「セシル殿下!私は悪役令嬢ですの!私の役目は殿下とヒロインの仲を引き裂いて最後は婚約破棄をされてギャフンと言わされることなんですわ!」
「うん。意味がわからないね」
自称悪役令嬢な婚約者の観察日記。1巻
初めて会った婚約者が突然そんなことを言い出したところから始まる悪役令嬢もの、自称悪役令嬢の婚約者の観察日記。。主人公は悪役令嬢に転生した女の子かと思いきや、実はその婚約者を興味深そうに(もしくは呆れながら)観察する王子の方です。
さて、漫画の方は一応の決着がついて、あとはハッピーエンドに向けてまっしぐらといったところですが(小説はすでに完結してますし)、一方で悪役であるヒローニアについては消化不良な部分も否めません。
まあ自称悪役令嬢な婚約者の観察日記。のヒローニアは悪役ですから、とりあえずラストでギャフンと言われればそれで良かったのかもしれませんが‥‥ただ何となく彼女の正体が何なのかも明らかにはされてないですし、ちょっと結末が残念すぎるなあと感じるんですよね。
もう少しヒローニアが変わっていれば‥‥というかピーちゃんが変わっていれば、きっともう少し楽しい結末にもなったんじゃないかな、と。ああいう残念な自称ヒロインキャラ、結構嫌いじゃないんですよね。だからちょっと残念だなーって。
ということで、今回はそんな自称悪役令嬢な婚約者の観察日記。の悪役であるヒローニアについてです。
まだ悪役令嬢な婚約者の観察日記。を読んだことない人は、是非とも買って読んでくださいね。損はしませんよ!
悪役令嬢な婚約者の観察日記。とはどんな話?
自称悪役令嬢な婚約者の観察記録。1 (レジーナCOMICS)
現代の少女が学園もの乙女ゲームの悪役令嬢、バーティア嬢に転生する話です。悪役令嬢の婚約者の王子はちゃんとゲームのヒロインと結ばれないと相当不幸になるらしく、バーティアはそれを阻止するために、なんとか悪役令嬢になり切ろうと四苦八苦します。
ただどうも性根がいい子というか天然というか、むしろ逆に周りにファンを増やしていったり‥‥また王子は王子でそんなバーティアに本気で惚れていってしまいます。
一方、本来のゲームのヒロインであったヒローニア嬢ですが、王子と無理やり結ばれようと変な工作をしたり、バーティア嬢を陥れようとしたり、色々と画策しようとします。
まあつまり、本来の悪役令嬢とヒロインの立場が逆転してしまったわけですね。
で、卒業式の日。本来ならば悪役令嬢であるバーティアの悪行が暴かれる断罪の舞台ですが、ヒローニアが無理にバーティアを陥れようとして、逆に自分が断罪されることになります。
晴れて、悪役令嬢もといバーティア嬢は王子と結ばれて、本来ゲームではヒロインだったはずのヒローニアは、その罪を償うためにきたの厳しい大地の修道院へ入ることとなるのです。
そんなお話です。
ちなみにAmazonのレビューもとてもよい評価がついていますね。興味があればぜひ↓
ヒローニアは異世界転生者?
まず間違いないでしょうね。ヒローニアはゲームの世界のことを知っていましたから。
「この前は素敵な薔薇の花をありがとうございました!」
自称悪役令嬢な婚約者の観察日記。2巻P34
実際には薔薇の花なんて渡されていないにもかかわらず、ゲームのシナリオで渡されていたからと、王子に語りかけます。当然、当時としてはポカンですよね。「薔薇‥‥なんてあげてないけど?」
「好感度が上がらない‥‥さすがに逆ハーは諦めるべきかしら。」
自称悪役令嬢な婚約者の観察日記。3巻P32
ぶつぶつと呟いていたのをたまたま王子に聞かれていたようです。逆ハーという言葉自体、ゲームの中の言葉ですよね。そんな言葉を知っているなんて、現代から転生してきたとしか考えられません。
「なんでライバル令嬢引き連れて攻略対象との仲取り持ったりしてんのよ!」
自称悪役令嬢な婚約者の観察日記。3巻P85
この乙女ゲームでは、王子の他に攻略対象が5人います。全ての攻略対象を攻略すると逆ハーレムルートに突入するわけですが、バーティアがこれでもかというくらいに、各攻略対象とライバル令嬢をくっつけていたんですよね。
ヒローニアからすれば逆ハーレムルートを完全に潰されてしまった形になります。まあ怒るのも筋違いではありますけれど‥‥。
「他のイベントだってちゃんとこなしたたはずよ!」
自称悪役令嬢な婚約者の観察日記。4巻P54
この辺りになってくると、もはやシナリオとか、イベントといった言葉を隠そうともしません。その世界を生きている人にとっては失礼な話ですよね、シナリオとかイベントって言葉。
ヒローニアにとってはあくまでもこの世界はシナリオに沿ってイベントが起きなければいけない世界なのです。
「何よ!アンドロイド王子のくせに!」
自称悪役令嬢な婚約者の観察日記。4巻P56
アンドロイド王子という言葉自体、ゲームのプレイヤー同士の間で使われていた言葉のようです。というかこの世界の王子評判めっちゃいいんじゃないですかね。誰もそんなことを言うはずがありません。
その言葉を知っているのは、その乙女ゲームをプレイしていた人だけです。
「そもそも悪役令嬢であるはずのあの子が勝手に動き回ったせいでシナリオが変わったんだわ!」
自称悪役令嬢な婚約者の観察日記。5巻P138
ヒローニアにとってみれば、バーティアの存在だけが特異でした。バーティの周りからどんどんシナリオがかけ離れていって、最終的にはヒローニアの知るシナリオとは全く違うものになっていました。
でも、それを王子に面と向かって言うのはちょっとどうかと思いますね。それって要は「お前はシナリオに過ぎないよ」と言ってることと同じなわけですから。失礼ですよ。
「わ、私はちゃんとシナリオ通りにイベントを進めたじゃない!」
自称悪役令嬢な婚約者の観察日記。5巻P141
「バーティアの他にもう1人シナリオを変えた人物がいる」と王子に指摘されたヒローニア。ヒローニアからすれば、シナリオ通りに動いていたのだから、そんなこと言われる筋合いはないとのことですが、王子曰く、ゲームの君は立派な令嬢だったと。
つまりヒローニア、シナリオ通りに動くことにのみ固執していて、しっかりと自分を磨くことをおろしかにしていたんですよね。
こうして見てみると、まあヒローニアは間違いなく、バーティアと同じく異世界転生者なのだと言うことが分かります。
ヒローニアはどうすれば愛されキャラになれただろう
ヒローニアには救いがない
ただ正直思うに、ここまでバカで、救いのない悪役と言うのもなかなかないなと思うのです。自称悪役令嬢な婚約者の観察日記。の物語的には、ヒローニアは悪役です。だから悪役が最終的に修道院に行く、不幸になると言うのはまあ分かります。
これまでしてきたことを考えれば、読者の溜飲も下がると言うものです。
愛されキャラになれる要素はあった
ただこのヒローニア、悪どいと言うよりも、本当に単なるバカなんですよね。もっとうまくやればいいのに、ただひたすらゲームのシナリオをなぞろうとして失敗したと言うか。
もしヒローニアを主人公に据えたなら‥‥あくまでもシナリオ通りに進めようとして、それでもうまくいかなくて、最後にはちょっとひどい目に遭う‥‥たとえば池に落ちるとか、転んで泥だらけになるとか‥‥そういうコミカルな物語が作れそうなくらいなバカなのです。
けれども、ヒローニアは最後まで、徹頭徹尾悪役でした。
そして最後には味方が誰1人としておらず、王家を侮辱した罪で本気で裁かれてしまう、本気で救いのないラストを迎えることになるのです。
ヒローニアが救われるには諌めてくれる友だちが必要だった
たとえばですよ。王子をどうにかシナリオ通りに攻略しようとして失敗して、それを見て腹を抱えて笑ったり、あるいは「やれやれ」と呆れながらも付き合ってくれる友だちがいたらどうでしょう。
もう少しヒローニアの性格も変わっていたと思いませんか?
ヒローニア自体は変われなくても、もう少し愛されキャラになっていたのではないでしょうか?
バイキンマンとか、ムサシとコジローとか‥‥?
けれどもヒローニアにはそんな友だちはいませんでした。盲目的にヒローニアを信仰していた(というかピーちゃん影響で頭のネジがぶっ飛んでいた)人たちがちょっと周りにいる程度です。何があってもヒローニアをよしよしする人しかいなかったわけです。
だから尚更、増長するしかなかったんでしょうね。
ピーちゃんの残念さ
ヒローニアが増長した元凶
ヒローニアの周りに諫める友だちがいなかった1番の原因は、やはりピーちゃんでしょうね。光の精霊ということですが、どちらかと言うと闇の精霊の方がしっくりきます。なにせヒローニアの周りの人皆洗脳してしまうのですから。
そういうことをしない、もっと正常な交友関係を築いていけたら、もう少しヒローニアもましな性格になっていたと思うんですけど。明言されてないですが、結構前からピーちゃんはヒローニアのそばにいたらしいですからね。
困ったらいつでもピーちゃんが解決してくれる(害なすものを皆洗脳してくれる)から逆に、ひろーニアは自分のことを盲信するようになってしまったんでしょうね。
困ったヒロインに突っ込むマスコットキャラなら良かったのに
ヒローニアが変なことを言った時、困った行動をした時、「それはおかしいでしょ!」と突っ込むようなキャラなら良かったんですよね。ピーちゃん。
ツッコミのマスコットキャラというと、たとえばCCさくらのケロちゃんでしょうね。何かと関西弁でツッコミを入れて、いい意味で主人公の暴走を止める役割を果たしていましたね。あとは魔女の宅急便のジジとかもそうかも。
逆にピーちゃんのように、主人公のやることを肯定して、どんどん悪い方に引き摺り込んでいくマスコットキャラもいますよね。魔法少女まどか☆マギカのキュゥべえとか、まさしくそれじゃないですか?まああれはピーちゃんと違って確信犯でしたけど。
ピーちゃん、キュゥべえと同じになってるよ‥‥。
まあキュゥべえは置いておいても、もっと「お前アホかーっ」って突っ込まれるようだったら、ヒローニアもう少し愛されキャラになっていたかもしれないのにな。とそんな感想です。
自称ヒロインなご学友の観察日記。
もし仮にピーちゃんがもう少しヒローニアを諌められるマスコットキャラだったら、こんな展開もあったんじゃないかな、と。割とこれはこれでいいと思うんですけどね。
中庭にて
ヒローニア「眠いわぁぁ!なかなか目が覚めないわぁぁ!」
ピーちゃん「目が覚めない人が叫んじゃダメでしょ」
ヒローニア「うるさいわね!こういうイベントだからいいのよ!」
一般男子「なに寝たふりしながら叫んでるのマジウケる」
ヒローニア「もうピーちゃん邪魔するから余計なのと出会っちゃったじゃない!」
ピーちゃん「あ、殿下もう行っちゃったね」
ヒローニア「キィィィ!悪役令嬢のくせにぃぃぃ!」
一般男子「いや、側から見ると君の方が悪役令嬢っぽいよ?」
好感度が上がらない
ヒローニア「好感度が上がらない‥‥さすがに逆ハーは諦めるべきかしら」
ピーちゃん「だから言ったでしょ、もういい加減諦めなって」
ヒローニア「なによ!あんたがもっと光のパワーで籠絡しないからいけないんでしょ!」
ピーちゃん「籠絡‥‥って、ヒロインはそんなこと言わないよ〜‥‥うーん、今回だけだよ。仕方ないなあ‥‥」
光のパワー‥‥!
一般男子「ヒローニア、なんて素敵なんだ!結婚してくれ!」
ピーちゃん「あ、間違っちゃった」
ヒローニア「何やってんのよもー!」
イーリン・シルベルツ弾劾の場で
ヒローニア「ちょっと待ってよ!私被害者よね!なんで慰めないの?」
セシル「それは私の役目ではないよ。ティアを休ませなくちゃいけないしね」
ヒローニア「‥‥だいたい全部あんたが悪いのよ‥‥悪役令嬢らしくしっかり嫌われ役をやりなさいよ!」
一般男子「いやあ、今のところヒローニア嬢の方が嫌われ役だよねw」
ピーちゃん「言えてるw」
ヒローニア「そこ!聞こえてるわよ!」
一般男子「僕は結構好きなんだけど」
ヒローニア「え?」
セシル「え?」
ピーちゃん「趣味悪っ」
ヒローニア「聞こえてるわよ!」
まとめ
ヒローニアの勿体なさとピーちゃんの残念さについて紹介してきました。本当にもったいないなあと思います。だって自称ヒロイン勘違い美少女って、結構おいしいポジションかなって思うんですよね。
まあ主人公になれないタイプではありますけど、最後に何かいいのを引き当てそうな、そんな予感がしませんか?
まあ漫画ではすでに修道院に行く結末を迎えてしまいましたし、今更ではありますけれど、そんなifがあってもいいのかなと思うのです。
それにしても悪役令嬢もの、結構面白いの多いですね。他にもあったらまた紹介したいと思います。
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