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おとうさんのひとりごと

ADHDにカルニチンが有効なのか?カルニチン欠乏症診の断治療指針(日本小児科学会)を受けて調べてみた

この記事は約14分で読めます。

カルニチンと言うと、ここ数年ダイエットサプリとしてその名をはせてきており、今やドラッグストアやサプリの通販でみない日はないほどではないでしょうか。そんなカルニチンですが、ADHDに効く可能性があると言う情報を入手しました。

ソースは、日本小児科学会より発表されているカルニチン欠乏症の診断治療指針2018です。そこで今回は、カルニチン欠乏症の診断治療指針2018においてADHDに対する治療についてどのように記載されているのか、その真偽はいかほどのものか、引用されている文献も合わせて紹介していきます。

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そもそもカルニチンとは一体なんなのか?

ダイエットにおけるカルニチン

カルニチンとは、必須アミノ酸のリジンとメチオニンから生合成される化合物で、その99%が骨格筋や心筋に存在すると言われています。そしてその役割で非常によく知られているのが、ミトコンドリアにおける脂質の代謝を助けると言うものです。

出典:http://www.ils.co.jp/

おそらくダイエット目的で使用される理由はここにあるとされています。カルニチンが不足しているとうまく脂質を代謝できない、だからカルニチンを積極的に摂取して、効率よく脂質を代謝させエネルギーに変換させようということです。

事実カルニチンはそのほとんどが食事から摂取する必要があるそうなのですが、そのほとんどが羊肉、牛肉といった肉類、そして貝やエビなどの魚介類に多く含まれているとされています。ダイエットにあたって十分な肉類の摂取が必要であることはすでに多くのダイエッターが知るところではあるでしょうが、それでも減量中に肉類を摂ることについては抵抗がないわけでもありません。

そこでより効率よくカルニチンを摂るために、サプリメントを使うと言うことなのでしょう。

カルニチン欠乏症の診断治療指針2018におけるADHDに関する記載

カルニチン欠乏症の診断治療指針2018のP38に以下のように記載があります。

エビデンスとしては低いが、注意欠陥性多動性障害(ADHD)、自閉スペクトラム症などいわゆる発達障害は、長鎖脂肪酸が低値であるといわれており、ADHDにカルニチンあるいは、長鎖脂肪酸を与えることによって症状が軽快したという報告もある。

出典:日本小児科学会 カルニチン欠乏症の診断治療指針2018

ADHDはいわゆる脳の機能障害ですが、そして脳を含めた中枢神経の成熟には長鎖脂肪酸が必須と言われています。中枢神経のエネルギー源はあくまでも糖なのですが、その成長には長鎖脂肪酸が必要ということです。

そしてその長鎖脂肪酸を中枢神経細胞のミトコンドリア内に運ぶのにカルニチンが必要になるのです。そもそもカルニチンと言う物質は一部脳でも作られると言われておりますが、このことからも脳神経において重要な物質であることが示されています。

脳神経系で言えば、乳幼児の熱性痙攣のレスキュー治療にカルニチン補充を行うことで、その後のAESD(痙攣を伴う急性脳症のこと)を予防できる可能性があることも報告されています。それだけ、脳神経系においてカルニチンの働きが決して無視できない要素であることなのでしょう。

医薬品として利用されているカルニチン

現在カルニチンはレボカルニチンという名前で、医療用医薬品として医療現場で使われていますが、ADHDで使われることはないようです。現在医療現場にてレボカルニチンが使用されるケースは以下のようです(日本小児学会 カルニチン欠乏症の診断治療指針2018より)。

  • 肝硬変の患者
  • 透析による欠乏症の患者
  • カルニチンを含まない中心静脈栄養、経腸栄養を行なっている患者
  • 神経・筋疾患および精神疾患に伴う欠乏症の患者
  • バルプロ酸ナトリウムによる薬剤性欠乏症の患者
  • ピボキシル基含有抗菌薬投与による低血糖発作の患者
  • 重症心身障害児(者)

薬剤が医療用医薬品として使用されるには、信頼性の高い臨床研究においてその有用性が示される必要があります。よくよく調べると、肝硬変や透析など上記疾患については、数多くの臨床研究の結果からその有用性が示されているようです。

つまり逆に言うと、医療現場で使われるほどには、ADHDに対するカルニチンの有用性は示されていない、と言うことなのでしょう。ざっと調べただけでも、上記疾患におけるカルニチンの効果について医学文献は、ADHDとカルニチンに関する医学文献の何十倍も存在します。

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ADHDにカルニチンが有効であるとされる論文について

rawpixelによるPixabayからの画像

日本小児科学会発表カルニチン欠乏症の診断治療指針において、カルニチンがADHDに効くとされる記述について引用されている論文は2報です。1つは、自閉症の100人の子どもの血清カルニチン濃度は通常に比べ低下していると言うものです。

そしてもう1つは、ADHDの子どもに対してカルニチンを投与して、投与しなかった時と比べてどのような変化があるかを検討した臨床試験の報告です。今回はこちらの論文を引用しつつ、カルニチンの効果について確認していきます。

Efficacy of carnitine in the treatment of children with attention-deficit hyperactivity disorder.

出典:Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 2002 Jul;67(1):33-8.

直訳すると「注意欠陥多動性障害の子供の治療におけるカルニチンの有効性」となります。

試験の方法

ADHDと診断されている6〜13歳の男児26名に対して、カルニチンを投与する群とプラセボ(偽薬)を投与する群に分けて(しかもカルニチンかプラセボかは分からないようにして)、それぞれ効果を検討しています。しかもカルニチンを投与した群はその後プラセボを、プラセボを投与した群はその後カルニチンを投与するという徹底ぶりです。

カルニチンプラセボカルニチン
プラセボカルニチンプラセボ

ADHDの症状がどう変わったかについては、CBCLを使って評価しています。CBCLとはChild Behavior Checklistの略で、子どもの問題行動について120項目にもわたる質問票です。

  • 不安/抑うつ ……13項目
  • 引きこもり/抑うつ ……8項目
  • 身体愁訴 ……11項目
  • 社会性の問題 ……11項目
  • 思考の問題 ……15項目
  • 注意の問題 ……10項目
  • 規則違反的行動 ……17項目
  • 攻撃的行動 ……18項目
  • その他の問題 ……17項目

なおこの論文では、正常男児はだいたい21点程度、ADHDの男児だと平均68点であるとされています。

試験の結果

ADHDの男児の24名のうち、13名でCBCLスコアの改善が見られたとのことです。だいたい半分くらいの患者に効果があったと捉えてよいでしょうか。

よくよく読んでみると、特に効果があったADHDの男児ではCBCLスコアが34点程度まで減少していて、だいぶ正常男児まで近づいていたようです。逆に効果がなかったADHDの男児については平均65点と、全く効果がなかったことが分かります。

ただし登録されたADHDの男児の数が非常に少なく、また掲載された雑誌のインパクトファクター(雑誌の信頼度を示すスコア)も2.8とそこまで高くはなく、医学的根拠とするにはまだまだ心もとない報告であることは否定できません。ADHDと診断された本人、もしくはその親にとってみれば明るいニュースなのでしょうが、鵜呑みにしてはいけないと言うことは付け加えておかなければいけません。

他のADHDに対してカルニチンは効果があるという論文

PexelsによるPixabayからの画像

上で紹介したのは2002年発表というだいぶ古い論文になりますが、その後もいくつか臨床試験が組まれ、その結果が報告されているようです。そのうちのいくつかを紹介していきます。

A double-blind, parallel, multicenter comparison of L-acetylcarnitine with placebo on the attention deficit hyperactivity disorder in fragile X syndrome boys.

出典:Am J Med Genet A. 2008 Apr 1;146A(7):803-12.

ADHDに治療によく用いられるのがメチルフェニデートという薬剤ですが、カルニチンはその代わりになるのではないかと論じています。イタリア、フランス、スペインの8施設による多施設共同研究で、ADHDの6〜13歳の患者63名が登録、プラセボ(偽薬)に対してカルニチン投与群で多動性の減少、社会的行動の改善が観察されたとのことです。

Acetyl-L-carnitine (ALC) in attention-deficit/hyperactivity disorder: a multi-site, placebo-controlled pilot trial.

出典: J Child Adolesc Psychopharmacol. 2007 Dec;17(6):791-802.

この論文は興味深いものです。評価をDSM-Ⅳ(ADHDを診断する評価尺度の1つ)で行なっているのですが、総合スコアについては有意な改善が見られないものの、不注意有意なADHDに対してはよい影響がある可能性があると結論づけています。

Acetyl-L-carnitine as an adjunctive therapy in the treatment of attention-deficit/hyperactivity disorder in children and adolescents: a placebo-controlled trial.

出典:Child Psychiatry Hum Dev. 2011 Jun;42(3):367-75. 

こちらはADHDの治療において、すでにメチルフェニデートを服用している患者は、そこにカルニチンを追加しても効果はあまり見られないと言うものです。メチルフェニデートを投与されたADHD患者を、カルニチン追加群とプラセボ群に分けて検討した結果、両群に有意な差が見られなかったと言うものです。

こうして見ると全てのADHDに効果があると言うわけではないようですが、効果が見られるADHDの患者が一定数おり、脅威となるような有害な副作用がほとんどないことが見て取れます。ただどの論文を読んでみても共通して言えることは、例数が少なくエビデンスとしては不十分であること、その効果について確証を得るにはもっと大規模かつ信頼性の高い臨床研究を行うべきであることに触れられています。

カルニチンはドラッグストアなどでも簡単にサプリメントが手に入りますので、もしもカルニチン服用を自身で試す際には、効果は半々、試す価値はあるくらいの気持ちで取り組むといいかもしれません。

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実際にADHDの症状緩和を目的にカルニチンをサプリメントで補うなら

ADHDの症状にカルニチンが効果があるかどうか明確にはなっていないものの、そういう報告があるのならまずは試してみたいと思うのが人の心というものです。そこで、どのようなサプリメントを選ぶべきなのかを紹介していきます。

含有量

各論文を読んでみると、1日の投与量は体重1kgあたり20〜100mgとだいぶ幅が広いようです。例えば体重が60kgの人の場合、体重1kgあたり20mgならば1日1,200mg、体重1kgあたり100mgならば1日6,000mgとなります。

ただ上で紹介した論文はあくまでも小児の話です。日本で医療用医薬品として承認されているカルニチンの投与量は、成人で1日1,500〜3,000mg、小児で体重1kgあたり25〜100mgとなっていますので、大人ならば最大でも3,000mgと考えればよいでしょう。

小児ならば、例えば小学1年生ならば、平均体重は男児で約24.1kg、女児で23.5kg(文部科学省 学校保健統計調査より)となっていますので、1日あたりの量はおよそ600〜2,400mg程度となります。ただ成人が3,000mgまでとなっているのに、体重25kg未満の小学1年生が2,400mgを服用するというのも変な話です。

ここでカルニチン欠乏症の診断治療指針2018をよく読んでみると、通常小児に対しては体重1kgあたり10〜20くらいが適当とされています。どうやらカルニチン欠乏による脳症や意識障害など急性の症状が出た場合に、体重1kgあたり100mgを投与するようです。

となれば、小学1年生で1日250〜500mg小学6年生で400〜800mg文部科学省 学校保健統計調査より平均体重を40kg程度と仮定して)、成人でも600〜1600mg(成人体重60〜80kgと仮定して)くらいが妥当なのではないでしょうか。それを加味して、適切な投与量が設定されているサプリメントを選ぶべきでしょう。

剤型

飲めるようであれば、錠剤であろうとカプセルであろうとそこまで気にする必要はないでしょう。ただ子どもの場合、錠剤やカプセルでは飲みづらいということもあります。

ただ残念なことにドラッグストアで売られているカルニチンのサプリメントはほとんどが大人用に作られており、錠剤かカプセルばかりであるのが現状です(探せばもしかしたら粉末状のものやジュースのようなものもあるのかもしれませんが、私は探しきれませんでした)。となると、子どもに飲ませるならばカプセルの方を選んで、飲ませるときにカプセルを開けて中の粉を飲ませるしかないかもしれません。

他にどんな成分が入っているか

カルニチンはダイエットサプリメントや美容サプリメントとして販売されていることが多く、ADHDの症状改善などを謳って販売されているものはありません(こちらも探せばあるかもしれませんが、私は探しきれませんでした)。そしてダイエットや美容を目的としているものだと、カルニチンの他にも様々な成分が合成されている場合があります。

もちろんサプリメントとして販売されている以上体に悪いものであるわけはないのでしょうが、ここで紹介しているのはあくまでもカルニチンのADHDに対する効果についてです。なので他の成分いついてはどんな効果(良い、悪いも含め)があるのか分かりませんので、その点についても注意が必要です。

子どもには飲ませないよう注意書きがあるサプリメントも

サプリメントによっては小児には飲ませないよう注意書きがあるものもあります。上で有害な服採用はないとしていますが、それでも小児には飲ませないようにと但し書きがあるものを子どもに飲ませるわけにはいきません。

ADHDの子どもの症状改善を狙って飲ませるならば、そういった点にも注意しなければいけません。

なお余談ですが、サプリメントのブランドで有名なNature Madeを手がける大塚製薬は、医療用医薬品でもカルニチン製剤(レボカルニチン)を販売しています。医療用医薬品でもサプリメントでもカルニチンを扱っているということで、少しだけ他の会社よりも信頼できるかもしれません。

剤型はカプセルで、小児投与禁止の記載も特にないようです

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ADHDにカルニチンが有効なのか?カルニチン欠乏症診の断治療指針(日本小児科学会)を受けて調べてみたのまとめ

ダイエットや美容のサプリメントで知られているカルニチンについて、ADHDにも効果がある可能性があると、日本小児科学会 カルニチン欠乏症の診断治療指針に記載されています。その理由として、中枢神経の成熟に長鎖脂肪酸が必要であるがADHDや自閉症などがあると長鎖脂肪酸が低値であり、長鎖脂肪酸を効率よく取り込むためにカルニチンが必要であるとされています。

カルニチン欠乏症の診断治療指針に引用されている医学論文を読んでみると、ADHDを持つ人全員に効果があるわけではないものの、効果が見られる人もいるということが示されていました。また有害な副作用もほとんどないそうです。

実際にサプリメントでカルニチンを飲むならば、含有量や他に合成されている成分について注意をしなければいけません。また子どもに飲ませる際には剤型や小児に飲ませても良いかの記述を確認する必要があります。

本当に効果があるかどうかは分かりません。こればかりは個人差もあるでしょうし、断言できるものではありません。

アメリカ、オランダ、イタリアなど各国の大学病院や専門の施設で、ADHDに対するカルニチンの効果を期待して臨床研究を行なっていることは事実なようです。これを機に、一度どんなものか試してみるのもいいかもしれません。

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