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新型コロナウイルスの治療薬として有望とされるアビガンはなぜ「有効性が不明確」なのか?

この記事は約11分で読めます。

2020年12月21日、厚生労働省の医薬品を承認する部会(薬事食品衛生審議会)が開催れました。注目の論点といえばやはり、COVID-19(以下新型コロナウイルス感染症)の治療薬アビガンについてでしょう。(※アビガン:一般名ファビピラビル、富士フイルム富山化学)

この部会では、新型コロナウイルス感染症に対してアビガンが、「現時点で有効性が明確に判断できない」として、継続審議となりました。はたしてそれはどういうことなのでしょうか。

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アビガンの「継続審議」とは?

医薬品における「継続審議」とは、次の会議まで承認はお預け、ということです。アビガンは新型コロナウイルス感染症に対するお薬として、厚生労働省から承認を得ることができなかったわけです。

医薬品の「承認」とは?

通常医薬品は、厚生労働省から「この薬はこの病気に対して使っていいですよ」と承認をもらってからでなければ使うことができません。承認を得ることができないと、保険請求ができないからです。

保険請求ができないと、健康保険を使って薬を使うことができません。通常病院や調剤薬局で使われる医薬品は、健康保険によって70〜90%割引された状態で請求されるわけですが、保険請求ができず健康保険が使えないと、薬剤費を100%請求されてしまうのです。

承認を受けていない薬剤は、薬剤費が高額になってしまうだけではありません。副作用があって重篤な健康被害があった際に製薬会社から補償を受けることができなくなってしまいますし、何よりその薬剤をつかった治療に関わる全ての医療費が、保険による割引を受けられなくなってしまうのです。

つまり、通常医薬品は、厚生労働省から承認を得なければ使うことができないわけですね。

なぜアビガンは使うことができるのか?

けれどもアビガンは今や日本中多くの医療機関で使用されています。製造販売元の富士フイルム富山化学によると、現在1,000近くの医療機関で、既に1万人を超える患者さんにアビガンが投与されているようです。

これは、厚生労働省が「医療機関が研究班による観察研究に参加して、患者さんの同意があり、医師の判断で使用が必要になった場合に限り使用を可能とする」と定めているからです。

現在アビガンは効果があるかもしれないと言われているけれど、まだ確実にそうだとはいえない状態です。だから、臨床研究に参加してくれるなら使ってもいいよ、と言うことですね。

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抗インフルエンザ薬としてのアビガン

アビガンはもともとインフルエンザの薬剤です。ただタミフルやリレンザ、ゾフルーザなどは聞いたことがあるかもしれませんが、アビガンはあまり聞いたことがないかもしれません。

なぜかと言うと、アビガンは抗インフルエンザ薬としても、他の抗インフルエンザ薬が効かない場合のみしか使うことができないと定められているからです。

アビガンの副作用

アビガンの添付文書(医薬品の説明書のようなもの)を読んでみると、以下のような記載があります。

動物実験において、本剤は初期胚の致死及び催奇形性が確認されていることから、妊婦又は妊娠している可能性のある婦人には投与しないこと(「禁忌」及び「妊婦・産婦・授乳婦等への投与」の項参照)。
以下略。

アビガン錠200mg添付文書、警告より

原文はもっと長々と記載されていますね。簡単に言うと、その薬を飲むと生まれてくる赤ちゃんに重大な障害が発生する可能性がある、ということです。

他にも副作用は色々と記載されていますが、警告の欄にこれだけびっしりと「妊娠に気をつけろ!」と書かれている薬剤はそう多くはないと思います。

アビガンの抗インフルエンザ薬としての臨床試験

アビガンの添付文書を見ると、

承認用法及び用量における本剤の有効性及び安全性が検討された臨床試験は実施されていない。承認用法及び用量は、インフルエンザウイルス感染症患者を対象としたプラセボ対照第I/II相試験成績及び国内外薬物動態データに基づき推定。

アビガン錠200mg添付文書、警告より

と記載があります。

通常薬剤の承認のフローとして、有効性及び安全性を検討する第3相臨床試験によって、十分な有効性安全性が確認されることが必須です。ですがこの薬剤については、そのフローがなされていないのですね。

臨床試験を行う前の段階から催奇形性(胎児への重篤な障害)が分かっていたから、倫理的な問題で、大規模な臨床試験を組むことができなかったのでしょうか(この辺よく分かりませんが‥‥)。

ともかく、普通の医療用医薬品とはちょっと違います。「既存のインフルエンザの薬が聞かない場合に、限定的に使ってもいい」という極めて特殊な薬剤なのです。

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アビガンの「新型コロナ感染症の薬剤」としての臨床試験

製造販売元の富士フイルム富山化学によって、アビガンの新型コロナ感染症に対する効果を検証した第3相臨床試験(登録番号:JapicCTI-205238)が行われています。

対象
PCR検査で新型コロナウイルス(以下SARS-CoV-2)が陽性の患者で、かつ肺炎の症状(胸部画像で肺病変がある/37.5℃以上の発熱など)があること。

方法
通常の肺炎の治療をするグループと、通常の肺炎の治療にアビガンを加えるグループに分けて、治療開始から28日間アビガンの有効性や安全性を評価する。

主要評価項目
体温、酸素飽和度、胸部画像所見の軽快、SARS-CoV-2が陰性化するまでの期間。
最終的な参加者:156名(当初96名の試験だったのですが、その後参加者を増やしたようです)。

結果
SARS-CoV-2陰性化までの期間の中央値が、アビガンを使用したグループでは11.9日、アビガンを使用しなかったグループでは14.7日。アビガンによって有意にSARS-CoV-2陰性化までの期間が短縮されたことが認められた。

アビガンの臨床試験の問題点

上記の結果を見ると、「アビガンを投与することによって新型コロナウイルス感染症が早く治る」ように見えます。ただし、厚生労働省の薬事食品衛生委員会では、臨床試験のデザインについて気になる点があったようです。

単盲検比較試験

この試験は「単盲検試験」とのことです。患者はアビガンを投与されているかどうか知らされていないけれど、医師はそれを知っている試験、と言うことです。

薬事食品衛生委員会でアビガンの承認が見送りになった理由について、単盲検であったことが議論されたからと言われています。

単盲検試験は信頼性が低いと言われています。医師が患者の状態を評価するにあたり、バイアス(先入観)が入ってしまうと言われるからです。

「この患者はアビガンが投与されているから、なんとなく効いてるんじゃないか?」といった希望的観測が評価に影響を与えてしまう可能性があるんですね。

特にこの試験の主要評価項目には「画像所見」が含まれています。レントゲン写真を見て医師が「これは回復している」「まだ回復していない」と評価するわけです。そしてこういった画像所見は特にバイアス(先入観)の影響を受けやすいと言われています。

それに対して、信頼性の高い試験として「二重盲検試験」があります。これは単盲検試験とは違い、患者も医師も、誰がどんな薬を処方されているのか分からない状態で試験されます。そうすることで、医師によるバイアス(先入観)なしで評価できるからです。

臨床試験における有効性について

この臨床試験はあくまでも「非重篤患者」を対象に組まれた試験です。患者の適格基準を見てみても、とりあえず陽性で肺炎ならエントリーできるような試験設計になっているようです。

1 年齢:20~74歳 
2 性別:不問 
3 外来・入院:入院 
4 RT-PCR検査でSARS-CoV-2陽性となった患者 
5 胸部画像で肺病変を認める患者 
6 37.5°C以上の発熱を認める患者 
7 治験薬投与開始前の妊娠検査で陰性を確認した患者 
8 その他

https://www.clinicaltrials.jp/cti-user/trial/ShowDirect.jsp?japicId=JapicCTI-205238

で、陽性が陰性になるまで期間が3日縮んだ、という結果なのです。

結果
SARS-CoV-2陰性化までの期間の中央値が、アビガンを使用したグループでは11.9日、アビガンを使用しなかったグループでは14.7日。アビガンによって有意にSARS-CoV-2陰性化までの期間が短縮されたことが認められた。

軽症者を対象にして、治るまでの期間が3日短縮できたことが、果たして臨床的に有意義なのかどうか、悩ましいところではないでしょうか。

死亡率や重症化率は?

論文などが発表されているわけでもなさそうなので(見つけられてないだけかもしれませんが‥‥)はっきりとしてないですが、死亡率や重症化率についてもよく分かりません。

もしかしたら試験に参加されていた156名全員重症化しなかったのでしょうか。それとも重症化したり死亡した人はカウントしなかったのでしょうか。

(※主要評価項目が「症状が緩和されるまでの期間」であるなら、結果に重症化した人がカウントされないのは決しておかしいことではないと思います。ただ重症化したしないの人数などがはっきりしてないでその薬剤を評価するのは早計かなとは思いますが‥‥)

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なぜ新型コロナウイルスの治療薬として有望とされるアビガンは「有効性が不明確」なのか?のまとめ

12月下旬の薬事食品衛生委員会にて、新型コロナウイルス感染症に対してアビガンが、「現時点で有効性が明確に判断できない」として、継続審議となりました。

提出された臨床試験の結果からは、アビガンが新型コロナウイルス感染症に対して本当に有効なのか、判断が難しいとされたようです我々一般人にはどうしても詳細の情報が降りて来ず、その真偽については調べようもありません。

いずれは試験の結果が論文として発表されるでしょうし、そうすれば試験の詳細やデータも閲覧できるようになるでしょう。また海外でも第3相臨床試験が実施中らしいので、そちらの報告もぜひ読み込む必要がありそうです。

いずれにしても、こういった試験の詳細などは頑張って調べないとなかなか見つけることができません。もしアビガンに限らず、新型コロナ感染症について知りたいと思ったならば、ニュースのタイトルやSNSの情報だけで判断するのではなく、是非とも詳細まで踏み込んで調べてもらうと良いかと思います。

最後に

アビガンについて否定的な意見をつらつらと述べていましたが、決してアビガンそのものを否定するものではないことをここに書き加えておきます。今後の審査によっては承認を取得することも大いにありますし、何よりこれまで、「アビガンによって助かった」という人が実際に多く聞かれるのですから。

そして新型コロナ感染症という未曾有の事態の中、多くの医療従事者や研究者が必死になって治療法の確立に取り組んでいます。その成果は徐々に現れつつあります。そんな関係者の努力に最大限の感謝と敬意を。いつもありがとうございます。

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