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戴や柳、そして塙も?各国の異常から見る妖魔や黄朱の動向について考察(十二国記 白銀の墟 玄の月 全4巻を読み切って)

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十二国記最新刊 全4巻を読み切ってふと一呼吸おいて考えたとき、一つの疑問がよぎりました。柳の王は今大丈夫だろうか?と。

以前の考察でも書いたのですが、戴の状況は実は柳の状況に似ていました。この戴の悲惨な状況は、実は柳が荒れているのと関係があるのではないかと思ったほどです。

十二国記 白銀の墟 玄の月を読破し、結果的に戴の騒乱はあくまでも戴のみで完結する話で、作中柳の話題などひとかけらもありませんでした。けれども状況が似ているなら、そこから何か考察できないか?と思いたち、再度見直してみた次第です。

ということで、今回は戴から西に虚海を渡ると見えて来る十二国記最北端の国柳について、戴との類似点なども挙げながら考察していきます。

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十二国記の柳国はとはどんな国なのか

十二国記の世界の最北端の国

十二国記の最北端に位置する国で、戴や芳に並び冬の寒さが直接命に関わるような地域でもあります。とは言っても、戴の寒さは別格だともいいますので、まだマシなのかもしれませんが。

「(柳の寒さが)戴に比べればましらしいけどね。戴じゃ夜、外に出ると鼻の中まで凍るというから……」

十二国記 風の万里 黎明の空(上) 楽俊・祥瓊と馬車に乗り合わせた女性のセリフより

正式名称は柳北国(りゅうほくこく)、首都は芝草(しそう)、王宮は芬華宮と言います。東隣には雁、西隣には恭がありますが、あまり親交はなさそうでした。

現在の王はおよそ120年の在位で、600年在位の奏、500年の雁、300年の範に継ぐ長さで、中堅どころの国と言えるでしょう。良質な木材や石材が採れることで有名で、ほかには鉱山や玉泉も豊富と言われています。

柳は十二国記の中でも特に法による統治が成功している国

柳は特に法の整備が素晴らしい国だと言われています。

「……特に顕著だったのは法の整備だ。王が玉座で寝ていても、国はまっすぐ進む……そのようにできている」

十二国記 華胥の幽夢 帰山 尚隆のセリフより

延王尚隆によると、法は3つのものが合わさって初めて動くとのこと。何かを禁止する禁令、法が誠実に運用されているかを監視する組織、そして能吏を褒め重く用いる制令の3つです。

そして柳では、その3つが非常によく出来ていました。国のはじまりで朝の体勢をうまく作れなかったようだとは延王の言ですが、その状態から突如持ち直し、他に類を見ない優れた法治国家へと生まれ変わった、それが柳という国なのです。

柳国の王、劉王、助露峰という人物

柳を統べる劉王は、名を助露峰といい、もともとは地方の県正か郷長で、地元の評判はよいものの中央まで名が通っているというほどでもない、いわば「ぱっとしない」人物であったと言われています。そもそも王になるために蓬山まで昇山したわけでもなく、劉麒が生まれて20年以上経ってから、劉麒のほうから迎えに来て登極した人物です。

延王曰く「最初の一山を越せずに倒れそうな具合に見えた」とのことです。それが一山超えたあたりで、法治国家の王としてその名を周辺諸国まで轟かせるようになったのですから、有能な人物に違いはないのでしょう。

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今柳ではいろいろなところで歪みができている

地方の役人が法を無視するようになっている?

法治国家として名高い柳ですが、ここのところその法が無視され始めているとも言われています。実際に十二国記 風の万里 黎明の空(上)において、罪を犯した祥瓊が賄賂によって官吏に見逃してもらえた様子が描かれています。

それはこれまでの柳からは考えられないことです。

「……柳の官吏は腐敗できねえ。できねえように法ができてる。それが県府で堂々と賄賂を要求するってか?」

十二国記 風の万里 黎明の空(上) 楽俊のセリフより

上で延王も述べていましたが、柳はそれだけしっかりと法が整備されていました。それが今、どこか歪みが出てしまったのか、世界でも最も優れていると言われていた法が意味を為さなくなっているのです。

劉王も法の運用に興味を失くしてしまっている

十二国記 丕緒の鳥 落照の獄にて、静かに沈んでいく柳を象徴する一場面が描かれています。そこでは、凶悪で狂った犯罪者……16件23人を殺害した狩獺という男を、殺刑(しけい)にする法律がない柳の国において、果たしてどう裁くか、それを決める立場にある瑛庚が悩みに悩み抜く一編です。

法に従うならば、狩獺は殺刑にすることはできません。けれどもその罪の重さ…凶悪さや何度も繰り返すという更生の余地のなさから、事件を知る民からも殺刑を望む声が多く聞かれていました。

ここで殺刑を下すというのは、法に反するということです。そして一度法を逸脱して、例外を認めて刑が施行されてしまえば、次にまた犯罪があった際に例外を認めろと声が上がってしまうこともあるでしょう。

「あの時は例外が認められたのに、なぜ今度は認められないのか…?」と。ただしそうして法が蔑ろにされていけば、いずれは法は意味を為さなくなります。

前例ができれば、以後、殺刑を用いる躊躇は消える。世が荒み、狩獺のような犯罪者が増えれば、そのたびに殺刑が用いられるようになるだろう。一旦箍が外れれば、以後、些細な罪にも殺刑が用いられるようになり、相対的に殺刑の衝撃力は薄まる。これで刑に処するならば、これより重い罪にはさらに重い刑罰を用いる必要がある……酷刑が増えれば増えるほど国はさらに傾いていく……

十二国記 丕緒の鳥 落照の獄 より

瑛庚は悩み、国の絶対的権力者であり法を整備した張本人、劉王露峰へ何度も伺いをたてるのですが、それに対する返事は「すべてを任せる」としかありませんでした。この事件は柳全体が徐々に乱れ始め中、法の行末を左右する重要な事項です。

にも関わらず、露峰は一切に興味を持たず、ただ「任せる」としか言わないのです。殺刑をしないよう決めたのは露峰なはずですが、瑛庚がそれをするべきかどうか判断を仰ごうとしても、一向に興味を示す様子が見られないのです。

露峰を知る多くの人物の評価を聞くに、これだけではなく様々な分野において、露峰は大事なことを丸投げしていることが分かります。

「……明らかに主上は以前と変わられた……ある方は、主上は無能になられた、と」

十二国記 丕緒の鳥 落照の獄 蒲月のセリフより

以前は賢君であったのが、変わってしまった。それを嘆く声が、そこらかしこから聞こえてくるのです。

異常な犯罪者が増えている

柳では現在、異常な犯罪が増えてきていると言われています。

「貴方は芝草でこのところ、子供が消える事件が続いていることをご存知ですか」

「春官府の下官の邸で、奄奚が皆殺しに遭ったことはご存知でしょうか……このところ柳はそんな話ばかりです……」

十二国記 丕緒の鳥 落照の獄 清花のセリフより

狩獺は確かに、ほかに類を見ない凶悪な犯罪者ですが、それを抜きにしても大量殺人だったり、異常な動機で取り返しのつかない犯罪を犯す者が多いというのです。それについては瑛庚も「理解し難い事件……しかも凶悪な犯罪が頻発している」と認めています。

国の異常は妖魔によるものなのか

この一連の柳国の異常について、私は妖魔の仕業なのではないか考えています。十二国記 華胥の幽夢に収録の「帰山」では、延王尚隆と宗太子利広が柳について、それほど国に問題があるようには見えないのに、虚海の沿岸には妖魔が出る、といった会話をしています。

通常妖魔というと人を襲い家畜を襲い、災害のような意味合いを持っていますが、妖魔はただそれだけではないことを我々は知っています。十二国記 白銀の墟 玄の月 では次蟾(じせん)という妖魔が王宮に巣食っており、人々の魂魄を抜いていました。

魂魄を抜かれた人はみな一様に無表情で、何を話しかけても決まったことしか答えない、まるで命のない人形のようになるとのことですが、つまり妖魔は、ただ人や家畜を襲うだけではないということです。次蟾のように人の精神を壊したり、もしかしたら無気力にさせたり凶暴化させたりする妖魔だっていてもおかしくはありません。

とすれば、賢君だった劉王露峰が急に無気力になりすべてを投げ出しているのも、民の中で凶悪な犯罪者が増えてきているのも、柳国に跋扈する妖魔のせいである可能性を決して否定はできないのではないでしょうか。

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何かおかしいのは黄朱の民か

各国の騒乱に黄朱の民が関わっている可能性

十二国記短編集 華胥の夢収録の「帰山」にて、宗王の妻であり、ともに国を運営する后妃明嬉はこんなことを言っていました。

妖魔のほうに何かが起こってるんでなきゃ、いいけどね……戴と巧が妙なのか、それともそこに出没している妖魔のほうが妙なのか、よくよく見定めてみないと……」

十二国記 華胥の幽夢 帰山 宗后妃明嬉のセリフより

沈みかけている戴や巧で、通常に比べて妖魔の出没が早すぎる、また柳でも妖魔がすでに出ているという話を聞いての言葉です。もちろん、明嬉は戴や巧、柳の様子など直接見る術もなく、ただ息子の利広の話を聞いての単なる感想です。

けれども確かに、明らかにここ最近の十二国記の世界では、国が安定を欠くその影にどうも妖魔の影がちらついているように思えるのです。柳では妖魔が国に沸くのが早すぎるという現象が起きていて、延王尚隆もそれについて疑念を抱いていました。

戴では琅燦の助言によって阿選が妖魔を使役し、王宮の掌握や州侯の管理、そして軍の強化に役立てていました。驍宗を鉱山に閉じ込める際にも妖魔の特性を上手く生かしていました。

また蓬莱から巧国に流れ着いた陽子を襲ったのも妖魔…塙麟の使令でした。指令ですので当然操っていたのは塙麟ですが、それを使えと指示した塙王は果たしてその知恵をどこから仕入れたのでしょうか。

当然のように麒麟に関する知識として持っていたということも考えられますが、もし誰かの入れ知恵だったとしたら、それを塙王に囁いたのは恐らく黄朱の民だったのではないかと思えてくるのです。

十二国記の各国の王は少なからず黄朱の民と手を取り合っている?

十二国記 白銀の…では驍宗はじめ幾人かの将校が黄朱の民とつながりを持っていましたことが述べられています。驍宗は黄海へ騎獣を狩りに行くため黄朱の民に弟子入りし、その後も繋がりがあったことが匂わされていますし(琅燦が驍宗の麾下になったのもその前後でしょうか)、  は黄朱のネットワークを情報収集に活用していました。

十二国記 図南の翼では珠晶が登極にあたり黄朱の民である頑丘に同行してもらっていた際に、頑丘を自分のために働いて欲しいと訴えていました(実際に珠晶に使えることになったのかどうかは定かではありませんが)。その後頑丘本人か、その仲間とも親交が続いている可能性は大いにあるでしょう。

珠晶とともに昇山に同行した利広もやはり「黄海に知り合いもできたことだし…」と、頑丘はじめ黄朱の民と今後の関係を続けていこうと考えている描写が見られます。そもそも多くの王は昇山にあたりどうあっても黄朱の民の力を借りなければいけませんから、各国の王が黄朱の民と親交があることは、決しておかしいことではないのです。

黄朱の民の興味は政治とは別なところにある?

各国がそれぞれ黄朱と繋がりがあり、けれどもその黄朱の民が国の騒乱に噛んでいる可能性があると論じてきましたが、ならばその理由はなになのでしょうか。少なくとも黄朱の民は、国を乱したところで得るものはなにもありません。

むしろ本来なら王、もしくは国政に対して積極的に関わりを持ちたがらないところでしょう。王のいる世界そのものに対して拒否反応を示しているような節さえあるからです。

「俺たち黄朱は、王を必要としない……王と麒麟と、実はそんなものは、人には必要ないんだ。国の施しを受けずに生きていく覚悟さえできればな……」

十二国記 図南の翼 頑丘のセリフより

十二国記 図南の翼にて、王に選ばれるために昇山する珠晶に対して、黄朱の頑丘が語った言葉です。優しい言葉で伝えていますが、直訳すれば「王と麒麟なんて知ったことか」というところでしょう。

では何故わざわざ干渉してしてくるのでしょうか。その理由については、十二国記 白銀の…で琅燦や耶利が語る言葉がヒントとなります。

「王だの麒麟だのはどうでもいい……興味は持っている、世の摂理として」

十二国記 白銀の墟 玄の月 三巻 琅燦のセリフより

黄朱は概して恩義に厚いが、王や麒麟や国は、さほどに重いものじゃない」

十二国記  白銀の墟 玄の月 三巻 耶利のセリフより

彼らは王政に対しては興味がありません。ただしそこに関わる人、もしくはそれを動かす天の摂理に対しては非常に興味津々です。

各国の騒乱に黄朱が関わっているとすると、その辺が動機になっているのだろうと推察されるのです。

黄朱が妖魔を使って国を荒らす理由について

黄朱が妖魔を使って国を荒らす理由としては、以下2つが考えられます。1つは直接被害を被ったから、そしてもう1つは天の摂理に挑戦しているから、です。

黄朱が妖魔を使って国を荒らす理由:直接被害を被ったから

たとえほとんどの黄朱の民が国政に不干渉を貫いているのだとしても、自身や仲間が不利益を被ったとなればまた別でしょう。例えば柳であれば、各国に名を馳せる厳格な法が、黄朱にはとって不利益をもたらすものだったとしたら。

例えばですが、物が流通するにあたって、信頼のおけない、もしくは柳の民が生産者ではない物が流通するのを防ごうとするなら、流通のルートから外れたものについては税をたくさんかけるなどの処置をすることになるでしょう。そして黄朱が柳に何かを売り儲けようとするならば、その税のために柳の流通に手を出すことがしづらくなってしまいます。

ただでさえ身分を証明する物がない黄朱は、そういった国の法からはどうやったってはみ出してしまうのです。もちろん、そもそも黄朱は国というものに深く関わらないものではありますが、それでも全く関わらないということはないでしょう。

何かを売り買いしたり、黄海で手に入れた貴重なものを換金したりすることだってあるはずです。そんな時に柳の法が邪魔になったから、というのは考えられるかもしれません。

黄朱が妖魔を使って国を荒らす理由:天の摂理に挑戦しているから

これはどちらかというと、なにかに恨みがあるわけではなく、単純に好奇心を満たすには国を滅ぼす過程が必要だということです。上でも琅燦のセリフを紹介しましたが、黄朱の民は王を選ぶ世界の仕組みそのものに興味を持っていることが考えられます。

そして世界の仕組み、天の摂理がどう動くのかが知りたいならば、国を乱し王と麒麟を追い詰め、あるいは追い落とすことが必要でしょう。王が存命で安定した治世を敷いているならば、天の摂理は動きません……動く必要もないからです。

戴ならば、王を死なない程度に幽閉して政治を行わせないようにしたらどうなるのか。巧ならば、王自ら他の国の王を襲わせるとどうなるのか。

そして柳ならば、王を骨抜きにしてしまい、非がないのに失道に落としてしまったらどうなるのか。どれも知りたいことを知る過程で、国を滅ぼすかそれに近い状況にしなければならないものです。

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戴や柳、そして塙も?各国の異常から見る妖魔や黄朱の動向について考察のまとめ

異様な大地の荒れ方、妖魔が蔓延る国土、そして官吏や玉座に座る者の突然の変容…戴と柳は状況もよく似ているのでは?と思い考察してみました。特に各国で国が荒れる際に出てくる妖魔がもしかしたら黄朱の民の仕業で、しかもその妖魔もただ人や家畜を襲うだけではなく、人の精神に異常を起こすものも増えて生きているのではと考えました。

ただ黄朱の民が国を荒らすには、いささか動機が弱いようにも感じられます。その辺は、もしかしたら今後の短編で少しずつ明かされていくのかもしれません。

なんにせよ、次回作が是非とも気になるところです。

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