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健康

新型コロナのワクチンは有効なのか?安全性は?論文を読んでみよう

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新型コロナウイルス感染症のワクチンができ始めているようですね。いろんな情報が飛び交っていて、何が真実なのか見極めるのも大変です。

そんな中、昨年12月上旬、ファイザー社が開発している新型コロナウイルスに対するワクチンについての医学論文が発表されていました。英文なので読むのもなかなか大変ですが、せっかくなのでこの場で解説していきたいと思います。

参考:N Engl J Med 2020; 383:2603-2615N Engl J Med 2020; 383:2677-2678

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論文の信頼性は?

医学論文が発表された、といえば聞こえがいいですが、それだけだと果たしてどれだけ信頼に足るのか難しいところでしょう。というのも、医学論文というのは全てがすべて信頼できるようなものではないからです。

医学論文は掲載される雑誌が重要

医学論文が掲載される雑誌にも非常に多くの種類があります。有名で信頼性の高いものから、若干眉唾なものまで‥‥。では今回新型コロナウイルス感染症のワクチンの医学論文が掲載された雑誌はどうなのでしょう。

The New England JOURNAL of MEDICINE:ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディスン

今回新型コロナウイルス感染症のワクチンの医学論文が掲載されたのは、The New England JOURNAL of MEDICINE(以下NEJM)という雑誌です。この雑誌は200年以上の歴史を持っていて、世界でもっとも権威ある週刊総合医学雑誌の1つと言われています。

日本国内においてはほとんどの医学関連大学、医局で購読されていて、医学に触れたことがある職業の人なら知らない人はいないと言われる程です。

ちなみに、年間およそ3,500件以上の論文が投稿されていて、そのうち掲載が認められるのは5〜6%程度なのだとか。しっかりとした根拠が示されていて、信頼性に足る論文でなければ掲載されません。逆にいうと、この雑誌に掲載されている情報がそれだけ信頼性に足る情報である、とも言えるのです。

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新型コロナウイルス感染症のワクチンは有効か?

掲載された医学論文が変なものではないことが、ある程度は担保されたといってもいいでしょう。では実際に、その論文にはどんなことが書かれていたのでしょうか。

ワクチンの効果を見るために、臨床試験が行われていますが、その内容について紹介していきます。

臨床試験の概要

44,820人の被験者を、ワクチンを打つグループプラセボ(ワクチンと見せかけて実はただの塩水)を打つグループと半々に分けて、その後その2つのグループでそれぞれ何人が新型コロナウイルス感染症にかかってしまうかを見ています(試験参加者は、自分がワクチンを打ったのか、プラセボを打ったのかは知らされていません)。

参加した国は米国、アルゼンチン、ブラジル、南アフリカ、ドイツ、トルコで、日本は含まれていません。

なお、この試験では、ワクチンまたはプラセボは2回打つことが定められています。1回目を打った後21日後にもう1度打つ、というスケジュールです。

評価については、2回目のワクチンもしくはプラセボを打ってから7日目以降の、新型コロナウイルス感染症の症状発現率を検討しています。

確かに、ワクチン打って1日目から評価してしまっては、ワクチンを打つ以前に新型コロナウイルスに感染している人を振り分けられないですからね(新型コロナウイルスの潜伏期間は1〜14日ほど、感染から8症までの期間は平均で5〜6日程度と言われています)。

結果‥‥95%の有効性

新型コロナウイルス感染症の症状が現れた人の数は、ワクチンを打ったグループで8人プラセボを打ったグループでは162人だったそうです。単純に、162-8=154。もしワクチンを打っていたら162人中154人は新型コロナウイルス感染症の症状が出なかっただろう、という計算になります(154÷162×100≒95.06)。

N Engl J Med 2020; 383:2603-2615

重症化を抑制する効果

初回投与後に新型コロナウイルス感染症の「重症」と判断された人の数は、ワクチンを打ったグループで1人に対して、プラセボを打ったグループでは9人でした。

なお、重症と判断されるポイントは呼吸不全ショック(臓器不全を起こすほどの低血圧)、重大な急性腎機能障害肝機能障害神経機能障害集中治療室への入室、そしてです(FDAによる定義)。

重症のコロナ患者を減少させるという意味合いもあるのかもしれません。けれども論文中では、むしろ数が少なすぎて、これだけではなんとも言えないといったことが書かれています。

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ワクチンの副反応

ワクチンを語る上で外せないのが、ワクチンによる副反応です。このワクチンではどのような有害事象があったのか確認してみます。

局所反応

注射を打ったところが痛くなったり、腫れたりといった副反応は、ワクチンを打ったグループの方が多かったようです。痛みについての報告が1番多く、1%の人が激しい痛みを訴えたとされています。ただ多くの人は軽度から中等度の重症度で、1〜2日以内に解消したと報告されています。

全身性の副反応

ワクチンを打ったグループにおいて、倦怠感頭痛を訴える人が多かったうです。およそ半数の人がその症状を訴えたとされています(ちなみにプラセボのグループでは2割程度)。

また発熱(38度以上)の副反応も見られていました。55歳以下の人で16%、それ以上の年齢の人で11%だそうです。ちなみにワクチン、プラセボ両グループにおいて、40度以上の発熱を訴えた人がそれぞれ2人ずついました。

また解熱鎮痛剤を飲んだ割合も、ワクチンを打ったグループの方が多かったようです。つまり、それだけ体が痛かったり、熱が出たりしていたと言うことなのでしょうね。

関連する有害事象

ワクチン、またはプラセボを打ったことに関連する有害事象として、ワクチンのグループでは21%プラセボのグループで5%と報告されました。

ワクチンを打ったグループで重篤なものとしては、ワクチンを打った肩の損傷右脇のリンパ節腫脹発作性寝室性不整脈右足の知覚異常が報告されていて、2人が死亡しています。

ちなみにプラセボのグループでは4人が死亡しています(原因不明、脳卒中、心筋梗塞)。ただし、両グループともワクチンおよびプラセボに関連する死亡はないと考えられています。

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試験の問題点

この試験にはいくつかの問題点があると指摘されています。その問題点について紹介します。

発症のカウントが患者の判断に依存している

この試験では、「新型コロナウイルス感染症の症状が出た」と患者が考え、それを報告することで、「発症した」とカウントされるのです。もし新型コロナウイルス感染症の症状があったにもかかわらず、患者がそれを自覚していなければ(あるいは報告を怠れば)「新型コロナウイルス感染症に感染した」とはなりません。

そしてワクチンを打ったグループの人は、注射を打った場所が腫れるなど局所反応が起こるため、「自分はワクチンを打ったのだ」と容易に分かってしまいます。なので多少症状があったとしても、それを「新型コロナウイルスのせいだ」とは思わない傾向があったというのです。

だとすると、ワクチンを打ったグループの新型コロナウイルス感染症発症数「8人」が、本当はもっと多かった可能性が出てきます。

無症候性感染の予防については検討されていない

新型コロナウイルス感染症発症のカウントを患者の訴えに依存している以上、無症候性の感染についてはまったく考慮されていないことになります。あくまでも「症状が出たかどうか」のみに焦点が当てられているのです。

ただこのあたりについては後ほど改めて報告されると言われていますので、期待しつつ待っていたいと思います。

長期の有害事象までは追えてない

当然ですが、この試験では数年先の有害事象までは検討されていません。この先数年、あるいは数十年と経ってから未知な有害事象が報告されないとも限らないのです。

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新型コロナのワクチンは有効なのか?のまとめ

昨年末に発表された、ファイザー社の新型コロナウイルスのワクチンに関する論文を紹介してきました。

まだまだ開発されたばかりでも問題もありますが、今後の全世界の人類が新型コロナウイルス感染症と戦っていくための有用な武器の1つとして、期待していいのではないかと思います。

ワクチンが普及して、日本の多くの人が接種することができれば、新型コロナウイルス感染症の症状を訴える人が減ると言うことです。たとえ無症候性感染が蔓延したとしても、それが入院や死亡に繋がらないのであれば、もはやそれはただの風邪となるのでしょうから。

もちろん過信も油断も禁物ですが、少しでもこの状況がよくなるよう、是非とも早期の普及をお願いしたいものです。

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