いやあ、よかった。小林さんちのメイドラゴン最新刊12巻ですが、まあなんとなくですね、そんな展開になるんじゃないかなとは思ったのですが、そこに至るまでのトールの気持ちとか、エルマの気持ちとかがとっても尊いなあと感じる1冊でした。
ただ1つ懸念があるとすると。
小林さんちのメイドラゴン、巻数を重ねていくごとに少しずつ登場人物たちの関係性が変化していって、それはとても面白いくて、すごくワクワクしたりムズムズしたりといいんですが。そういう人間関係の清算を進めていってしまうと、そのうち作品として面白みがなくなってしまうんじゃないかなと、ちょっと心配になるんですね。
今回はそのあたりを語っていきたいと思います。
小林さんちのメイドラゴン最新刊12巻あらすじ
ドラゴンの勢力の1つ、調和勢のエルマが無理やり結婚させられそうになる話です。
無理やりと言っても、エルマはそこまで嫌がったりはしないんですよね、最初は。エルマってもともと周囲のバランスを保とうとするというか、自分を殺して他人を優先してしまうところがあるというか。調和勢全体のために、これまで全く知らない人(ドラゴン)と結婚することも、それは調和を重んじる自分の意志だと思い込むところがあるんですよね。
青海の巫女として人間界にいた時も、なんかそういうところあったみたいですし。自分は本来こんなことをするべきではないと思いながらも、自分をあがめる人たちを裏切れないって言って、結局自分を押し殺してしまうような、そんなところ。
そしてそういう痛いところをトールに突かれて、結果ケンカ別れしていたんですよね。
トールはそんなエルマが気に入らないわけです。エルマが結婚することになっても、トールは「それはお前のやりたいことじゃないだろ」みたいな感じで詰め寄るわけですが、エルマはそれを否定するのです。そうやって自分の身をささげて勢力のバランスを整えることも、自分のやりたいことだ、と。
けれど結局、いざ結婚するぞという時になって、エルマは大泣きしてしまいます。トールを思い出しながら。トールのように自由に生きたいって。
そしてそこにトールが助けに来るのです。「調和勢の結婚式なんてぶち壊してやるー」と。まあ若干小林さんに、背中を押されたり、エルマを穏便に開放させられる策を授けられたりというのはありましたけど、トールが自らエルマのために動いたのです。
そしてトールにとってエルマが、エルマにとってトールが、どんな存在なのか、お互いがはっきりと意識し合う場面。それがもう尊いなあ、というそんな話なのです。
少しずつ人間(ドラゴン)関係が清算されていくことによる物語の変化
今回はトールとエルマの関係性の話でした。
ここ最近のメイドラゴンは、どうも少しずつ登場キャラクターの関係が固定されてきているというか、落ち着いてきているように感じますね。
トールは父親と和解しましたし、エルマとも仲良くなりました。それに小林もまたトールを受け入れつつありますよね。ファフニールもなんだかんだ言って、滝谷のそばを離れない感じになっています。カンナはあっちの世界を追放された理由がなくなって、自ら小林の家にいつくようになりましたし、イルルもタケとの関係は落ち着いてきています。またルコアと翔太も、なんだかんだ言っていいところに収まりつつありますよね。
これまで小林さんちのメイドラゴンって、そういう各登場キャラクター同士の関係のバランスが不安定だったからこそ面白みがあったと思いませんか?トールがぐいぐい来て、小林がそれを半眼であしらっている、そんな光景が面白かったはずです。逆に言うと、小林がそれを受け入れてしまうと、あとはただのトールと小林のラブラブ日記になってしまうわけです。もちろん、まだ尻尾は食べませんし、トールの無茶に振り回される場面も決してないわけではありません。けれども、以前に比べると格段に少なくなりましたよね。
ほかのキャラクターたちも同様です。どこかずれていた各人間関係が、少しずつ安定してきて、以前よりも空気が穏やかになっているのです。
それが嫌というわけではないです。ずっと関係性がアンバランスなままだと、それはそれでしつこいと感じてしまいますから(乱馬とあかねなんかがそうじゃなかったですか?同じこと何度も繰り返して、なんとなくその関係性に飽きてしまう感じ)。
ただ登場キャラクターの関係性がそれぞれ安定してくると、やはり小林さんちのメイドラゴンの面白みが欠けてしまうのかな、と思わないでもないのです。とがった部分が丸くなったというか。
何度も言いますが、それが嫌じゃないのです。それだけは声を大にして言いたい。関係性が安定してきた(しかも以前アンバランスだったのが整ってきた)物語には、それはそれで別な魅力がありますからね。それにずっと変化しない関係性というのは、それはそれで飽きてしまいますからね。
登場キャラクターの関係性が変わってきたからこその楽しみ
最近の小林さんちのメイドラゴンを読んでて思うのは、小林がより異世界の事情に首を突っ込むようになったということです。カンナのおやじ狩りしかり、ドラゴンの結婚式ぶち壊ししかり。なんとなくですが、作品の面白みを、トールやほかのドラゴンの常識と現代日本とのギャップから、異世界とのかかわり方にシフトしているように感じます。
あとは新しいキャラクターの話ですかね。アーザードとジョージーとか。ただそれも何回も引っ張れるようなネタではないでしょうし。
なので今後はもっと長編が増えてくるように思います。聖剣に関する話になるのか。それともドラゴンの各勢力のいざこざの話になるのか。専務と異世界の話も、これからもっと膨らんでいくかもしれませんし、ルコア関係の話もまだまだ膨らんでいきそうです。
…そう考えてみると、まだまだネタはありそうですね。
ただ物語の構成というか、テーマとするものは変わっていくことでしょう。まあ考えてみれば、物語の登場人物たちは生きているわけで、当然成長するし、変化があったっておかしくないわけです。
ただそうですね、そう考えると、トールたちは今後さらに人間世界に溶け込んでいくのか、それともドラゴンとしてのアイデンティティをどういう形でか確立していくのか。その辺は見ものかもしれません。
ドラゴンと人間、必要以上に深く関わってしまったがゆえに、今後の登場キャラクターたちの在り方というのが、今後のテーマになっていくのかもしれません。
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