かつて日本最強と言われた陰陽師ハルヨシが異世界転生して無双する話、「最強陰陽師の異世界転生記」。
「この世界の魔法など子どもの遊び」ってなくらいに主人公の陰陽術が強すぎて無双する、けれどもその実力は周囲には秘密。かわいい女の子の奴隷とツンデレ気味の女の子の勇者がいて…。割とどこかで見たような設定ではあるんですが、勇者をめぐる政治の話や、舞台となる帝国と魔族領の関係など、読み込んでいくとなかなか面白かったです。
あと、人によって好き嫌いはあるかもしれませんが、狡猾に生きていくと言っておきながら、結局損してでも人助けしてしまう主人公のぶれぶれっぷりも、私は結構気に入りました。
現在コミックス4巻までしか出ていませんが、小説家になろうではすでにこの倍以上の物語がアップされています。今回はコミックスだけではなく、「小説家になろう」に掲載されている分の物語まで踏まえながら、最強陰陽師の異世界転生記を紹介していきたいと思います。
最強陰陽師の異世界転生記ってどんな話?
上でも述べましたが、主人公はかつて日本最強と言われた陰陽師です。ただし戦う力はあっても、政治の力には敵わなかったというか‥‥。まあ早い話、謀殺されてしまったわけです。
いつの間にか朝廷を敵に回してしまっていて、弟子たちも人質に取られ、なす術なく殺されてしまう‥‥。そんな前世の記憶を取り戻した、貴族の三男セイカ・ランプローグが主人公の物語です。
異世界転生した最強陰陽師の目的は「狡猾に」生きること
記憶を取り戻したセイカは、新しい人生を「狡猾に」生きることを目標に定めます。
前世についてそこまで詳しくは語られてないですが、きっと世のため人のためと思って、惜しみなく自分の陰陽の力を奮っていたのだと思います。弟子もたくさんいて、役に立たない妖の面倒も見て(しかもめちゃくちゃ懐かれて)。
恐らく本人の力が強いというだけでなく、本人の周りにもたくさんの人が集まってきていて、時の権力者たちにとって無視できない勢力になってしまったからなのではないでしょうか。
けれどもそのために、セイカは前世で殺されることになりました。ただ力が強いだけでは生き残れない。自分の力は極力悟られないようにして、権力から遠ざかり、他の力ある人間を利用して、生きていこうとするのです。
それがセイカの言う「狡猾に生きる」です。
信念ブレブレの主人公
魔法学園に入学したセイカは、そこで数百人に一度現れると言う勇者をみつけます。セイカからしてみればそれはラッキーでした。力のあるものを味方につけて、荒事をそのものに任せると言うのが、セイカの目指す「狡猾さ」にとって必要なことだったのです。
ということで、セイカは勇者であるアミュという女性に近づきます。自分のために、利用するために。
ただ、まあ色々あってどんどん仲良くなっていったりするのですけど、なんというか、そこまで仲良くならなくても良くね?というくらい仲良くなります。どちらかと言うと恋愛感情よりかは、冒険者の仲間という感じですけど。
他にも、仲間のために持てるすべての力を使おうとしたり、目の前の問題に対して自分の力で解決しようとしたり‥‥。セイカ本人の言う「狡猾さ」に相反する行動を取ろうとしてしまうのです。
結局お前は何がしたいんだ?
そんな読者の声(ツッコミ)が聞こえてきそうなブレブレ具合に、なんとも呆れてしまいます。
結局は困った人を見捨てられない
信念ブレブレな主人公を紐解いて見ると、まあその性格が、結局のところ優しいのだとわかります。優しいと言うか世話焼きというか‥‥。
前世では、セイカはずいぶん多くの弟子をとっていたようです。しかも弟子全員がセイカと同じく陰陽師になったというわけではなく、あるものは剣術の道に進み、またあるものはまた別の道に進み……。
そんな過去の回想なんかを鑑みるに、おそらくは弟子というよりも、前世のセイカを中心とした、大家族的なコミュニティだったのではないでしょうか。知識の伝承というよりも、あくまでも共同生活者という感じで。
また小さな子どもを拾てきて弟子にした、といった記述もあったことから、もしかしたら困っている子どもなんかを普通に引き取ったりもしていたのかもしれません。
つまるところ、セイカはお人よしなのです。いくら悪い顔をして「利用してやる」くっくっくと笑っていたとしても、素の性格からくる行動までごまかしきれるわけがないのです。
主人公のセイカはめちゃくちゃ強くて、イキっていて、ちょっとイラみすら感じる人もいるかもしれませんが、知れば知るほど、「ああ、こいつはただのお人よしなんだ」と分かってくる、そうするとなんとなくイキった性格もかわいいものと思えてきちゃうのです。
勇者をめぐる政治の話ってどういうこと?
もちろん勇者関連以外の話もまったくないわけではありませんが、基本は、勇者をめぐる政治的なあれこれを中心に話が進んでいきます。
そもそも勇者とは?
セイカが生まれ変わった世界には、人間領と魔族領があるようです。人間と魔族は見た目や価値観なども異なり、両者は古くから敵対し、それでも戦争がなければ細々と交易なども行いながら、この世界に存在し続けてきました。
そして数百年に一度、勇者と魔王はほぼ同時代に生まれ、そのたびに両者の対立が深まり、戦争に発展したりしていました。物語上ではそれを「世界のパワーバランスを整える」と表現されていました。
伝説では、勇者も魔王も非常に強く、単体でも強力な戦力になるとのこと。そんな強者同士がぶつかり合って、何百年に一度定期的に代理戦争的なことをやってもらえると、きっと両種族にとっていいガス抜きになるんでしょうね。
なので英雄と言えば聞こえがいいですが、結局のところ勇者と魔王は、人間と魔族、両種族にとっての生贄みたいなものなのだと思います。
そして世界のパワーバランスを整えるべく生贄ごとき勇者が、セイカの同級生として登場するのです。
勇者の存在は必ずしも歓迎されるわけではない
この勇者ですが、舞台となる帝国の上層部にて、もちろんその誕生を歓迎する声もありますが、逆にその存在を厭う人たちも決して少なくないようです。なぜなら、勇者が誕生したということは、遠くない未来争いが起こる可能性があるからです。
そして何よりもっと重要なことが、勇者の誕生は分かっているのに、魔王の誕生が分かっていないことです。
勇者の力は強大で、それ単体では人間と魔族のパワーバランスをあっという間に壊しかねない存在です。魔族側に魔王がいてこそ、パワーバランスが整えられるのです。
けれども現在、魔王の存在は確認されていないようです。とすれば、人間側が魔族に対して、一方的にアドバンテージを持ってしまうことになるのです。もちろんこれは人間側にとって有利なことではありますが、すべての人間にとって歓迎されることではないでしょう。
特に魔族領と接している土地に住む人間にとっては、いくら敵対しているとはいえ隣人なのです。争いになって人的資源や物資を失ってしまう可能性があるより、勇者も魔王も存在しないで、今まで通り細々と交易が行われている方がよほどいいでしょう。
政治的に微妙なポジションにいる勇者
勇者は必ずしも歓迎される存在ではありません。というかむしろ煙たがられる方が多いかもしれません。
少なくとも魔族側からすれば、勇者の存在は邪魔でしかないでしょう。魔王がいない以上、勇者の存在はただただ脅威でしかありません。
人間側からしても、上述の通りその存在を快く思わない人も、決して少なくはありません。むしろ一部の貴族などは、魔族と結託して、あるいはほかの機会を利用して、その存在を消そうと企んですらいるようです。
そして当然、その勇者の存在を守ろうとする勢力もあります。ただそれだって、あくまでも、勇者の存在を消してしまったところで根本的な解決にはならないと考えているだけだったり。また勇者の存在を消したいと思っている連中に好きにされるのも気に食わない、という感情もあるでしょう。
まあ人によって考えは様々ですが、結局のところそういう様々な思惑に挟まれているということだけは間違いありません。そしてこの先もずっと、そういった思惑に振り回される未来しか見えないのです。
まとめ
最強陰陽師の異世界転生記について、特に主人公セイカの魅力と、勇者とめぐる陰謀について紹介してきました。
主人公セイカはですね、最初勇者を利用しようとしていました。けれども、まあ情が移ったと言えばそれまでですが、そもそも1人の女の子が何も知らずに利用されるだけ利用されて、命を狙われて、そういうの我慢できるような質じゃなかったということです。
口では「利用してやる」と言いつつも、ずっと心配してあげてるんですからね。そういうところが、読んでいて気持ちいいなと思うのでした。
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