2019年に改めてアニメ化されるということで、ここのところ魔術士オーフェンの話題が多くなってきました。
オーフェンはもともと牙の塔という魔術士の養成所のようなところで育ち、大陸最高峰の魔術士でもあり暗殺者でもある師のチャイルドマンの正統な後継者と目されていました。
けれどもオーフェンが15歳のとき、姉のアザリーが非公認の魔術実験の失敗により牙の塔を追われることになり、それを追う形でキリランシェロも牙の塔を出奔します。
その後アザリーを探して5年、あちこちを放浪する中でオーフェンはとある農村に流れ着きます。
人口数百人程度の、格別何があるというわけでもない小さな村で、オーフェンはハルという女性と仲良くなり、結婚の約束を交わすほど親密になったと言われています。
けれども最終的には、オーフェンはその村を去ることを決意します。
やはりオーフェンにとって、アザリーを探すという目的は譲れなかったのです。
後にオーフェンはこの時の決断について、「あそこで残る決断をしても良かったんだ」と振り返っています。
ただし、実際にもしその時、オーフェンが農村に残り、ハルという女性とともに人生を歩む決断をしていたら、オーフェンの世界はどうなっていたでしょうか。
そんなわけで今回は、「もしもオーフェンが農村に残り、トトカンタに行くことも金貸しを始めることもなかったらどうなっていたか?」をテーマに考察してみたいと思います。
キエサルヒマ大陸の魔術士が危機に陥る?もしもオーフェンが旅をしていなかったら
オーフェンが農村でそのまま過ごしていたことを前提に、物語を考察いきたいと思います。
特にアレンハタムでの分岐は歴史的に見ても非常に重要なポイントです。
我が呼び声に応えよ獣
オーフェンの知らないところで怪物と化したアザリーとチャイルドマンは戦っており、トトカンタに来た時にはすでにその心と体は入れ替わっていました。
そしてオーフェンがいてもいなくても、チャイルドマンの体を得たアザリーは原作と同様チャイルドマンを殺害、こっそりと自分の本来の姿を取り戻してトトカンタを去っていたと思います。
当然のことですが、マジクは魔術に触れる機会はないですのでおそらくそのまま宿屋を継ぐものと思われますし、クリーオウはそのまま実家でぬくぬくと暮らしていたことでしょう。
我が命にしたがえ機械
大陸のすべての魔術師の抹殺を主命とする殺人人形!
ここは非常に問題です。
チャイルドマンの死後、アレンハタムの地下では天人種族の殺人人形が目を覚まし、シスター・イスターシバの主命である「キエサルヒマに存在するすべての魔術師を抹殺すること」の遂行のため動き出します。
原作ではたまたまオーフェンがアレンハタムに立ち寄っており、またさらに偶然なことにアレンハタムの地下遺跡で殺人人形に襲われた生き残りステファニーと知り合いだった縁でその殺人人形と相対することとなり、苦戦しながらも見事殺人人形を打ち倒します。
また遺跡には同性能の殺人人形が他に千体近くいて、1体が倒されると次の1体が、また1体倒されると次の1体が目を覚ますようにプログラムされていましたが、オーフェンと戦った殺人人形がうっかり口を滑らせてしまったため、次の1体が目を覚ます前にオーフェンによって全ての殺人人形が壊されることとなりました。
倒しても倒しても現れる暗殺者が大陸中の魔術士を震撼させる
オーフェンがアレンハタムを訪れないとなると、おそらく殺人人形はステファニーを殺した後、魔術士を殺すために大陸中を回ることでしょう。
いくら腕が落ちていたとはいえ牙の塔の首席であった、チャイルドマンの秘蔵っ子とも言われたオーフェンがあれだけ苦戦した敵です。
おそらく並みの魔術士ではまるで太刀打ちできないでしょう。
牙の塔でも教室長クラスとか…あるいは十三使徒でもナンバーズクラスでやっとではないでしょうか。
となると大陸中の各都市や街に散る魔術士は一掃されてしまいそうですし、防衛のために生き残った魔術士たちは牙の塔に集まる(戻ってくる)ことになるかと思います。
牙の塔の魔術士が力をつけることを恐る王都がそれを放置しておくなど考えられませんし、キムラック教会もそれに乗じて何かしら行動を活発化させてきそうな気がします。
もちろん、最終的にはアレンハタムの地下という拠点は突き止められて、大規模な戦闘の末殺人人形は駆逐されるでしょう。
チャイルドマンからネットワークを受け継いだフォルテならアレンハタムを突き止めることは可能でしょうし、牙の塔にもそれだけの組織力はあるでしょう。
問題はその後ですね。
牙の塔による軍隊の行使は、王都や教会に対して政治的に不利な要素を与えることになります。
下手をすれば魔術士狩りの再来すら招きかねないと考えられるのです。
アザリーやフォルテが死んでしまう?もしもオーフェンが旅に出ていなかったら
我が胸で眠れ亡霊
オーフェンがいてもいなくても、ほとんど変わりはなかったことと思います。
もともとヒリエッタは牙の塔を出奔したキリランシェロを探していたそうですから、むしろヒリエッタがオーフェンを探してハルとともに暮らす農村に現れてしまうのではないか?ということの方が心配です。
我が森に集え狼
おそらくフェンリルの森の信徒たちは皆殺しに遭っていたでしょう。
チャイルドマンの後継者であるオーフェンを見て、フェンリルたちが攻撃をやめたことが明白だからです。
今こうして考えると、ドラゴン種族にも顔が利くチャイルドマンってすごいですね。
我が過去を消せ暗殺者・我が塔に来れ後継者
あまり趨勢に変化はないでしょうが、フォルテのその後が怪しくなります。
アザリーはオーフェンがいてもいなくても関係なく牙の塔のエルダーを襲い、ブラウニングの世界書を突き止め、あっさりとその書を手にしたことと思います。
ただしその手法については、殺人人形をキリランシェロの姿に変えて襲わせるといったまどろこしい手を使うことはなかったでしょう。
タフレムでアザリーが使った殺人人形は、アレンハタムで殺人人形と戦うオーフェンを監視していたことでその使い方に気づいたと言われていますので。
そして原作ではブラウニングの世界書をマジクが拾ってしまうことでウォール・カーレンとその生徒たちが暴走しティッシを襲ったりしていましたので、オーフェンがいない場合、下手をすればそういった等での表立った抗争もなく、もっと水面下での攻防のみがひたすら続いていたように思います。
そうなると、もしかしたらフォルテは謀殺されていた可能性が浮上してきますね。
我が遺志を伝えよ魔王
メッチェンが死にます。
我が聖都を塗らせ血涙
地人兄弟のボルカンとドーチンがいないので、キムラック領に入り込んだアザリーがちょっと苦労するくらいでしょうか。
それでもパシリがいなくなったなぁ、程度ですが。
我が神に弓ひけ背約者(上・下)
単身乗り込むアザリーにとっては運命の場所となるキムラック
正直アザリーの旅がここで終わってしまうのではないかと思います。
原作では最終決戦において、教主ラモニックが≪詩聖の間≫の地底湖に落ちてしまったことに加え、クオ v.s. オーフェン、アザリー、クリーオウ(&レキ)、マジク、サルア、メッチェンという圧倒的に有利な状況での戦いでした。
もしオーフェンがいなかった場合、クリーオウ(&レキ)とマジクがいないことは当然ですが、そのほかにサルアとカーロッタが敵に周り、ネイムも同様にアザリーの前に立ちはだかるでしょう。
クオ、カーロッタ、サルア、ネイム、そして教主ラモニック。
このメンツにアザリがー果たしてどこまで対抗できるか…ということになります。
当然のことながら、馬鹿正直に真正面から戦うならば、まず勝ち目はないでしょう。
アザリーが生き残るには
ただアザリーが神官兵に変装することで容易に詩聖のままでたどり着くことができたことを考えると、侵入すること自体そこまで難しいことではないように感じます。
なのでうまく潜入しながら状況(具体的には死の教師が何人常駐しているかとか)を探り、その上で死の教師を1人ずつ暗殺していくという方法になるかと思います。
また死の教師が暗殺されたとなればラモニックもネットワークを使い犯人を特定しようとするでしょうから、なるべくことが公にならないうちにことを進める必要があります。
ただし。
事前情報がまったくない中、どこまでアザリーがそういうところまで注意を払って進めることができるか、そこについては疑問が残ります。
以上を考えますと、アザリーがキムラックに侵入して生きて帰れる見込みは低く、やはりアザリーの旅はそこで終わってしまう可能性は非常に高いように思います。
その後の物語に影響は?
原作ではクオが死の間際にオーリオウルを傷つけたことで、女神が結界の隙間から侵入、オーリオウルを助けるためにアザリーは精神体となって結界の外に出ていきます。
またそれによってド今度はドラゴン種族の聖域の真上に結界の綻びが出現し、そこから女神が侵入を試みようとすることになります。
そしてドラゴン種族は改めて結界の不備を認識し、世界の結界を縮める計画に拍車がかかるようになるのです。
以上から考えると、アザリーがキムラックに侵入して殺されてしまうか、脱出したのちキムラックを諦めればそれ以上の大陸に大きな動きはなくなると言えます。
ただもし万が一アザリーがクオを追い詰め、それによってクオがオーリオウルを傷つけようとすることがあった場合。
それに伴って現出した女神を追い出すために、アザリーが大陸外に出た場合。
オーフェンがいないことでどんなことが起こるのか正直想像もつきません。
その辺りについては、また機会があったら書いていきたいと思います。