物語の最序盤から相当な苦境に立たされている主人公のアイリーン。けれどもそんな状況でもなかなか前向きに、しかも割とその苦境を楽しんですらいる描写が見られます。逆境に強いというか、まあ少なくともほかの王子様に助けられるのを待っているような女性でないことだけは確かです。
ただし、だからと言って男勝りだとか、そういうのとはちょっと違うんですよね。むしろものすごく女性的と言うか、うっかりすると本物の悪役令嬢だろって言われかねない、そんなドロドロなところがあるように感じます。
せっかくなので今回は、悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみましたのアイリーンについて、どの辺が本物の悪役令嬢なのかということについて語っていきたいと思います。
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クロードに求婚した本当の理由
魔王クロードに求婚した理由は、自分が死なないためです。魔王クロードが本当の魔王の姿に覚醒してしまっては、アイリーンには死ぬルートしかありません。アイリーンが死なないためには、自分が結婚して愛を教えるほかないのです。
ただどうも…それだけではないようにも感じます。
では何かというと、早い話が、セドリックに対する当てつけです。
アイリーンは割りと幼いころからセドリックと知り合いで、小さいころから結構一緒に遊んでいたようです。そしてそんなさなか、セドリックが異母兄であるクロードに対して並々ならぬ劣等感を抱いていることを知っていました。
婚約破棄されて、惨めに降られたなんて思われたくない、むしろ自分が愛想を尽かせたんだと周囲にわからせたい、そんな思いがアイリーンにはあったようです。そしてそれを周囲に、何よりセドリックに思い知らさせるには、セドリックが勝てないと思うような男に気に入られ、エスコートされることが一番手っ取り早いと言っていいでしょう。
となれば、クロードはセドリックに対する当てつけとしては最強の切り札と言っても過言ではありませんよね。お前よりもいい男に乗り換えたんだぞ、と言って兄を紹介される弟、と考えると、どれだけセドリックにダメージを与えられることか。想像だに難くありません。
たぶん無意識だとは思いますが、そういう選択をしてしまうこと自体、なかなかの悪女だと言わざるを得ないでしょう。
クロードに対してセドリックの名前を出しすぎる
反対に、クロードもまたセドリックに対して劣等感に近い感情をいただいていたことでしょう。もともと第一皇位後継者だったのが、異母弟であるセドリックに取られている状況だったのです。自分は人里離れた廃城に軟禁状態で、セドリックの目の前には煌びやかな国王と言う未来が待っている。自ら選んだ道ではありますが、正直なところ選ばざるを得なかったのですから。
そしてそんなセドリックの元婚約者が自分に求婚してきて、自分もそんな女性を好ましいと思っているのに、なおセドリックの話をしているのです。
セドリックに信頼されなかったとか、いつも自分からばっかりセドリックに会いに行っていたとか…。そんなことを言われたら、クロードからしたら「自分はそんなことはしない」と言うほかないではないですか。
劣等感を持っている相手の名前を出して、好きな人を揺さぶるなど、なかなかのやり手なのです。
化粧品の売り方がえげつない
開発した化粧品をどうやって貴族の間に広めるかという問題に対して、アイリーンはなかなかえげつない方法で話題作りをします。それは、一部の人にだけこっそり試供品を配る、というものです。配られた方は優越感に浸ることができて、配られなかった方は劣等感に苛まれる。そんな女性の感情をうまく利用して購買意欲を爆上げすることに成功したわけです。
もちろん、手段を選んでいる余裕がなかったというのも間違いはないでしょう。少なくとも父ルドルフからは、二カ月以内に損失を補填しろと言われていたのですから(もちろんそれだけの損失を一気に返済することは事実上不可能でしょう。だからこそ、誰も知らない幻の化粧品会社への伝手をドートリシュ家にすることで、父を納得させたというのが正解かと思われます)
手段を選んではいられなかったというのは分かります。ただそのために、貴族のご婦人たちの人間関係をめちゃくちゃにすることも厭わないという点が、アイリーンが悪役令嬢として十分な資質を持っている証拠ともいえるのです。
でもアイリーンはかわいい
とは言いつつも、やはりアイリーンはかわいいです。基本恋愛に関してはうぶで、クロードの一挙手一投足にドキドキさせられっぱなしですし、難しい顔をしていると思いきや不意に見せる天真爛漫な笑顔など、なかなか良いものだと思います。
クロードのふとした甘い言葉に顔が爆発してしまうアイリーン。こういうシーン、割と多いです。というか気丈にふるまっているのに、何かの拍子でこんな表情するところがまたかわいいのです。
いきなり結婚しようと迫ってくるわけのわからない女が、急にこんな表情をするわけです。いかにも女性に免疫のなさそうな(なにせずっと引きこもりですから)魔王が惚れてしまうのも無理はないかと。
まるで自分の心を見透かすように、認めてほしいこと、言ってほしい言葉をさらっと口にするものですから、心の扉が一瞬フルオープンしても仕方がないかと思われます。
まとめ
悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみましたについて、主人公のアイリーンがいかに悪女なのかを考えてみました。
正直なところ漫画版は3巻までしか出ておらず、小説はこの後もずっと続いています。そしてそこで語られるアイリーンが、今よりももっといろんな破天荒なことをしていたり、もっとかわいい姿をしていることがあるかもしれません。
だから、これはあくまでも漫画版3巻分からの感想、といったところです。もし小説版が読みたいようであれば、ぜひとも以下ご覧ください。
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