最強陰陽師の異世界転生記漫画7巻の感想です。アニメの最終回あたりまでの内容なので、アニメ見てた人にとっては「やっと漫画がアニメに追いついてきたか」という感じかもしれませんね。
それにしてもこの7巻、いつも以上にセイカの無双っぷりが際立っていたのですけれど、決して後味は良くない、そんな展開でもありました。アミュとフィオナという2人の女性キャラが、それぞれ種類は違えど、決定的に大事ななにかを失ってしまう、そゆなエピソードだったからです。特にフィオナについては、これまでの評価を覆すくらいに衝撃でした。
ということで今回は最強陰陽師の異世界転生記の漫画7巻のお話です。
「勇者」アミュを狙う魔族の刺客相手にセイカが無双する
最強陰陽師の異世界転生記~下僕の妖怪どもに比べてモンスターが弱すぎるんだが~(コミック) : 7 (モンスターコミックス)
6巻のラストで魔族の刺客が学園に向かっている描写がありましたけれど、最強陰陽師の異世界転生記漫画7巻の前半は、そいつらとの戦いがメインでした。刺客たちが学園に足を踏み入れて、なんか深い霧に包まれていて、そこにいる学生たちが呑気に談笑していて、それをバンバン始末していきながら「勇者」アミュを探しに行って、何故かいつの間にかセイカに一箇所におびき寄せられて‥‥あとはもう魔族1匹あたり1コマくらいな感じであっさりとやっつけられてしまいます。
いやまあセイカが強いのは初めから分かっていたのでいいのですけれど、魔族の刺客たち、あまりにも間抜けすぎない?と思うのは私だけでしょうか。セイカとの実力差がありすぎて1コマでやられちゃうのはいいです。もう全然いいです。むしろそれくらいでないと、めちゃくちゃ強いって設定なのにちょっとでも苦戦したりだらだらつまんない話で間延びさせられても興醒めするだけですからね。
ただ霧が立ち込めていて周囲の様子がおかしいはずなのにあんまり気にしないところとか、自分たちが殺戮している学園の生徒たちが全然手応え無かったりちょっと様子がおかしかったり、気づかないものなんですかね?足の向くまま歩いて行っていつの間にか魔族の刺客5匹一ヶ所に集められて、なんかおかしいねって程度で済ませてるの、敵地ど真ん中に襲撃しにきてるのにあまりにも警戒心なさすぎなんじゃないですかね?
まあセイカの術があまりにも強すぎて、魔族すら正常な判断力を失ってしまうくらいだったのかもしれませんけれど。
ふふふ、でも魔族の5匹、それぞれにちゃんと生活とか家族とかしがらみとか背景がありそうだったりするのがちゃんと描かれていたのにやられるのが一瞬というのは、まあ見ていてもスカッとしましたよね。いやまあ背景があるのはいいけど結局は「勇者」アミュを倒しに来てる「敵」な訳ですし、なんか自分達は強いぞってドヤ顔してて、こんな奴が一瞬でも幅きかせるようなことがなくて本当に良かったって思うんですよ。そこは本当に良かったです。
「勇者」アミュを助けに単身帝都へ殴り込み
魔族の刺客をやっつけた少し後、今度はアミュの元に兵士がやってきます。魔族側の「特使」を殺害した罪だとかで帝都に連れて行くんだとか。もうめちゃくちゃです。なにせやってきた魔族側の連中は特使なんかではなくて「勇者」アミュを消しにきたわけですし、しかもそれを葬ったのはアミュではなくてセイカです。まあこの兵士たち、というか兵士たちに指示を出している偉い人たちは、とりあえず何かしら難癖つけて「勇者」アミュを始末できればそれでいいんですよね。
で、連れて行かれたアミュを助けるために、セイカは単身帝都のお城に殴り込みをかけるわけです。いやもうドン引きです。親しい女性のために戦うというといかにもヒーローっぽいですけれど、あまりに簡単にお城の兵士とかやっつけるものですから、ヒーローというよりも完全に魔王なんですよね。鎧袖一触というか、赤子の手をひねるというか、やり方もこれまあいかにも悪役っぽくて。
いやまあ魔王だったわけですけど。
さて、このエピソードで上手いなあというか、なんか色々考えさせられるの、セイカの行動は本当に正しかったのか即答できないところだと思うんですよね。親しい女性のために体制側に単身ケンカを売るってのはそれなりにスカッとしますし、結構テンション上がるシチュエーションだと思うんですよ。少なくともアミュには全く非のない咎で囚われていたわけですからね。
ただ国益を考えてどうかということとか、事前にフィオナがいろいろ手を回してくれていたのにその好意を無下にしたとか、あとセイカが守っているせいでアミュの成長が望めずもはや「勇者」としての価値はなくなってしまっていたという点も、考慮する必要はあるのかなと、考えさせられてしまうわけです。特にこのアミュの「勇者」としての価値がなくなってしまった点についてはなんとも虚しい気持ちにさせられてしまいます。
セイカにとって、本来なら自分の力を隠す役割をアミュに望んでいたわけじゃないですか。それはある意味、単にスケープゴート的な意味だけでなくて、転生したこの世界におけるパートナー的なものも期待していたんじゃないかなと。なのに、今や完全に、ただただ助けを待つだけのお姫様になってしまっちゃったわけです。それもセイカの行動によって。そういうのを考えると、セイカのこれまでの活躍って一体なんなんだったんだろうって、なんかすごくモヤモヤしちゃったりするのです。
フィオナの悲しげな表情
アミュについて、自分に任せて欲しい、強硬な手段を取るのはやめて欲しいというフィオナに対して、セイカは信用ならんとバッサリ切り捨てるんですけれど、その際のフィオナの表情がまたなんとも切ないんですよね。そしてその切なげな表情の理由が巻末で語られていて、何とも言えない気持ちになってしまいました。
フィオナにとってセイカがどんな存在だったか。そしてそんなセイカに会うために頑張ってきたことが全て無駄だと分かっていても、期待せずにはいられなかったか。自分の望む未来は絶対に来ないと分かっていても、そのために突き進む以外に自分の道を見出せなかったというか。
少なくとも最強陰陽師の異世界転生7巻の最後の最後のエピソードを読むまで、フィオナって、非常に特殊な力を持っていつつも得体の知れない闇を持っていそうな、端的に言えば信用ならない存在だったんですよね。ある意味セイカが「君たちのいったい何を信じろというんだい?」と言った、その言葉の通りに感じていたわけです。セイカと仲良くなろうとすることで一体どんな利がこいつにあるんだろうなって。ホント最後の最後まで、なんか信用できない人だったんですよ。
それが最後の最後のたった14ページのエピソードでフィオナの印象が180度変わったんです。ありていに言えば、ああこの人は本当にただセイカと仲良くしたかったんだなって。6巻でデートまがいなことをしていたのも、叶わないひとときの夢に浸っていたのかなとか、アミュのこと任せて欲しいってセイカにお願いしたのも、それこそ最後のチャンスだって縋るような思いでいたのかなとか、そう思うと急にこのフィオナってキャラが好きになってしまいました。
今後フィオナはセイカと再開する機会があるんでしょうか。あるんだとして、今以上に傷つくことになるんじゃないかとか考えると、ほんとやるせない気持ちにさせられるのでした。
まとめ
最強陰陽師の異世界転生漫画7巻の感想をお話ししてきました。とにかくセイカが無双しまくってスカッとはするんですけれど、勇者という属性を持っているにも関わらず今後その特性を生かすことは叶わなくなってしまったアミュ。そして未来が見えてしまうが故に、自分の想いのためにあえて傷つくことを選択せざるを得なかったフィオナ。2人の素敵な女性キャラが自身の喪失と向き合うところを見せつけられる後味の良くはない展開が魅力の物語だったなあと感じたのでした。
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