スパイである夫、殺し屋である妻、そして相手の心を読む超能力者である娘の3人家族の様子を描いたハートフルコメディ、スパイファミリー。その舞台となる西国(ウェスタリス)と東国(オスタリア)が、かつての東西ドイツであることは、賢明な読者ならすぐにピンとくるでしょう。
では作中で登場する各組織についてはどうかというと、これはなかなか判断が難しいかもしれません。一見東西ドイツの諜報機関なのかなと思わないでもないですが、スパイファミリーをよく読んでみると、実は違うんじゃないかなという発見があったのです。
どうもさめきちです。
今回はスパイファミリーに登場する各組織のモデルなど考察してみたいと思います。
スパイファミリーのモデルとなる国は?
スパイファミリーの舞台、西国(ウェスタリス)と東国(オスタリア)のモデルの第一候補はやはりドイツでしょう。通貨単位がダルク、補助単位がペントであるのも、ドイツマルクとペニヒを参考にしていると思われます。
ただ西国(ウェスタリス)についてはあまりにも情報が少ないため、これを西ドイツと断じるには早計かもしれません。少なくとも、今のところ東国(オスタリア)と西国(ウェスタリス)が隣り合っている国であることは、どこにも語られていないわけですから。
東国、西国といっても、第二次世界大戦後はソ連なんかも東側という言い方をしましたし、アメリカを西側と表現されていました。今後西国の話が出てくるようになれば判明してくるのでしょうが、その辺は今後の楽しみにしていたいと思います。
スパイファミリーの各組織のモデルは?
WISE|西国(ウェスタリス)の諜報機関
WISEは西国(ウェスタリス)の諜報機関であり、ロイドことスパイ黄昏が所属する機関でもあります。東国(オスタリア)に多数の諜報員を潜伏させていて、情報収集から密輸組織の壊滅、そして東西平和の邪魔をする組織の調査や排除まで、幅広い活動を行っています。
ちなみにロイドの現在の任務は、東国(オスタリア)の野党第一党党首であり、各界に大きな影響力を持つドノバン・デズモンドの真意を確認する事です。なにやら不穏な動きを見せているようで、それが西国(ウェスタリス)に対する戦争のための準備であるなら、西国(ウェスタリス)としては早急に対応を考えなければいけません。
WISEのモデルは?
これに関しては諸説ありますが、私はイギリスの諜報機関の1つ、秘密情報部(Secret Intelligence Service、SIS)なのではないかと思っています。
SISは国外の政治経済及びその他秘密情報の収集・情報工作を任務としている機関です。対象となる地域に通じた人材を多数育成保有して情報収集を行い、それとは別の連絡員が、現地と本部をつなぐ役割担っているとされています。
スパイファミリーの舞台が東西ドイツであることから、ドイツの諜報機関かなとも思ったのですが、いろいろ考えてこちらかなと考えました。
さて、ではなぜSISかというと、それはかの有名なスパイ物語、ジェームズ・ボンドを主人公とする007シリーズのモデルとなった組織だからです。
スパイファミリーの作中では、たびたび007をモデルにしたアニメ(スパイ大戦争)が登場していますし、あとから家族として迎えられた犬の名前もそれにちなんでボンドと名付けられています。それだけ007に愛着があるのだとすれば、やはりWISEのモデルとなった諜報機関もそれに準ずるものなのではないかなと思うのです。
またSISは第二次世界大戦中、ドイツの核爆弾開発阻止のために活動したり(結局失敗したそうですが)、対ドイツ諜報活動なども頻繁に行われていたようです。イギリスの諜報機関ということで隣り合った国の機関ではないですが、信憑性は決してなくはないと思っています。
国家保安局|東国(オスタリア)の国家保安局
ヨルの弟ユーリが務めている国家保安局は、東国(オスタリア)の秘密警察組織です。国内のスパイ狩りや西国(ウェスタリス)に情報を売り渡す情報提供者の捕縛などが主な仕事内容となります。任務のためにはかなり過激な行動もとるようで、かなりきつめの取調べの描写も見られました。
ちなみにヨルにはそのことは秘密だそうで、表向きは外務省勤務となっています。
国家保安局のモデルは?
これはもう間違いなく、元ソ連の国家保安委員会(Komitet Gosudarstvennoy Bezopasnosti、KGB)がモデルでしょう。東西冷戦時代にはアメリカの中央情報局CIAに並ぶ力を持っていると言われていた組織です。
その任務は、資本主義諸国の諜報活動、スパイ・破壊工作・テロ活動への対策、反ソ連の民族対策、国境警備、党や政府要人の警護など多岐に渡り、スパイファミリー作中で見られたユーリの活動に似ている部分も多いことが分かります。
ちなみにドイツにも似たような組織はありますが、あえてソ連の諜報組織を選んでいます。その理由は、ヨルの弟ユーリです。
ユーリ・アンドロポフという人物が実在します。1967年から1982年まで長らく国家保安委員会KGBの議長を務めた人物で、その後中央委員会書記長、最高会議幹部会議長を歴任しています。ちなみに中央委員会書記長とは、当時ソ連の最高指導者です。
なんとも大層な人物が出てきましたが、ユーリの名前はおそらくそこからとったのだろうなと思います。となると、そのユーリが所属する組織(国家保安局)も、やはりモデルであるユーリ・アンドロポフの率いる組織、KGBが元になっていると考えられますね。
国家保安局と国家保安委員会。名前もかなり似ていますし。
なお、KGBのユーリ・アンドロポフは国内の反体制派の抑圧に非常に積極的で、また国外においてもさまざまな諜報・工作活動を行なっていたことで知られています。
ガーデン|東国(オスタリア)の暗殺組織
ヨルの所属する暗殺者組織です。主に売国奴(自国を外国に売って利益を得るもの)を消すために暗殺を行なっていて、その組織の全貌は黄昏の所属するWISEにすらも全く知られておりません。またたまに重要人物の警護なども行うようです。
ガーデンに所属する人物は今のところ、管理職である「店長」とヨル、そしてヨルの上司か先輩かに当たる「部長」しか登場していませんが、少なくともヨルも部長も、非常に高い戦闘能力を有しています。
ガーデンのモデルは?
少し悩ましいところですが、私としては、アメリカの犯罪シンジケートの殺人部門、殺人株式会社がモデルかなと思っています。
殺人株式会社(またの名をマーダー・インク:Murder, Inc.)は1930〜40年頃に暗躍した犯罪組織で、主にギャングやマフィア幹部の暗殺を請け負っていたそうです。
「仕事はあくまでビジネスと割り切る」「決して民間人を巻き込まない」など、徹底的に暗殺をビジネス化しており、暗殺が決まると関与者全員のアリバイと死体運搬用の車を用意する、当局に捕まった時のために弁護士を常備する、投獄されたらその家族の面倒を見る、など、かなり組織としてしっかりとしていたようですね。
さて、ではなぜその殺人株式会社がガーデンのモデルになったと考えるか。理由は2つあって、1つは、暗殺者たちが好んで使った武器がアイスピックだったという点です。ヨルも暗殺を行う際に、アイスピックのような武器を手にしています。
もう1つの理由は仕事の依頼が電話だったという点です。この殺人株式会社、本部が24時間営業のお菓子屋さんに置かれていたようで、電話にて殺人を請け負っていたそうです。
ヨルも暗殺の仕事を電話で請けている描写が見られました。
なんとなく似ていると思いませんか?
7巻の最後の方で、ヨルが殺された裏社会のボスの家族を護衛する任務も与えられていましたが、そんな裏社会とのつがなりも、殺人株式会社に似ていると感じた要因の1つです。
ただガーデンの店長の思想は、なんというか、排他的なナチスドイツなどを思い浮かべてしまいますね。
「水を与え、剪定をし、丹念に手入れをしてやれば、世界はこんなにも美しいままでいられる」
余計な思想を排除する事が世界をきれいにする方法である、と読み取れます。そう考えるとナチスドイツの暗殺部隊ヴェアヴォルフを推してもいいかなと思わないでもないですが。
どちらにせよ今の段階ではここまでしか言えませんね。新事実だったり、店長の思惑だったり、後々どんな秘密が明かされるのか、楽しみにしていたいと思います。
スパイファミリーで登場する各組織のモデルについて|WISE、国家保安局、ガーデンのまとめ
私の個人的な考察ですが以下まとめてみました。
ロイドの所属するWISE→イギリスの秘密情報部(Secret Intelligence Service、SIS)。
ユーリの所属する国家保安局→ソ連の国家保安委員会(Komitet Gosudarstvennoy Bezopasnosti、KGB)。
ヨルの所属するガーデン→アメリカの犯罪シンジケートの殺人部門、殺人株式会社(Murder, Inc.)
この3つの組織が今後どのように絡んでくるのか、非常に楽しみです。私としては3つの組織が共闘して何かに立ち向かうような展開が胸熱だと思うのですが‥‥はてさて。
ともかくそろそろ8巻も発売になりますし、楽しみにしていたいと思います。
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