2023年アニメ化してた便利屋斎藤さんが、連載の方でなかなか面白いことになっているみたいです。なんとあのサイトウが、めちゃくちゃ大勢の注目が集まる中で、ラエルザのことを俺の嫁宣言していたのです。
もともとお互い想い合ってて、はっきりとは言わないまでもパーティー内では完全に公認カップルだったわけですけど、もはや大迷宮に関わる多くの人に知れ渡ったということですね。
ということで今回は久しぶりに、「便利屋斎藤さん、異世界へ行く」のお話しです。
百年に一度の祭典
今「便利屋斎藤さん、異世界へ行く」では最勇秀冒険者決定トーナメントが行われています。普通の「最優秀」ではなくて、勇者の「勇」の「最勇秀」です。なんかこだわりを感じますね。優勝賞品は黄金の鎧。売り飛ばせば一生遊んで暮らせるほどの大金が手に入るということで、サイトウのパーティーメンバーはめちゃくちゃやる気を出して参加しています。
ちなみにトーナメントでは、実際に戦うのは1人ですけれど、補助を2人までつけることができます。とにかくひたすら魔力が高く、魔法で強力なバフを与えることができるモーロックと、毎度呪文を忘れるモーロックに呪文を教えるサイトウが補助について、今回ラファンパンはギブングルをサポートすることになりました。まあ当たるとしたら決勝戦になるようなので、きっと当たらないでしょう。
他には、七士騎のカドレア、ヴェイズナー、ラーティル、レイス、イグラム。あとは何かしらと絡むことの多いフランリルやリリーザ。騎士の仮面を被った元魔王ルードルグもいます。
そして、どうやらサイトウと同様に異世界からやってきたらしいトシゾウ、斎藤利三が参加。顔に傷を負った女剣士を仇として探しているらしく、ラエルザがその仇ではないかと疑っているようです。サイトウと同郷らしいことからも、きっと彼との絡みが今後の物語の主軸になるのではないかなと思います。
それにしても、本戦参加者全16名。その中にラエルザが含まれているのを見ると、改めてその実力が高いこんだなあと感心してしまうわけですけれど、それなのに蓄えも特になくその日暮らしなことを考えると、この迷宮探索がいかに儲からないか、営みとして成立しないかを強く実感させられてしまいますね。それともただ単にラエルザたちの金遣いが荒いだけなのか‥‥。
トーナメント参加者の様々なドラマ
今回の最勇秀冒険者決定トーナメントでは、各参加者がそれぞれ一対一で戦うわけですけれど、そのため各参加者の事情や背景が特に丁寧に描かれています。
例えば、迷宮の奥で一人で酒場を経営するイグラムは、一見ただの酒場の親父に見えますけれど実は相当の実力者で、実力をつけはじめ慢心する冒険者を諌めるような「カッコイイオヤジ」といったキャラでした。けれども過去には結婚していて子供もいて、自身の不貞がもとで離縁されていた過去が明らかになりました。またそんな妻子に援助をしたいと願っているにもかかわらず、それを拒否されている一幕もありました。
まあ正直そんな事情があるにもかかわらず、過去には女の子のいるお店にしょっちゅう出入りしているシーンがありましたから、お前何やってるんだよと思わずにはいられませんでしたけれど。ただ、同じくトーナメントに参加して何がなんでも療育費を稼ごうとする元奥さんに対して、子供に会えなくてもいいから援助させてくれ語るイグラムに、その家族への愛を感じる場面がありました。
また散々国に持ち上げられて実力以上の評価を得ている国家公認勇者のカインズは、このトーナメントで初めて大衆の前で醜態を晒すことになります。実はそんなに強くなかったことと、それどころかトーナメントの組み合わせ先に国の息のかかった七士騎を配置しわざと負けさせる、つまりはヤラセで優勝するように仕組まれていたことまで明らかになってしまいます。読者としては「まあそうだよね」って感じですけれど。
ただそれでも諦めずに戦うカインズの姿に、ただチャラチャラしているだけの男ではないことを感じずにはいられませんでした。またそんな状況で国に見切りをつけ始めていたカインズを、ただ一人全力で応援し鼓舞するモンプイに感動させられる場面もありました。これまでのダメなカインズや卑怯なモンプイを見てきたからこそ、このシーンにはすごくグッと来るんですよね。
ともかくそんな、これまでを知っているからこその彼らの今を知ることができる、非常に読み応えのあるエピソードが満載なわけです。
ラエルザは俺の嫁
ただやはり一番の主役は、なんといってもラエルザです。今回のラエルザの気合いの入り方は一味違います。もちろん、黄金の鎧を手に入れて、それを売り払ったお金で一生浮上なく暮らしたいという思いもあるでしょう。けれどもそれ以上に、今回の戦いでは負けられない理由がありました。それが、今回初登場、サイトウと同じく異世界からやってきたらしい斎藤トシゾウです。
実はトーナメント開始前にラエルザとトシゾウは一悶着起こしているんですよね。主にラエルザを勝手に仇と勘違いしたトシゾウが絡んできた形ですけれど。そこでトシゾウがサイトウと同じ世界からやってきたらしいことを知ったラエルザは、トーナメントでトシゾウに勝った際に異世界のことを教えてもらう約束を取り付けるのです。
一つ大事なのは、サイトウは別に元の世界に戻りたいだなんて思っていないということと、そのことはラエルザも十分承知しているということです。だからラエルザは、サイトウと同郷の人間が現れたことで微塵も動揺したりなんかしていないのです。
それでもラエルザがこんなにムキになって気合を入れるのは、ただとにかくサイトウのために何かしたいっていう、ただそれだけなんですよね。サイトウはだいたいいつもパーティーの誰かのために動いていて、あまり自分の希望を言うことはありません。もとよりそんな性分でもあり、また今の自分の居場所に満足しているからだと思うのですけれど、そんなサイトウが今回珍しく「知りたい」と態度に出していたわけです。
思えばルンバの時もそうでしたけれど、自分がなぜここに来たのかという部分については非常に高い関心を示します。そしてそんなサイトウの望みを、たとえサイトウが特段気を揉んでなかったとしても、ぜひ叶えてあげたい。だからラエルザはいつも以上に気合が入っているのです。
「お前のために勝つ、その勢いで優勝だ」
10巻でそうサイトウに告げるラエルザは、とてもカッコよくて、また最高に美しかったと思います。
さてそんなラエルザは、二回戦魔獣狩りリリーザとの戦いで、大衆の前で兜を脱がされてしまいます。これまで仲の良い人以外の前では頑なに兜を取らなかったのが、ここに来て初めて公衆の面前で素顔を晒すことになってしまったわけです。そしてその動揺っぷりは凄まじいものでした。もうまともに戦いる状態ではありません。そしてそんな時サイトウが、ラエルザの後ろから大声で叫ぶのです。
「このオレ便利屋サイトウの女だ!」って。
‥‥まあ実際に叫んだのは、サイトウの声真似が上手い他の誰か、というか他の「何か」だったわけなのですけれど。不慮の事故と言えなくもなかったですけれど、効果は覿面ようでした。まるでこれまでの動揺が嘘のように、自信に満ち溢れた顔で相手をまっすぐと見つめるのです。
本当に、ラエルザは最高に美しいですよね。ただ顔がいいってことではないのです。好きな人の一言で、といっても今回に限ってはサイトウの発した言葉ではなかったですけれど‥‥、それでこんな覚悟を決めた凛々しい表情ができるのが美しいんですよ。本当にラエルザは最高のヒロインだよなあと改めて感じることができたのでした。
まとめ
正直トーナメントだなんてバトルものの漫画ではありきたりとも思いましたけれど、蓋を開けてみるとこれまで登場してきた様々なキャラの総まとめというか、これまで積み上がっていたキャラへのイメージがあるからこその感動が幾重にも散りばめられていました。
またサイトウが一緒にいる時のラエルザはどちらかと言うとかわいいことの方が多かったですけれど、今回はまさしく「美しい」形容するに相応しいシーンに思わず見惚れてしまいました。
アニメは昨年もう終わってしまいましたけれど、まだまだ便利屋斎藤さんには見所がたくさんあります!是非是非みなさんも読んでみてくださいね。
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