結婚前日に「真実の愛を見つけた」と婚約者に婚約破棄された魔導具師のダリヤが、いつまでもうつむいてなんかいられないと一念発起して自分の商会を立ち上げ、今まで我慢していた自分のやりたいことにどんどん突き進んでいくというお話です。
このダリヤ、婚約していた頃はどうしても婚約者に合わせて地味に、そして好きなことも我慢して過ごしていたんですよね。別に婚約者のことが嫌いだったとかではないですし、ただもともと兄弟子ではあったのでどうしても兄弟的な感覚しかなく、なんというか情熱的に恋したみたいな感じではなかったってことです。緩やかにゆっくりと愛を育んでいければくらいに思ってたっぽいですし。
けど直前になっての裏切りで、まあそんな元婚約者にゲンナリしたり呆れたりはあるものの、好きなことを始めてからは、婚約破棄したことなんかすっかり忘れてしまうくらいに充実した、楽しい、そして刺激的な時を過ごしていくことになります。
ということで、そんなダリヤの充実した楽しい魔導具師ライフについてお話ししていきたいと思います。
魔導具師ダリヤの書籍情報
魔導具師ダリヤはうつむかない ~今日から自由な職人ライフ~ 1 (MFブックス)
「魔導具師ダリヤはうつむかない」は2018年4月から「小説家になろう」で連載されていた小説で、2018年10月から単行本化しました。2023年9月時点で8巻まで発売されていて、累計発行部数は120万ぶを超えているそうです。「このライトノベルがすごい」では2023年版で2位を獲得して、先月(8月)にはアニメ化も発表されています。
魔導具師ダリヤはうつむかない~Dahliya Wilts No More~ 1巻 (ブレイドコミックス)
漫画版は現在6巻まで発売中。だいたい漫画単行本2巻で小説1巻分といったところでしょうかね。漫画版では結構エピソードを端折ってるところもあるので一概には言えないんですけれど。
アニメ化なりますけれど、小説版と漫画版どちらを基準に作られるんでしょうかね。できれば小説版準拠の方がエピソードもれなく網羅してくれて嬉しいんですけれど、そうするとなんかきりのいいところまでいかなそうなんですよねえ。せめて騎士団魔物討伐隊相談役になるあたりまではアニメでやってほしいところなんですけれど…。
魔導具師ダリヤのロセッティ商会立ち上げ
ダリヤの元婚約者は商会の次男坊でした。魔導具師ダリヤはもともとすでに1つ魔導具のヒット商品を世に出していましたけれど、その取引や素材の仕入れの多くはもと婚約者の商会を通してのことが多かったようなんですよね。けれどもこの度の婚約破棄によってそれができなくなって‥‥。
それで商業ギルドの副ギルド長や公証人から勧められて、自由に取引と素材の仕入れができるようにと言われるがままに商会を立ち上げた、というのが実情です。まあすでに防水布や魔導コンロで一定の収入はあったみたいなので、がっつり稼ぐとかではないにせよ、なんとかはなりそうでしたしね。
商会の拡大
商会を立ち上げてすぐの頃に、森で素材の採取中に騎士団魔物討伐部隊のヴォルフと出会います。魔物との戦いでボロボロになっていたところを助けた形になるのですけれど、その後再度街で偶然出会って、ヴォルフが魔導具や魔剣に興味があることから、一緒に魔剣を作ったり、ダリヤの試作した魔導具を試してもらったりするようになります。
ヴォルフが魔物討伐の遠征に向かう際に持たせた5本指靴下や靴の中が蒸れにくくなる乾燥中敷が、ヴォルフのみならず騎士団魔物討伐部隊の中でめちゃくちゃ人気になって、便利そうだから使ってみて感想聞かせてね、と渡していたのに、遠征から帰ってきた魔物討伐部隊ならいきなり大量発注がくるようになるという。
他にも、暑くて鎧着るのが大変というヴォルフの話から着想を得てちょっと涼しい布を開発したり、遠征中美味しいご飯が食べれるようにと携帯コンロを開発したり、割と開発品1つ1つはですね、鉛筆の上に消しゴムをつけましたくらいのレベルのちょっとしたアイディアみたいなのが多いんですよ。でもそれら1つ1つが、使い手のことをほんとよく考えられていて、だからすごく感謝されて、受け入れられるんですよね。
騎士団魔物討伐部隊との繋がりはどんどん強くなっていって、つい先日たった1人で立ち上げたばかりの商会がどんどんその名前を世に知らしめていくことになるのです。
ヴォルフとの関係
ダリヤ、ヴォルフのこと大好きなんですよ。ただダリヤ自身婚約破棄されたばかりでもう恋愛は懲り懲りみたいになっていて、どうにも恋愛に対して消極的になっちゃっていて。
ヴォルフはヴォルフでめちゃくちゃ顔が良すぎて、恋愛ごとに関してまるでいい思い出がない、というかそのあまりにも目立ちすぎるスーパー美形のせいでトラウマしかない感じだから‥‥。なにせ髪の毛入りのラブレターもらったり、どこぞのご令嬢に一服盛られたり、あとは婚約者がヴォルフを好きになったとかで友情破綻したりと、こちらも恋愛に対して忌避感が半端ないのです。
なので出会った当初からそのあたりぶっちゃけた上で、お互いいい友人でいましょうねっていうお付き合いなんですけれど、それをもうずっと後々まで引きずっていて、お互い意識し合っているのに「恋愛感情を抱いちゃ相手に失礼」って感じで素直になれないんですよね。まあお互い気づいてないだけでとっくに惹かれあっていて、しかも周囲にはそのあたり、太陽が東から登るってのと同じくらいに周知の事実で、なんかもうそういうのでもだもだしちゃって仕方ないのです。
そういうのも見てニマニマするのがまた楽しいっちゃあ楽しいんですけれど、さすがにもう付き合っちゃえよ!てかもう完全に2人夫婦じゃん!と声を大にして叫びたいくらい。そんな2人の関係を背中ムズムズしながら見守るのも、この物語の楽しみの1つなのです。
ダリヤが繋ぐたくさんの人の輪
ダリヤがですね、もうすごくいい子なんです。ほんとにもう、自分の開発した魔導具で喜ぶ人の顔が見たいって一心でずっと行動してて、とにかく相手に幸せになって欲しい、もっとみんなが笑顔になって欲しいって立ち回っていく結果、いろんな人がダリヤにお世話になっていくんです。
単に魔導具でいい結果が出たってだけじゃなくて、例えば昔は仲良かったのにとある事件をきっかけに疎遠になってしまった2人を繋いだり、奥さんと仲違いしていたのを間接的にフォローして仲直りさせたり、あとは過去の過ちと家のしがらみのせいで顔も見ることができなかった家族と再会する機会を作ったり。
本人は全く自覚がないのに、人がみんなダリヤを中心に集まっていって大きな輪を作っていく、そんなイメージなんですけど、伝わるでしょうかね。若干自信のなさや自身を卑下する言動にイラッとしないこともないですけれど、それ以上に、いろんな人を笑顔にして、そんの人たちに囲まれながらひたむきに頑張るダリヤの純真でまっすぐな想いを、ついつい読者としても応援したくなってしまうのです。
まとめ
話の大筋としては、主人公のダリヤが持ち前の発想と転生前の知識を駆使して、どんどん画期的な魔導具を作って色んな人から認められるっていう、まあよくある転生モノの物語なんですけれど、とにかくダリヤがいい子なんですよっていうお話でした。
なんかもうふわっとしたお話しかできなかったですけれど、読んでみればなんとなく言いたいことがわかると思います。なのでぜひぜひ、一度手に取ってみて欲しい作品です。
漫画版↓
小説版↓
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