薬屋のひとりごと~猫猫謎解き手帳15巻ではとうとう猫猫(マオマオ)が誘拐される事件が発生。しかもその実行犯は、以前死んだふりをして後宮を抜け出した翠苓という女です。14巻では「気が利く美人の宦官」として登場していましたが、やはりと言うべきか、その宦官は翠苓だったというわけです。
おお、前回考察していたのが当たっていました。前回の記事はコチラ↓。
ということで今回はそんな薬屋のひとりごと15巻のあらすじネタバレや感想を述べていきたいと思います。
薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳~(1) (サンデーGXコミックス)
薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳15巻あらすじネタバレ
11月に発売した薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳15巻のあらすじをネタバレ紹介していきます。
猫猫と氷菓子
湯殿でのマッサージの帰り、うっかり、運ばれていた氷を落して壊してしまった小蘭(シャオラン)。その氷は本来これから楼蘭(ロウラン)妃のもとへ運ばれるはずのものでした。
妃のものを壊してしまいタダで済むはずもない小蘭ですが、その場に居合わせた猫猫が機転を利かせます。壊れてしまった氷を持って調理場へ向かい、勢いよくその氷を砕き始めました。
大きめの鉢に砕いた氷に大量の塩を入れて、牛乳の入った小さな鉢をその上に乗せ、牛乳をかき混ぜます。すると牛乳がどんどん固まっていきました。
砕いた氷を活用して作ったのはアイスでした。割ってしまった氷の代わりに、楼蘭妃にアイスを献上しようというのです。
果たしてそれで許してもらえるのか……とも思いましたが、猫猫曰く事前に壬氏(ジンシ)から好みを聞いているから問題ないと思う…とのことで。さすが抜け目ない。
おかげで小蘭は罰を免れて、味見にやって来た子翠とともに友情を深めたのでした。
猫猫の養父羅門
猫猫が仕える玉葉妃のお腹の子どもがどうやら逆子らしいと分かります。逆子だった場合出産は非常に困難となり、下手すると子どもや母体である玉葉妃の命すら危ぶまれます。なのに肝心の出産時に手伝ってくれる助産師は専任専属ではないらしく、その出産のリスクはさらに大きいと言えるでしょう。
さらに言えば、後宮の医官はそこまで腕が良いわけでもなく、だからと言って外から医官を呼ぶにあたっては宦官でなければいけないため、いざと言う時に玉葉妃を助ける術が非常に限られてしまうのです。
しかし猫猫の知っている中で1人だけ、後宮に迎えられる医官として非常に適任な人間がいました。医術に関しては国一番であり、人間的にも猫猫が非常に信頼していて、しかも宦官であり、何よりかつて医官として後宮に勤めていたことのある人物です。
“おやじ”こと猫猫の養父、羅門(ルォメン)です。
羅門と後宮
玉葉の英断と壬氏の速やかな手配によって、羅門はすぐに後宮の門をくぐることとなりました。しばらくの間、臨時雇いの医官として医局に勤務することになったのです。事情はどうあれ肉刑を受けて追放された羅門が戻るには、臨時雇いが妥当だったということでしょう。
そして医局勤務ということですので、羅門は入局してから玉葉妃だけではなく、ほかの妃も診ることとなります。これは玉葉妃のほかに梨花(リファ)妃もまた身籠っているが故の、壬氏の配慮なのだろうと猫猫は検討をつけていました。
確かに、腕が良く信頼できる医官なのであれば、梨花妃も一緒に診てもらった方が間違いはないでしょう。ここまで羅門が信頼されるのは、きっと「玉葉妃や壬氏が信頼している猫猫が懐いているから」という理由なのでしょうね。
また羅門は空いている時間を使って、今の後宮で気になる点を紙に書きだしていました。
鉛入りのおしろいは使わない、強い香料は控える、後宮内の植物を勝手に採らない……。
そしてそれを、最近できた手習い所で女官に書き写させ、書き取り練習の手本にするようにと猫猫に手渡したのです。生徒の手を借りて張り紙を量産しようというのですね。
どうやら羅門は以前後宮にいた時にも、同じような張り紙をたくさん作り、後宮のあちらこちらに貼っていたようでした。と言っても当時は女官の手習い所などありませんから、羅門が仲間とともに2人で張り紙を量産していたとのことですが。
ですがそれを聞いて、猫猫は若干の引っ掛かりを覚えます。以前にそういうことをしていたのであれば、なぜ今その張り紙はないのか。
そして後宮にとって、しいては妊婦にとって害になるものを公開し注意を促すということは、逆に言えば妊婦に害を成したい人間がそれを簡単に知ってしまうということでもあるのです。
正体を表した翠苓
後宮の人員はほとんどが2年で入れ替わります。妃すらも先帝の崩御で入れ替わっています。となれば、かつて後宮に勤めていた羅門が書いた張り紙を今の後宮でも覚えているものなどほとんどいないことになります。
そのような中、後宮のとある一ヵ所において、かつての後宮を知る者がいました。ずっと長らく後宮に勤めている女官が集まっている部署、今の皇太后が作ったとされる診療所と呼ばれる場所です。
一度気になってしまっては、確かめずにはいられないのが猫猫の性格です。実際に診療所の女官と会いに行き、取り止めのない会話を交わす中で、猫猫は確信を深めていきます。
後宮への悪意の根源がそこにあったということを。
そこへ、聞いた覚えのある声がかけられました。
「そいつには、気をつけた方がいい。そいつはお前が何をしたか、さっきの会話で察しているぞ」
そこにいたのは、つい最近新しく雇い入れられた美人の宦官でした。そして猫猫は、その顔には覚えがあります。かつて後宮内で、策略を張り巡らせ壬氏を殺そうとした女、翠苓です。
翠苓は宦官として、再度後宮に潜り込んでいたのです。
猫猫誘拐
診療所に現れた翠苓は猫猫に、ともに後宮を出るように命令します。要は面と向かって「誘拐されろ」と言われたようなものです。当然猫猫はそれを断ろうとしますが、そもそも猫猫に選択権はありませんでした。
翠苓が既に、猫猫と仲の良い下女の子翠(シスイ)を人質に取っていたからです。翠苓は子翠の首筋に毒針を当てて、「助けたければ従え」と命令したのです。
また人質の他にも、猫猫には断れない理由がありました。正確には、断れないというよりは断りきれないと言った方が良いかもしれません。
翠苓は猫猫に「蘇りの秘薬の作り方を知りたくはないか?」と語りかけてきたのです。
蘇りの秘薬といえば、単行本6巻あたりで、壬氏を事故に見せかけて殺害しようとした翠苓が後宮から抜け出す際に使用した秘薬です。一度死んだように見せかけ、時間が経ってから蘇るというもので、仮死状態になる薬と言い換えても良いかもしれません。
そして猫猫は、その秘薬に対して異常な好奇心を抱いていました。毎度珍しい薬の材料やら秘薬といった類には目の色を変える猫猫ですが、その性格をうまく利用されたと言わざるを得ません。
当然秘薬のことだけ持ち出されたとしても、猫猫は大人しくついて行くことはなかったでしょう。さすがに猫猫もそこまでおバカではないはずです。しかし人質が取られているのであれば、猫猫が翠苓について行くことは仕方のないことです。「仕方のないこと」と自分に言い訳して、嬉々としてついて行く道を選ぶのではないでしょうか。
果たして、翠苓による猫猫の誘拐は完成してしまったのです。
猫猫誘拐の目的を考察
単行本6巻で退場するまで、翠苓の行動は、皇弟である壬氏を殺害することでした。また診療所の女官たちは、皇帝の子どもを産まれないようにすること、もしくは産まれたとしても生き永らえないようにすることでした。
しかしここに来て翠苓の行動はよく分かりません。なぜ猫猫を誘拐することとなったのでしょうか?
子翠と翠苓はともに皇帝に害なす工作員?
翠苓が猫猫を誘拐した理由を考える上で、1つ整理しなければいけないことがあります。それは子翠と翠苓の関係です。
翠苓が子翠を人質に取った際の子翠の言葉が気になります。
翠苓が子翠に毒針を突きつけていた際に子翠が発した言葉は「‥‥ごめん、猫猫」でした。いきなり人質に取られたのであれば、ここで言うべきは「どういうこと?」が正しいのではないでしょうか。
また名前に同じ「翠」がついていることも気になりますし、子翠が登場したのが、翠苓が後宮を去った後であるということも注目すべき点です。15巻では、子翠が字の読み書きができること、貴重な紙の帳面を使っていることなどを猫猫が怪しむ描写がありました。
このことから考えるに、子翠と翠苓は本家を同じくする出身なのではないか、ということです。翠苓が後宮を出ることになったので、代わりに下女として後宮に入ったのが子翠、というわけです。つまり子翠も、皇帝一族に害なす工作員ということになります。
ここでもう1つ考慮すべきは子翠の登場時期です。初登場は8巻で、玉葉妃の娘である鈴麗(リンリー)に子猫をあげた場面です。そしてこの時期は、ちょうど隊商(キャラバン)がやって来て、後宮内で市を開く直前の時期でもありました。
そしてその後、多くの女官が隊商から購入した大量の「妊婦に害のある香油」が後宮に蔓延しました。また隊商から仕入れた香油から堕胎剤を作ろうと画策した侍女も現れました。
タイミング的に、子翠がなんらかの働きかけを行っていたと考えるのも、決しておかしくはないでしょう。
なぜ猫猫が誘拐されるのか?
ではなぜ猫猫を誘拐することとなったのでしょうか。1つ言えることは、診療所の企みや翠苓のことがバレそうになったことで、急遽猫猫を誘拐した、ということでしょう。恐らく診療所に向かう猫猫を翠苓が見つけて、聞き耳を立てていたところ猫猫が核心に踏み込みそうだったため、急遽子翠を連れてきたのではないでしょうか。
ただし、その手口がちょっと鮮やかすぎるように感じます。そもそも、誘拐と言ってもそう簡単に後宮を抜けられるはずがありません。それなのに、その点を猫猫が指摘した際に、翠苓はあっさりと「できる」と答えたのです。はじめから誰かを誘拐して後宮の外に連れ出す準備をしていなければ出てこない言葉ではないでしょうか。
そして誘拐するにあたり、翠苓がすぐに「蘇りの秘薬」の話を持ち出すあたり、もともと猫猫を誘拐する計画を立てていた可能性すらあると思います。
ではなぜ猫猫を誘拐する必要があるのか。
これはやはり皇弟である壬氏へ何かしらの要求を通そうとするか、最悪壬氏をおびき出し亡き者にする計画であることが考えられるでしょう。壬氏が皇弟であることを知っている人間はさほど多くはないでしょうが、それでも中枢にいる人間ならば、知っていてもおかしくはありません。
そして後宮をよく観察している人物ならば、猫猫が壬氏の大のお気に入りであることを、気づかないわけがありません。一度緑青館(猫猫が育った高級娼館)に戻った猫猫を大金はたいて買い戻して自分の部下にしていましたし、後宮でも一緒にいることが決して少なくはありませんから。また皇弟として子北州へ狩りをしに行った際にも、猫猫は帯同していました。そのため、猫猫を使って皇弟である壬氏を追い詰めるという作戦も、あながち間違ってはいないように感じます。
首謀者は誰か
今のところ、一連の事件の首謀者として一番有力なのは、先帝時代に先の皇太后から大変気に入られていたという、子昌という男でしょう。自身の娘楼蘭を上級妃の1人として後宮へ入れ、自身も高官として宮中の権力を集めています。
もし仮にですが、楼蘭妃に皇子が産まれ、逆に玉葉妃にも梨花妃にも皇子が産まれず、また産まれても死んでしまった場合、子昌の権力はより絶対的なものとなるでしょう。またその場合、皇位継承権を持つ皇帝の弟である壬氏は、子昌にとっては邪魔以外の何者でもありません。子昌にとって、皇位継承権を持つ者は、楼蘭妃の子ども一人でいいわけですから。
今のところ、子昌と翠苓、子翠がつながっているという伏線は一切ないように見えます。せいぜい同じ「子」という漢字が名前の頭についているということくらいでしょうか。
ただ以前翠苓が蘇りの秘薬を用いて後宮を脱出した際にもだいぶ組織だったフォローがあったように、今回猫猫を連れて後宮を抜け出す作戦も、同じく組織のフォローがあるはずです。それだけの人員を動かせる者と考えると、強い権力を持ちあちらこちらに手勢や間諜を忍ばせておくことができるはずの子昌は、首謀者第一候補としてなんらおかしいことはないと断言できるのではないでしょうか。
まとめ
薬屋のひとりごと~猫猫の後宮謎解き手帳15巻のあらすじと感想、少しの考察を述べてきました。考察に関してはどれも不確かな情報ばかりなので、確実にどうとは言えませんが。ただ前々巻あたりから壬氏のとんでもない秘密が明かされてきたり、また猫猫がそれを知る機会も少しずつ増えてきています。
そう、確実に物語は進んでいるのです。
で、ここに来て猫猫の誘拐。これはもう、話が大きな展開を迎えるターニングポイントであると言えるのではないでしょうか。ぜひとも次巻も楽しみに待っていたいと思います。
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