活した後にビアンカを探しにいくことや、イーブルを倒した後母マーサをを助けにいくことについても、確かに王としての行動ではないとは思いますけれど、それだけで王としての素質なしとはさすがに言えません。愛する人を助けたい想い、亡き父の意志を成就させたい想いについては、否定できないと思うからです。ただし、自分がいない間国をどうするかついては、ちゃんと憂慮すべきであったと思います。

ヘンリーは、弟が玉座についているのだから今になって自分が帰還すると政治が乱れる、とあえてラインハットに戻らないようにしていました。ゲームでは特に明言はされていなかったですけれど、小説版では、父ラインハット王の後妻として来た継母の様子から、異母弟であるデールに王位を譲らなければ国が揺らぐと考えて、あえて自ら愚者を演じていたことが描写されています。

小説において、リュカは明確に、自分に王は向いていないと言っていました。けれども、パパスの後継者として王座につくことを望まれ、それを一度承諾してしまっていますね。そして妻を探しに、母を探しに国を出てしまいます。そういえば小説の1巻にて、ビアンカの母親マクダレンがリュカをこのように評していました。

また青年期のラインハット騒動の後も、ヘンリーは非常に強く求められながらも、玉座に着くことは頑なに断っていました。余計な混乱を生むこともそうですけれど、一番は、これまで王であった弟のことを想ってのことでした。これまでの悪政を挽回できないまま王位を譲るとなると、弟デールの立場がなくなってしまうからということでしょう。

あの子はどこにも留めて置けない、困っている人がいたら自ら助けに行ってしまう、じっとなんかしてられない子だ、と。

きっとそうなんですよね。ずっと一つの場所にはいられない性なんだと思います。正直、ティミーが大きくなったらとっとと王位を譲って、自分は次の旅に出ていっちゃうのではないでしょうか。

まとめ

魔王を倒して、ビアンカも戻って、きっと今後リュカは時間をかけて子供たちとの関係を作っていくのだろうなと思います。誰だって、いきなり親になれと言われてなれるものではありませんからね。1人では大変でも、ビアンカと2人ならきっと大丈夫ではないでしょうか。

ただティミーが大きくなって、リュカが王位を退いて城を出て、数年して戻ってきたときに、2人の親子げんかに国が巻き込まれたりとかしないかなと、ちょっと思ったりもして。

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