とうとうアニメも始まりましたね。最近のアニメはどうも話を急いで消化しようとするあまり、どうしてもペースが早くて消化不良になりがちでしたが、真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので‥‥は結構ゆっくり、ていねいに作られてる感じがしましたね。嬉しい。
どうもさめきちです。
今回は真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました漫画7巻(2021年9月発売)のあらすじと感想を語っていきたいと思います。
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勇者のパーティーを追い出されたギデオンは、辺境のゾルタン薬屋を営んでいました。リットというパートナーにも恵まれて、見るものが赤面するくらいのいちゃラブ生活を満喫していたわけですが、少しずつ、そのゾルタンに不穏な影が見え隠れしてきます。
危険な麻薬がじわじわと街に広がっていき、そのせいで正気を失い凶行に走る若者が増えてきて、また同時に中毒症状で病院に担ぎ込まれる人も増えてきました。
そのような中、レッドの友人とその子どもが襲われる事件が発生します。しかもその犯人が街の衛兵隊長の息子だというから、問題は本人たちだけでは済まなくなっていきます。
もともとゾルタンは衛兵との折り合いが悪いのです。ゾルタンは流れ者が集まる街であるので治安がいいとは言えず、住民と衛兵が衝突することも多く、例え目に見えて衝突していなくても、お互い悪感情を持っていることは周知の事実です。
そこにきて衛兵隊長の息子アデミが凶行に走り、しかもアデミが行方不明になっているというから、街の住民は衛兵がアデミを庇っていると騒ぐのです。果てはレッドの友人夫婦が抗議の神輿として担がれてしまったため、その息子アルは居場所を失い、一時的にレッドとリットが預かることになりました。
けれども今度はそのアルが狙われることになってしまいます。
一連の事件の黒幕は盗賊ギルドの大幹部の1人、ビッグホークという男でした。麻薬を流行らせ、衛兵と住人との間にいがみ合いを起こし、住民の代表として暴動を起こし、ゾルタンを征服しようとしていたのです。
真の仲間じゃないと勇者のパーティを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました7巻のあらすじネタバレ
事件の真相とアルの決断
ビッグホークはすでに屋敷の外に多くの住民たちを集めていました。議会に抗議する代表となったことで、一気にゾルタンのスラム街の英雄になったのです。
さらわれたアルはビッグホークから、ゾルタンの救世主になるよう諭されます。同じくビッグホークに囚われていたアデミをみんなの前で殺し、革命の合図とするよう強要したのです。
アルにとってみれば、アデミは自分と両親を襲った犯人です。それ以前に、アデミは凶行を起こす前からアルをいじめることもあったようです。ビッグホークが黒幕であることを知ったとしても、アルにとってはアデミは敵なのです。
「あの晩、斧を持ったアデミはボクを殺すつもりだった。殺そうとしたのだから、殺されたって文句は言えない。だって敵なのだから‥‥」
けれどもアルはその時、剣に映った自分の顔に目を止めます。
「悩んだら自分の剣に聞いてみろ‥‥己の剣が何を求めているのかを聞け‥‥」
アルに手ほどきをした時のレッドの言葉です。アルは目を覚まし、アデミの縄を斬り、ビッグホーンに剣を向けるのです。
レッドとアルベール
アルに剣を向けられたビッグホークは、アデミを操りアルを殺そうとします。けれども間一髪のところで、レッドが助けに来ました。いえ、正確に言うとレッドは変装してビッグホークの一味に潜り込み、機を伺っていたのでした。アルとアデミを助ける機会を。
果たして、レッドは2人を連れて無事盗賊ギルドの手の届かないところまで逃げ切ります。けれども今度はそのレッドを、ゾルタン唯一のB級冒険者アルベールとデーモンたちが待ち構えていました。
レッドは協力者にアルを任せ、1人アルベールと対峙します。アルベールはビッグホークと共闘し、さらに恐ろしいことを考えていたのでした。
ビッグホークはゾルタンの王になる。そしてアルベールはそのゾルタンの住民を率いて、勇者の戦いに馳せ参じようとしていたのです。
それはアルベールの加護「ザ・チャンピオン」の影響を大いに受けていると言っていいでしょう。「ザ・チャンピオン」は困難を乗り越え偉業を達成する英雄の加護。そしてその衝動は、自身の力を世界に示し、歴史に名を残すことです。アルベールをここまで突き動かすのは加護による強い強い衝動だと言って間違いありません。
アルベールは改めてレッドを仲間に誘います。自分と共に勇者のもとに馳せ参じようと。そしてそうでなければ、決闘で決着をつけようと。
けれどもアルベールの願いはあっさりと潰えてしまいました。そこにはすでにレッドが呼んでいた衛兵たち、そしてギルドの幹部でありBランク冒険者ガラティンが控えていたからです。
デーモン
衛兵に捕まったビッグホークの前に面会者が現れます。レッドがアルベールと対峙した時に、アルとアデミを連れて逃げてくれた協力者です。
彼はビッグホークをベリエルと呼び、殺そうとします。するとビッグホークの中にいたデーモン・ベリエルが現れ、一目散に逃げ出しました。ベリアルと呼ばれたデーモンは真っ直ぐアルベールの元へと向かいます。アルベールもビッグホークと同様に、衛兵に捉えられていたからです。ベリアルはアルベールに叫びます。勇者の元へ向かうため、自分を望め、と。
捕まってしまい無気力となったアルベールは一旦それを拒否しますが、ベリアルは契約を盾に再度アルベールに詰め寄り、アルベールはそれを「好きにしろ」と受け入れます。
果たして、デーモンであるベリアルはアルベールの中に入り、見事脱獄を成功させたのです。
勇者と麻薬
勇者のもとにたどり着いたベリアル=アルベールは勇者ルーティと面会を果たします。目的は、かつてビッグホーンを使ってゾルタンの街で流行らせた麻薬を渡すことです。
加護レベルを上げようとするならば、自身の加護レベルと同程度以上のレベルを持つ加護をもつものを倒す必要がある。けれどもこの麻薬は1回服用するごとにアックスデーモンの加護レベルが上がり、本来の加護レベルが下がる。それによって効率的に加護レベルを上げることができる。ベリアルはルーティにそう説明しました。
聞くが早いが、ルーティは早速その薬を飲んでしまいます。もし薬に毒や呪いがあったとしても、ルーティの勇者の加護による完全耐性が発動し、決して悪いことにはならないから、というのです。
そして翌朝、ルーティの仲間であるアレスやテオドラが起きた頃にはすでにルーティの姿はなく、ベリアルの死体が残されているのみでした。
ルーティは仲間の1人であるティセとともに、飛空挺を使って旅立っていたのです。
感想:アルベールの悲しみが半端ない
アルベールというキャラクターは、噛ませ犬敵ポジション、レッドやリットの強さを引き立てるだけの存在、もっと言えばプライドだけ高い単なるザコだと思っていました。1巻1話目で登場した時も、レッドの方が明らかに実力が上であるにもかかわらずそれを見抜けず、それをひけらかさないレッドをひたすら見下していましたので。
そんなアルベールが7巻にきて、まさかこんな役どころを与えられていたとは‥‥と感服せずにはいられませんでした。
いえね、レッドに比べれば全然弱いことは確かなのです。実際に最後の最後、レッドに斬りかかったアルベールはいともあっさりとレッドに腕を切り落とされてしまいましたので。
ただですね、アルベールの描かれ方がなんというか、すごくレッドと対照的でした。その対比が、その明暗があまりにもくっきりと描かれていて、思わずアルベールに感情移入せずにはいられなかったのです。
アルベールは辺境で燻っていて、けれども何か成し遂げたい、英雄に名を連ねたいという強い思いがありました。加護の影響、衝動に支配されていたと言って良いでしょう。けれどもその感情は間違いなくアルベール本人のものでした。
対してレッドは、勇者のパーティーに名を連ねていた英雄の1人と言っても過言ではありません。パーティーを追い出されたのだったとしても、その事実は変わらないでしょう。
というか、レッドは自身のことを「戦力外として追放された」と評していましたが、これまでの勇者サイドの物語を見ていた読者としては、彼が本当に「戦力外として追放された」わけがないと分かりきっています。
アルベールの望んだものを、レッドは持っていたわけです。強さも、実績も、名声も。けれどもレッドはそれを捨てて、スローライフすることを自ら選んでいます。
持たざる者であるアルベールにとって、それがどんなにもどかしく、認められないことだったか。
「あんまりだ‥‥こんなのあんまりだろう‥‥」
本当に、この言葉が全てを物語っているなあとしみじみ思います。
持たざる者の憂鬱とでも言いましょうか。実力があるのに、それを表立って行使せず、自分が欲しいものを全て持っているのに、本人はそれをいらないと言う。その態度が、持たざる者にとってどれだけ傷つくか(勝手な話なんでしょうけど)。
もっとも、自分の目指す姿に向かって努力することは大事でしょうし、それをしなければそもそも嫉妬する権利もないとは思います。ただアルベールは努力してましたからね。常に強くあるように、英雄であるように。口も性格も悪いですけど、頼りない仲間を引き連れて、先頭に立って、様々な依頼や冒険をこなしていたのです。
だからこそ、アルベールは深く傷ついたのだと思います。
捕まった後のアルベールの呆けた表情、全てのやる気がなくなり力の抜けた体が、その全てを物語っていました。そんなアルベールが魅力的に思えて仕方がないのです。
ちなみにアルベールはこの後もまだまだ登場します。小説読みましたけど、ほんとこのアルベールの成長というか、変わりっぷりはね。挫折を知った後に立ち上がるみたいな書かれ方してて、とても嬉しくなりました。
この後のルーティ編が楽しみで仕方がない
ベリアルから麻薬を受け取り、それを飲んだルーティは翌日飛空艇でどこかに行ってしまいました。これはその麻薬の作用によるものです。
ルーティは勇者の加護を持っています。勇者の加護は非常に強力であるものの、その衝動も恐ろしく強いものであると描かれています。たとえば、目の前に困っている人がいたら絶対に助けずにはいられないとか。自分を害するのでなければ決して仲間を害せないとか。絶対に自分の望みよりも魔王を倒す使命を優先せずにはいられないとか。
ところで、デーモンが持ってきた麻薬ですが、これは本来の加護レベルを下げて、デーモンの加護レベルを上げるというものでした。けれどもデーモンの加護は呪い由来のものであり、呪いであればルーティに効くことはありません。
結果、ルーティはその麻薬を飲むことで、勇者の加護レベルを下げるのみとなったわけです。
それはつまり、勇者としての衝動が抑えられたということです。
勇者の衝動が抑えられた時ルーティが何をするか。そんなの決まっています。大好きなお兄ちゃんのところに行くのです。
そしてそれがきっかけで、レッドのもとにはかつての仲間たちが勢揃いすることになるわけです。
もうこんなに楽しみなことはありませんね。ルーティがレッドとどう絡むのか、というかリットとどう絡むのか。
久しぶりに大好きなお兄ちゃんに会いに行ったら胸の大きい兄嫁がいた、みたいな感じでしょうか(ラノベのタイトル風に書いてみた)。
早く次の章が読みたくてたまらない、そんな今日この頃です(小説は全部読みましたけど)。
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