「この世界は不完全すぎる」は、完全体感型VRゲーム「キングス・シーカー・オンライン」のデバッガーとして雇われた人たちが、ゲームの世界からログアウトできなくなってしまい、そのまま2年近くゲーム内で過ごすことになってしまったお話です。
一生懸命デバッグを続けたり、ひたすらゲームクリアに勤しむ人はもはや少数派で、大半はすでに帰還を諦めてゲームの世界で生きることを決めてしまったり、中にはNPCをいじめる人や、果てはプレイヤー、デバッガーとして雇われた人を襲う人まで出てくる始末です。
ゲーム自体も、すでに通しでプレイできると謳われていたにも関わらず、実際はまだ描画のタイミングが追いつかなかったり、フラグ管理ができていなかったり、まともにプレイできないフィールドが残っている有様です。
ただ、どうしてログアウトできないのか、どうしてキングス・シーカー・オンラインが未完成なままなのか、キングス・シーカー・オンラインの管理者は何をしているのか、これについては全く分かっていません。
今回は、「この世界は不完全すぎる」のキングス・シーカー・オンラインがなぜそんな状況なのか、ちょっと考えてみたいと思います。
ケース１．ゲーム「キングス・シーカー・オンライン」の不具合
まず一つ目は、キングス・シーカー・オンラインのプログラムが不具合を起こしている可能性です。「この世界は不完全すぎる」の舞台となるゲーム「キングス・シーカー・オンライン」に、何かしら不具合が生じて、キングス・シーカー・オンラインからログアウトすることができなくなった、ということですね。
キングス・シーカー・オンラインに入って2年も放置されているわけですので、もはや開発者にはどうにもすることができなくなってしまっている可能性はあります。さすがに、雇ったデバッガーが皆2年もキングス・シーカー・オンラインから出てこなかったら、開発者だってやばいと思って、どうにかキングス・シーカー・オンラインから出れるようにするでしょうし。それがなされないということは、開発者でもどうにもならない事態が、現実で起こっているということでしょう。
ケース２．開発者が犯罪者
開発者、開発グループが意図的に、デバッガーをゲームから出てこれないようにしている可能性です。
これも実は、考えられる事態なのかなと思います。なぜなら、デバッガーがバグを報告すれば、ちゃんとそのバグが修正されるからです。それは、キングス・シーカー・オンラインの開発者が、ゲームをちゃんと管理しているということになりますよね。
ただそれだと、どうやって2年もデバッガーを拘束できているのかが疑問になります。デバッガーの中には家族がいる人もいましたし、学生もいました。2年も家に帰らない、学校にも行ってないとなれば、間違いなく警察沙汰です。キングス・シーカー・オンラインは、卵のようなカプセルに入ってプレイするゲームのようでしたから、ログアウトできないデバッガーたちをどこか人目のつかない場所に移動させるというのもかなり難しいでしょう。
ケース３．実は現実ではそれほど時間が経ってない
デバッガーとしてキングス・シーカー・オンラインに入った人の一人が、「時間感覚が変、おかしくなりそう」と言っていました。もしかしたら、キングス・シーカー・オンラインの中では2年経っていても、現実では一日も経っていない可能性すらあるかなと思うのです。
ログアウトできていない人たちは、キングス・シーカー・オンラインの中では食事をしていますけれど、現実では何も食べていないはずです。もし2年も食べずにいるとしたら、その人は現実ではとっくに死んでいてもおかしくありません。
もちろん、現実ではすでに大ごとになっていて、専属の医療チームなんかが点滴とかしながら何とかデバッガーたちの命を繋いでいるという可能性もありますけれど。
それよりかは、現実ではまだ一日も経っておらず、そのため、何も食べなくても問題ない状況であるほうがあり得るのではないかなと思います。
それならば、デバッガーがバグを報告すればちゃんとバグが修正される、キングス・シーカー・オンラインがちゃんと開発者に管理されている理由にもなるのかなと思うのです。
ケース４．現実ではすでにデバッガーたちはログアウトしている
「この世界は不完全すぎる」の中にいる人たちは、デバッガーの人格をコピーしたNPCなのではないかという可能性です。そしてデバッガーたちは、とうの昔に、キングス・シーカー・オンラインをログアウトしているというわけです。
これだと、キングス・シーカー・オンラインの中にいる人がログアウトできなかろうが、ゲーム内で命を落としていようが、全く問題はなくなりますよね。なんならキングス・シーカー・オンラインの世界すらも、コピーされた世界の一つということすらあり得ます。
たくさんのデバッガーの人格をコピーして、プレイさせることで、さまざまな人がプレイした際に取りうる行動と、それにより生じる問題を、ノーリスクで検討することができます。単なるデバッグというだけではなく、キングス・シーカー・オンラインに潜むリスクを炙り出すことができるというわけです。
画期的ですけれど、コピーされた人格たちは本当に可哀想ということになっちゃいますね。
謎の男について
ログアウト云々、現実世界云々の話をしようとしたときに、絶対に外せないのが、「この世界は不完全すぎる」8巻に登場した謎の人物です。フードをかぶっていて、顔はよく見えませんでしたので、年齢や性別なんかは分かりません。
分かっていることは、
・ハガのデバッグストーンを使用していた。
・キングス・シーカー・オンラインからログアウトしたようなエフェクトで突如消えた。
・去り際に「うーんなるほど」「これはまた厄介だな」と言っていたこと。
この3点のみです。
まず、通常、他人のデバッグストーンを使用することはできませんし、当然誰もこのキングス・シーカー・オンラインの世界からログアウトすることもできません。もしこれが可能なら、それはもう、キングス・シーカー・オンラインの開発者、あるいはゲームマスター以外にはいないのではないかと思います。
では果たして、その謎の男が言っていた「厄介」という言葉。何が厄介なのでしょうか。ログアウトできないことが厄介であるなら、それはもっともっと深刻になってもいいと思うんですよね。
その人物が登場したとき、ちょうどそのエリアでは、デバッガーたちが自らの意識を絶ち、NPCになるという事態が起きていました。これは確かに異常事態ですから、「厄介」なことではあると思うのですけれど、それにしたって「これはまた厄介だな」で済ませられる問題でもないように思います。
ただ、ケース３、現実ではそれほど時間が経っていない、かつデバッガーがキングス・シーカー・オンラインの中で死んだり意識をなくしたりしても、現実世界には一切影響はない、ということであれば、まあ「これはまた厄介だな」程度でも何ら問題はないでしょう。
ケース４の場合であれば、ただ単にデバッグ作業が遅れている、もしくはキングス・シーカー・オンラインの世界の一つがちょっと調子悪い、程度で済んでしまいます。
謎の男はハガ？
もし仮にケース４であった場合、謎の男はハガなんじゃないかなと思ったりもします。なにせハガのデバッグストーンを使っていたわけですから。
現在キングス・シーカー・オンラインにいるハガは、もともとのハガの人格をコピーされたもので、現実のハガが再度アバターを作ってキングス・シーカー・オンラインにログインしてきた。そしてコピーされたハガ、自分を本物のハガだと思い込んでいるNPCを見て、「うーんなるほど」となったのではないでしょうか。本来ならNPCとして存在するはずなのに、なぜか自分がプレイヤーと思い込んでいる、という不具合。これが「厄介」なのかな、と思うのです。
キングス・シーカー・オンラインは、プレイヤーが、「シーカー」という、王が極秘で編成した精鋭調査隊になって、各国の問題を解決していく、という設定です。もしかしたらゲームの開発者は、プレイヤー以外にも、NPCとして「シーカー」を作りたかったのではないでしょうか。そのためにデバッガーたちの人格をコピーして、ゲーム内にわざと置いている、という。
ただ、だとしたら、ハガたちの物語はどこにたどり着くのでしょうね。なんだか終わりのない、そして救いのない話になってきてしまうような気がします。
まとめ
「この世界は不完全すぎる」からログアウトできないのはどうしてか、について考察してみました。もしかしら、キングス・シーカー・オンラインの中にいるデバッガーたちは、人格をコピーされたNPCで、本人たちはすでにログアウトしているのではないか、というお話です。
もしそうだとして、デバッガーたちがすでに現実世界に戻っていて、キングス・シーカー・オンラインの中の状況を見れているのだとしたら、みんなそれぞれめちゃくちゃ恥ずかしいでしょうねえ。ハガとか、まじめに働いている人はまだいいですよ。NPC狩りとか、プレイヤー狩りとかしているコピーの本物なんか、正直ほかの人と顔合わせられないでしょうねえ。
ともかく。「この世界は不完全すぎる」を読んでいる限り、正直、まだまだその辺の謎の解明には至らないような気がしますので、ゆっくり待っていたいと思います。
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