めちゃくちゃ陰キャな中学時代を過ごしてきた青野一(あおのはじめ)が、高校受験前にヴァイオリンと向き合うことで自分を見つめなおし、高校時代のオーケストラ部を通じて成長していく物語、青のオーケストラ。
今回はそんな青のオーケストラのざっくりとしたあらすじと、各キャラクターについて書いていきます。
青のオーケストラあらすじ
中学校時代、陰キャの名を欲しいがままにしていた青野一。ある日、体育の授業で、バスケットボールを顔面キャッチしていしまい、保健室に運ばれてしまいます。そこで青野は、秋音律子(あきねりつこ)がヴァイオリンを弾く姿を見つけるのです。
青野は超有名ヴァイオリニストの子どもで、これまで数々の全国コンクールを総なめするほどの実力者でした。家に帰るとトロフィーやら賞状やらがゴロゴロ出てくるほどです。けれども、その超有名ヴァイオリニストの父親が不倫して出て行ったものですから、それ以降ヴァイオリンからは遠ざかっていたんですよね。
けれども秋音と出会ったことで、改めてヴァイオリンを向き合っていくことになります。
具体的には、
→高校でオーケストラ部(通称オケ部)に入りたいという秋音にヴァイオリンを教える
→自分も弾いてみたら思いのほかヴァイオリンが好きだったことに気づく
→結局秋音と一緒の高校を受験して、オケ部に入り、ヴァイオリンを弾くことになる
という感じです。
完成度の高いプロローグ
結局この高校に入学するまでがプロローグになるかと思うのですが、正直この高校入学までで物語完結させてもよいくらいに、すごく完成度が高いなと思いました。もちろん、その後の展開に向けて伏線も張りまくっているので、そこで終わりっていうのはあり得ない話ですけど。
ただ正直その1巻前半部分だけでも、読む価値はあるんじゃないかなと思います。
青のオーケストラ 1巻高校入学後
青野は高校のオケ部に入部するのですが、かつて全国コンクールを総なめした実力をいかんなく発揮していきます。もうみんなが「青野すごい!」てな感じです。そこそこ女の子にもモテますし…。中学時代の陰キャどこ行った?てな具合です。
この辺、異世界転生して無双する系の物語にちょっと通じるものがありますよね。まあ青野の場合、幼いころからの積み重ねがモノを言っているというのはありますけれど。
ただ、すごい実力を持っているとはいっても、やはり足りない部分はあるわけです。
もともと、数々のコンクールで入賞していたのは、すべてソロでの演奏によるものでした。逆に言うと、コンサートでの演奏経験は皆無だったのです。そして青野に足りない部分というのは、まさにその「みんなで演奏すること」の部分だったのです。
しかもヴァイオリンの実力者に求められるのは、コンサートをリードする役割、コンサートマスター(略してコンマス)です。全体を見て、全体をうまく動かしていかなければいけません。
この物語は、ヴァイオリニストとしても、1人の人間としても、まだまだ独りよがりな青野少年が、いろんな人たちと関わっていくことで視野が広がっていき、そしてコンマスとして成長していく物語なのです。
マンガ無料立ち読み青のオーケストラキャラクターについて感想
青のオーケストラには、結構個性的で深みのあるキャラクターがたくさん登場します。ここでは、そんな登場人物の一部を紹介していきます。
青野一(あおのはじめ)
主人公です。高校のオケ部に入ってから、本当にコロコロと心境が変わっていく面白い人物です。
入学当初、オケ部に入りたての頃は、ブランクを感じつつも、幼少期に積み上げてきたものがあるというプライドとの間で揺れ動く感じが印象的でした。自分はまだまだだと言いながら、先生に名前すら覚えてもらっていなかったことに非常に悔しがったりしていました(本当は、先生も青野の名前覚えてたんですが、ハッパをかけるためにあえて「お前誰?」的なことを言ったんですけどね)。
ただ選抜試験を前にして、ちょっとしたきっかけで自信がついて、すっごい技術の高い演奏をしてみたり。
先輩のアドバイスを聞いて(こういう先輩のアドバイスとか、本当に素直にしっかりと聞くんですよねえ)、オーケストラに対する姿勢が変わっていってさらに成長したりもしていました。
けれどもそのあとに、ライバルである佐伯の演奏を聴いて卑屈になってみたり、そんな感情の後押しなのか、佐伯にひどいことを言ってしまうこともあります。結局仲直りしましたけど。良かったネ。
なんというか、そういうどんどん新しいことを吸収していって、超特急で進化していく、まるで特急列車のような成長を見せてくれる主人公です。
あと、ウジウジと考え込んでしまうところもなくはないですが、かといってずーっとそのまま引きずったりしないで、解決のために自分で動こうとするところも好印象です。ウジウジしてしまうのも、まあ彼の背景的に仕方ないって思う部分もありますしね。
とにかく、青野本人が「成長しよう、成長しよう」と常に前向きで、そのためにいろんな人からたくさんのものを吸収している、そうやって先輩や同級生たちと結びつきが強くなっていく。そんな主人公なのです。
とっても好感が持てますね。
父親の存在
基本的に、青野は父親のことが嫌いです。勝手に不倫して、散々迷惑をかけた挙句、自分と母親を捨てて出て行った父親に対していい感情を持っているはずがありません。しかも、その不倫が公になって騒がれ出したのが、ちょうど中学生になるかどうかくらいのころだったはずですから、まあ当時青野は複雑なお年頃なわけで、嫌悪感MAXになってしまうのも分からなくもありません。
父親が青野のヴァイオリン並々ならぬ情熱をかけていた分、その父親が出て行ってから、青野は数年、ヴァイオリンから遠ざかっていました。どうやったって父親を思い出してしまうヴァイオリンを、手にしたいとすら思わなかったみたいですね。
そのため、オケ部に入ってヴァイオリンを手にしてからというもの、青野はたびたび父親を思い出し、苦悩します。なんというか、ヴァイオリンの教え手としては尊敬できるものの、父親としては軽蔑すらしている、という感じですかね。
たくさんの人たちと関わっていき、また多くのコンサートを経験していく中で、青野は少しずつ自分の中で折り合いをつけていっているようですが……きっと最終的には、自分の父親とどう向き合うのか、というのが青野の1番の課題、テーマになってくるのかな、と思います。
佐伯直(さえきなお)
青野のライバル的存在です。ちょうど青野がヴァイオリンをやめたころに日本に来て(もともとはドイツ出身)、青野のいない各種コンクールを総なめしていたという、青野の後釜みたいな感じの存在です。
しかも、実は青野の父親の不倫相手が佐伯の母親です。つまり青野とは異母兄弟ということになります。見た目は全然似てないけど。
佐伯は、一見ぼーっとした、天然風な感じで描かれていますが、その実とっても好戦的で、特に青野に対してはライバル心むき出しです。
はじめのころは、青野に対して自分が異母兄弟であることを打ち明けたいのに打ち明けられずにいて、ちょっと遠慮がちなところもありましたけど、打ち明けて、それなりにケンカもして、それ以後はだいぶ遠慮がなくなってきたように思えます。
それにしても、自分が青野の異母兄弟だなんて打ち明けるの、すごい勇気が必要だっただろうな、と思います。打ち明ける前から、父親の不倫がトラウマだって、青野すごい形相で言ってましたからね。
ここ、青野に言うべきかどうか、結構悩むところですよね。正直な話、言わないってのも1つの手だったはずです。打ち明けなかった場合、佐伯自身はずっとモヤモヤした状態なままになっていたとは思いますが、青野との関係はずっと良好でいられたでしょう。
逆に打ち明けた場合、青野とは関係がこじれたまま、修復できない可能性もありました(結果的にはこじれませんでしたが)。青野との関係がこじれると、最悪佐伯か青野がオケ部をやめるという選択肢すら出てきたかもしれません。まあ佐伯の性格上オケ部やめることはないでしょうから、青野がやめるパターンですかね。
そう考えると、ここで「打ち明ける」選択をした佐伯は、すごい勇者だなあというか、基本の姿勢が攻めなんだな、と感じてしまうのです。
秋音律子(あきねりつこ)
メインヒロイン的なポジションです(今のところは)。作者的にもそういう位置づけで話を構成してるんじゃないかなあとは思うのですが、まあ今後どうなるか分からないんですよね(後述)。
さて、この秋音ですが、私の個人的な感想ですが、本当に様々な面で青野を支える、真のヒロインだなと思っています。なにせ青野がメンタルダウンした時に、必ずと言っていいほど、秋音の介入があるからです。それはもちろん、秋音が意図して介入してきたものばかりではありません。
たまたま隣にいたり、たまたま話しかけられたり、もちろん秋音の方からわざわざ連絡してきたということもありますけど。まあそれだけ青野のそばに秋音がいるということでもあるんでしょうけどね。
性格はとにかくポジティブで、なんて言いうんでしょうね、迷ったとき、沈んだ時に、「でえじょぶだ!」と背中をバンっとたたいてくれて、それでちょっと安心できるとか、励みになるとか、そんな感じです。
そしてそういう前向きな姿勢は、ヴァイオリンの演奏にも出ています。青野曰く、下手なのに音が大きい、とのこと。普通は下手なのを自覚していると、どうしても自信がなくて音が小さくなってしまうのに、秋音はずっと大きな音を出している、というのです。下手だったり、何か困っていたり、あるいは悩んでいたりしたときに、縮こまっていても何にも解決にならないというのを、肌感覚で知っているんでしょうね。
ちなみに、秋音が落ち込んでいるときの励まし役は、青野ではなく、同じヴァイオリン1年女子の立花って子のことが多いです。正直カップリング的にはこっちの方が正統派かな?と思わないでもない感じです(笑)。
小桜ハル(こざくらはる)
もともと青野と秋音の中学校に在籍していたのですが、ヒドイいじめに遭って転校しており、高校にて青野や秋音と再会した女の子です。と言っても、青野にとっては「ちょっと見たことがある程度」くらいの認識でしたが。
ちなみに小さいころから青野に恋心を抱いていて、高校にて再会できたことをとっても喜んでいました。けれども人見知りでなかなかうまく話ができなくて、親友の秋音が青野と特に仲が良さそうなのを、ちょっと嫉妬しながら見ていたりなど、小動物系女子という感じで描かれつつも、1番恋愛ドロドロなキャラとして見事に立っているという印象です。
恋愛ドロドロと言っても、別にすごく黒い感じがあるというのではなく、「恋愛に関する悩みやらなんやら担当キャラ」とでも言いますか…。
特に9巻あたりからは、積極的に青野をデートに誘ったり、かなりグイグイ行っています。ただどうしても、青野が秋音との方がいい感じなので、このまま行くと悲しい結果になりそうなのがちょっとかわいそうな気がします。
あとハルを語るうえで忘れてはいけないのが、秋音に対する途方もない罪悪感です。ハルがいじめられて不登校になった後、秋音だけはハルの友達でいてくれました。けれども今度は、その秋音がいじめの対象になってしまったのです。
ハルはそれを知りつつも、そのことを指摘できず…まあ要は、秋音が自分の身代わりになったと思ってしまっていたわけなんですよね。
まあただ、秋音は秋音で、いじめられているハルをかばおうとしたことで、逆にハルへのいじめがヒートアップされてしまったという負い目もあったわけで。秋音曰く、自分がハルを追い詰めていた、と。
しばらく後、2人はお互いそのことを語り合った上で、お互い和解?というか納得し合い、わだかまりもある程度は解消されました。けれども、いじめらたころのトラウマだけは、未だ消えずに残っている描写がちらほらと見え隠れします。
山田くん
陰キャな主人公のそばには必ずいるという、明るくて性格の良い友人枠です。小さい頃から音楽のコンクールに出場していて、青野のことは知っていたし、たまに話しかけてもいたそうです。ただ青野本人は、高校になるまですっかり忘れてしまっていたようでしたが。
青野が話しづらい話題になってしまった時にさりげなく話題を変えたり、これでもかというくらい前向きに明るく青野をオケ部に誘ったりするなど、いい人全開なキャラです。しかも青野のことだけでなく、佐伯やほかの友人たちのことまで気遣っていたりします。すごいですね。
ただ現状、それくらいしか特筆すべきことがないのも事実です。ちょびっと自分語りの中で、佐伯に対するコンプレックスの話なども出ましたけど、それだって人物像に大きな影響を与えるほどのイベントというわけでもなさそうですし‥‥。
邪推というか、ちょっと捻じ曲がった見解かもですが、秋音かハル、あぶれてしまった方の救済キャラになってしまうんじゃないかと思わないでもないのです。
原田先輩
青野や佐伯が目標にしている3年生の先輩です。非常に優秀なヴァイオリニストでもあり、またオケ部員をうまあくまとめ上げる有能なコンマスでもあります。
まあもっとずっと掘り下げていけば、きっと彼にもさまざまな苦悩があったり、欠点なんかも見えてくるのでしょうけれど、まあそういうの見せる前にオケ部を引退してしまいました。
優雅な演奏姿と、笑顔にきらりと光る汗が、後輩女子の心を鷲掴みにしてしまう、素敵すぎる先輩です。
羽鳥先輩
原田先輩が引退してから時期コンマスとして期待される2年生の先輩です。ダンス部と部活を掛け持ちしていて、これまではオケ部に来ていないことも多かったのですが、3年生が卒業する直前くらいから、部活に来る頻度が上がったようです。
羽鳥先輩、きっとなんでも器用にこなしてしまえる人なんだろうなあと思います。実際に、そこまで熱心に部活に参加しなくても、時期コンマスとしての地位をしっかりと築いていましたから。
けれども青野と佐伯が現れて、羽鳥先輩の地位は一気に揺らいでしまうことになります。事実、3年生が引退するオーケストラのコンサートでは、原田先輩の次のポジションは青野になってしまいました。これは実質、羽鳥先輩が青野に負けてしまったことを意味します。
羽鳥先輩、悔しかったんだろうなーと思います。へらへらしながらも、なんとなくそう思います。だからその後、(前よりは)練習に来るようになったのではないでしょうか。まあコンマスとしてとか、パートリーダーとしてみたいな自覚?責任感みたいなものもあるんでしょうけどね。
あと羽鳥先輩がかっこいいなって思うのが、青野も佐伯はいわば自分の地位を脅かす存在なわけですけど、彼らにちゃんとアドバイスしたり、すごく面倒見たりしてるところなんですよね。もちろん先輩だし、オーケストラ全体のことを考えれば当然かもしれないのですが。なんというか、本当に2人の成長を楽しみにしているような、本当に2人のこと、というかメンバーのこと好きなんだろうなってのが伝わってくるのが、とてもいい人っぽいです。
あ、青のオーケストラに出てくる人、基本いい人ばっかりですね。そういえば。
佐久間先輩
2年生の打楽器のリーダーです。なんでもズバズバとモノを言うタイプで、あまりの毒っぷりに、ほかのパートリーダーと反発したり、後輩からは怖がられたり嫌われたりもしています。
ただ不思議と、同年代の人たちで佐久間先輩を悪く言う人、あまりいないんですよね。そらまあ管楽器のリーダー東金先輩あたりとはかなりバチバチだったりして、雰囲気悪かったりすることもあるんですけど。その東金先輩ですら、佐久間先輩を「悪い人」みたいな言い方はしないんです。
理由として、1つは、本当に全体のことを考えているから、というのがあると思います。つまり、オーケストラ全体のことを考えると、佐久間先輩の言ってることは一理ある、ということが多いのです。もちろん、人それぞれ感情がありますし、個々人の事情だってありますから、正論だけがすべてではありませんけれど。
もう1つの理由は、佐久間先輩が意外とかわいいからではないでしょうか。確かに、毒を吐いて、四方八方ケンカを売りまくるスタイルはちょっとどうかと思いますが、なんというか、突き詰めていくと、とにかくお話ししたい人なんだなと思うのです。
たまたま電車で一緒になった青野に、ひたすら時期コンマスとしての心構えを説いていたり、体育祭で部活対抗リレーがあったわけですが、その反省会をしようと言い出したり。演奏会後の打ち上げでは、主要な2年生メンバーに青野も加えて、今後のオケ部について長々と語っていたりもしていました。しかも1人がっつりとケーキを食べながら。
こういうキャラ、どこかで見たなと思ったら、3月のライオンのはっち(正確な名前忘れちゃったけど)ですね。将棋指している間ひたすら舌打ちしたり貧乏ゆすりをしたりとほんと困ったやつなんですが、その後ファミレスでじっくり検討をしようと言ってパフェを食べだしたりして、まあ困った愛されキャラ的な扱いらしいのです。で、佐久間先輩もなんかその枠な感じなのかな、と。
後ですね、佐久間先輩が毒を吐いたりしているの、相手の本音を引き出したいって言うのもあるのかもしれませんね。なんか佐久間先輩、本音で話す、本音を吐き出すっていうのに、すごいこだわりがあるような気がします。
まとめ
青のオーケストラは、本当に魅力のあるキャラクターがたくさんいます。ここでは青野、佐伯、秋音、ハル、山田くん、原田先輩、羽鳥先輩、佐久間先輩と、8人だけ紹介しましたが、本当はもっと紹介すべき人がたくさんいるのです。ただちょっと書ききれなかった…。
まあ正直よんでもらったほうが絶対に早いと思うので、もし気になった方はぜひとも手に取っていただければと思います。
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