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タコピーの原罪

タコピーの原罪ラストのネタバレ考察|果たして何が原罪なのか?

この記事は約8分で読めます。

WEBコミック配信サイト『ジャンプ+』で連載されていたタコピーの原罪が完結しました。

学校内でのいじめ問題家庭環境の問題などがことさら強調され描かれていて(むしろリアルなのか…?)、サイコパスな主人公や地球の倫理観を知らない頭ハッピー宇宙人などの強烈なキャラクターも相まって、一気にワーッと盛り上がりました。

そんなタコピーの原罪、そのタイトルの意味って何なんでしょうね。今回はそのあたりについて考察してみたいと思います。

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タコピーの原罪のラスト

タコピーの原罪について考察する前に、タコピーの原罪のラストについて少しだけ語っていきます。当然ネタバレありです。

家庭の問題は一切解決していない

タコピーの原罪2巻

タコピーの原罪、ラストを見てみると、しずかちゃんもまりなちゃんも、その家庭環境はほとんど変わっていません。ただそれでも、2人には小学生の時とは違う、明確な変化があるんですよね。

しずかちゃんの変化

しずかちゃんは爪が長くピカピカになっています。小学校の頃はボロボロの服を着て、自分の見た目がどう悪いのかも分からない、誰も教えてくれないと語っていたしずかちゃん。今は身なりに気を使ったり、おしゃれしたりすることをちゃんと知っています。

きっと、隣にいるまりなちゃんに教えてもらったんじゃないかな。制服もほどよく着崩していますし。まりなちゃんと仲良くなっていない世界線、タコピーが初めてまりなちゃんに出会ったときに現れたしずかちゃんは、襟元をしっかりと占めていて、制服をびしっと着ていましたからね。

まりなちゃんの変化

まりなちゃんは、依然と比べて母親に依存しなくなっているのが分かります。しずかちゃんとの会話の中で、「うち今日ママやばそーだから…」と話していますし、しずかちゃんに「まりなちゃんのママいっつもやばいじゃん」と言われても、「誰のせいだと思ってんだよ」と軽口で返せるようにすらなっています。

これ、かつてのまりなちゃんでは考えられなかったことですよね。

タコピーの原罪1巻

いじめているときのまりなちゃんの言葉です。パパがママから離れていって、自分がどれだけ苦労しているか、ではないのです。ママが変わってしまったとかでもないのです。完全に自分の感情とママの感情を混同させてしまっているのです。

ラストでは、まりなちゃんの爪はきれいに切りそろえられていました。もしかしたらそれは家事をするためで、すでに家のことはほとんど自分でやっていて、ママからは精神的にも物理的にも、ちゃんと独立できているということなのでしょうね。

タコピーの原罪とは何なのか

ではタイトル考察、タコピーの原罪の「原罪」とは何なのか、考えてみたいと思います。

殺人

タコピーの原罪1巻

タコピーの犯した最も大きな罪と言えば、やはりまりなちゃんを殺してしまったことでしょう。しかも実は、本当はタコピーはまりなちゃんのために小4のころまでタイムスリップしてきたのです。本来守るべき、助けるべき人を殺してしまったこと。タコピーにとってこれほどショッキングなことはないでしょうね。

第4話、タコピーが殺したまりなちゃんを放置したまま背中を向け、タコピーとしずかちゃんが手をつなでその場を去るイラスト。そこにどーんと大きくタコピーの原罪というタイトルが入っていたくらいですので、まあこれがタコピーの原罪であると考えて差し支えないでしょう。

ただせっかくなので、もう少し深読み(裏読み?)していきたいと思います。

「おはなしすること」をしなかったこと

タコピーの原罪2巻

母親を殺してしまったまりなちゃんが、なんかもうすがるようにタコピーに話しかけているのにも関わらず、タコピーはあっさりとそれを無視して、小4のしずかちゃんを殺しに行ってしまいます。けれども、まりなちゃんがその時本当に求めていたのは、そんなことではないんですよね。

まりなちゃんとしずかちゃんが小4だったころに戻るために、タコピーはハッピー星に戻ります。そこでタコピーは、ママに「最も大切な掟を破った」と言われてしまいます。

またタコピーは最後の最後で、こう言います。

「おはなしがハッピーをうむんだっピ」そうそうそれが、いちばん大切なこと。

以上から、ハッピー星のいちばん大切な掟は、「おはなしすること」だと推察されます。

つまり、タコピーが犯した罪というのは、まりなちゃんと「おはなしすること」をしなかったことと考えられるのです。

そういえばしずかちゃんサイドでも、チャッピーが保健所に連れていかれて、ひどく落ち込んでいるしずかちゃんに対して、タコピーは一切しずかちゃんの話を聞かないで、無理やり学校に行かせようとしていましたね。

原罪とは?

しかし、それでもまだ原罪というには足りないような気がします。そもそも原罪とは何なのでしょうか。goo辞書では次のように書かれていました。

キリスト教で、人類が最初に犯した罪。アダムとイブが禁断の木の実を口にし、神の命令に背いた罪。アダムの子孫である人類はこの罪を負うとされる。宿罪。

goo辞書<https://dictionary.goo.ne.jp/word/%E5%8E%9F%E7%BD%AA/>

…ちょっとタコピーの原罪には当てはまらないような気がしますね。もう少し他も調べてみましょう。

旧約聖書『創世記』において、蛇(サタン)の誘惑により、禁じられていた「知恵の木の実」をとって食べるという人祖アダムの罪に由来する。

原罪の本質とは、神に等しき善悪の知識を得る「知恵の木の実」を口にした事で、何が善か悪かを自分で決めるという「自らを神」とする事、すなわち『神への反逆』である。

ピクシブ百科事典<https://dic.pixiv.net/a/%E5%8E%9F%E7%BD%AA>

ピクシブ百科事典からの引用です。ここで面白いことが分かってきます。アダムは知恵の実を口にしたことで、何が善か悪かを自分で決めることができるようになった、とのことなんですね。

そう考えると、ちょっとタコピーの原罪に当てはまってくるのではないでしょうか。

タコピーの原罪2巻

タコピーは、母親を殺してしまったまりなちゃんの言葉を受けて、しずかちゃんを諸悪の根源と断じ、即座に殺しに行くことを決めました(そして実際に、まりなちゃんとしずかちゃんが小4のころまでタイムスリップしたわけです)。

またいじめられているしずかちゃんを守るために、タコピーはまりなちゃんを殺しました。

この善悪をタコピーが自分で決めてしまっていること、それがすなわち、原罪と言えるのではないでしょうか。いえ、もっと言うと、悪を排除しようとする、感情というか、動機が芽生えたことが原罪ともいえるかもしれません。

知ることが原罪

さらにもうひと段階深堀り。

もしかしたら、ここでいう原罪とは、ものごとの善悪もすべてまるっと含めて、それを知ってしまったことを指しているのかもしれません。

というのも。

タコピーの原罪1巻

まりなちゃんに出会った当初、そしてしずかちゃんに出会った当初、タコピーは無垢の存在でした。すべての人が優しさにあふれている世界に生きているような、悪意や害意など無縁のような性格をしていました。それはまるで、楽園にて、知恵の実も食べずに物事の善悪など知らないで生きている、アダムのような存在です。

けれどもタコピーは地球に来て、数えきれないほどの絶望殺意に触れ、物事を善と悪に分けて考えるようになってしまいます。そして善悪を分けて考えるようになってしまうと、どちらかが消えるまで決着がつかなくなってしまうのです。

結果、まりなちゃんサイドではしずかちゃんを殺しに行くことを決意しますし、しずかちゃんサイドでは実際にまりなちゃんを殺しています。

ただし、悪意や害意、絶望や殺意に触れることがダメということではありませんよね。「おはなしをすること」というのは、相手に共感し、相手を理解しようとすることがとても大事なはずです。

また善悪を分けて考えることがダメということでもありません。少なくとも当時しずかちゃんにとってまりなちゃんは悪で、まりなちゃんにとってしずかちゃんは悪、それはゆるぎない事実なのですから。

つまり何が言いたいかというと、人は知恵の実を食べて善悪を自分で判断できるようになったとのことですが、果たしてそれは悪いことなのだろうか、ということです。

原罪を背負うことで、はじめて「おはなしすること」ができるようになったタコピー

タコピーの原罪2巻

悪意や害意に恐怖して、絶望を味わい、殺意を抱き、タコピーはどんどんハッピーではなくなっていきます。登場時の能天気な感じはなりを潜め、どんどん深みにはまっていくように見られます。

ただそれでもタコピーは、自分に何ができるのかを必死に考えるようになります

「これでいいんだっピよね?」

まりなちゃんを殺してしまってから、タコピーは必死にそう語りかけます。

「ごめんなさい、まりなちゃんのパパとママ」

まりなちゃんに扮するタコピーは、まりなちゃんのママが泣くのを見て、自分のしたことの重さに初めて気づきます。

「考えなきゃ、ぼくは何をしちゃったのか。どうすればよかったのか。これからどうすればいいのか」

これまでずっと、考えもしなかったことを、タコピーは真剣に考えるのです。

タコピーの原罪1巻

答えはないのかもしれません。考えても考えても、立派な解決策なんて出てくるはずもありません。解決策が出てくるようであれば、そもそも地球はこんなに悪意に満ち溢れてなんかいないですよね。

けれどもきっと「おはなしをすること」で、もしかしたらどこかに妥協点が見つかるかもしれません。また「おはなしをすること」でお互いの共通点が見つかれば、そこからほんの少しだけ、歩み寄ることができるかもしれません。そしてそれは、互いの(ここではしずかちゃんとまりなちゃんの)善悪を知り、悪意と害意にさらされて、絶望と殺意を味わってでしか、…つまり原罪を背負ってでしか、得ることができない絆なのだと思うのです。


タコピーの原罪 上 (ジャンプコミックスDIGITAL)
タコピーの原罪 下 (ジャンプコミックスDIGITAL)

まとめ

タコピーの原罪、たった2巻ですが、この世の不条理やどうしようもないやるせなさがいっぱい詰まっています。

そして悪意にさらされて、ハッピー星から来たタコピーはどんどんハッピーではなくなっていきました。それでも、それを知ることで共感と理解を得ることができ、タコピーはしずかちゃんとちゃんと「おはなしすること」ができるようになっていきました。

これをハッピーエンドと言っていいのかどうか悩むところではありますが、それでも読んで思わずほっと胸をなでおろすことができた、そんな作品でした。とても良かった!

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